「手付を放棄すればいつでもキャンセルできる」——そう思い込んでいると、本番で必ず足をすくわれます。手付解除にはタイムリミットがあり、その判定軸はたった一つ。今回はその一点を、解除アルゴリズムの入口「Phase 1・Step A」で完全に固定します。
目次
本日のターゲット問題(令和2年(10月) 問9 肢1)
Aがその所有する甲建物について、Bとの間で、①Aを売主、Bを買主とする売買契約を締結した場合(中略)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
肢1 ①の契約において、Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。
【Phase 1:解除原因】 Q. 解除の理由は?
「手付(とにかくやめたい)」 → Step A
│
▼
Step A:相手方は「履行に着手」したか?
├─ YES(相手方が着手済) → 解除 不可
└─ NO (相手方が未着手) → 解除 OK
※見るのは常に「相手方」。自分の着手は無関係
答え: ×(誤)
🎯 この問題の核心
手付解除のタイムリミットは「相手方が」履行に着手するまで。買主Bがすでに着手済みなので、売主Aはもう手付解除できない。
🧭 判定軸=⚖️天秤「相手の不意打ちを防ぐ」。まず自分で○×を宣言してみよう
手付解除のルールは『相手に不意打ちのダメージを与えないか』で線が引かれています。具体軸はたった一つ=「相手方が履行に着手したか」。自分の着手は無関係。この一点を、まず自分で肢に当てて解いてみましょう。
🙋♂️生徒:まず本問(令和2年(10月)問9肢1)から。売主Aは手付の倍額を現実に提供して解除できる、って書いてあります。買主Bはもう代金準備して催告までしてるけど…Aは”倍額提供”の条件をちゃんと満たしてるし、これ○ですよね?
👨🏫講師:そこが罠。答えは×。手付解除のキャンセルボタンには”タイムリミット”がある=§557①但書「相手方が履行に着手した後」は、もう押せないんだ。ここで解除したいのはA、Aから見た相手方は買主B。そのBが「代金準備をして催告」=すでに着手済み。だからAはいくら倍額を積んでも解除できない。
🙋♂️生徒:あ…”倍額を現実に提供”という条件はクリアしていても、相手がもう動いていたらアウトなんですね。
👨🏫講師:そう。想像してごらん。君が売主Aで、引渡しの段取りを組み始めた買主Bが目の前にいる。そこへ「やっぱりやめる、倍額返すから」と言われたBの気持ちは? ── その“不意打ち”を防ぐのがこのルール。⚖天秤は常に『相手にとって不意打ちになるか』で傾く。では応用だ。平成21年 問10 肢2:「Aが履行に着手していない場合であっても、Bが自ら履行に着手していれば、Bは手付を放棄して解除できない」。○か×か?
🙋♂️生徒:えっと…今度はBが解除したい側ですよね。Bは自分でもう履行に着手しちゃってる…自分がここまで動いたら、もう引き返せない気がします。だから解除できない、で○?
👨🏫講師:それが「自分基準の錯覚」=出題者が一番好きな”自ら着手フェイント”だ。見るのは常に相手方だけ。ここでの相手方はA、そのAは「着手していない」と問題文に明記されている。相手が未着手なら、自分がどれだけ動いていてもBは手付放棄で解除できる。だから「できない」とする本肢は×。
🙋♂️生徒:なるほど…”自ら着手”は完全に飾りで、判定にはまったく関係ないんですね。
👨🏫講師:その通り。もう一つ落とし穴を。売主が解除するとき「倍額を用意したから受け取って」と口で言うだけではダメ。§557①は”現実に提供“を要求する。口頭の準備・催告では解除の効力は生じないんだ。
🙋♂️生徒:整理すると ── 手付解除の関門は1つだけ、『相手方が着手したか』。自分の着手は無関係。そして売主は倍額を”現実に提供”。この2つを押さえれば、”自ら着手”で焦らせる肢は全部さばけますね。
💡 深掘り:
「自分が動いたか」ではなく「相手に迷惑(不意打ち)がかかるか」。手付解除のブロック条件は§557①但書=『相手方の履行着手』ただ一つで、自分の着手は完全に無関係です。加えて、売主からの解除は倍額を”現実に提供“することが要件(口頭の告知・催告では不可)。「自ら着手していれば解除できない」という自分基準の言い回しは、焦らせるためのフェイントにすぎません。
⚡ 仕上げ:引っかけ(○か×か、自分で答えてから開こう)
買主Bが代金準備・催告で着手済みでも、売主Aは手付の倍額を現実に提供すれば解除できる(令和2年(10月)問9肢1)。 → ×:相手方Bが履行に着手した後は§557①但書で解除不可。倍額提供の条件を満たしても、関門は『相手方の着手』。
相手方Aが履行に着手していなくても、買主Bが自ら履行に着手していれば、Bは手付を放棄して解除できない(平成21年 問10 肢2)。 → ×:見るのは相手方だけ。Aが未着手ならBは自ら着手していても解除できる。「自ら着手」は判定に無関係な飾り。
【逆罠】相手方がまだ履行に着手していなければ、自分がすでに着手していても手付解除できる。 → ○:§557①但書のブロックは『相手方の着手』だけ。自分の着手は無関係だから、相手方が未着手なら解除OK。「自分が動いた=もうダメ」と思い込ませる逆罠。
売主は手付倍額を口頭で告げて受領を催告すれば、契約を解除できる。 → ×:§557①は”現実に提供”を要求する。口頭の準備・催告では足りず、解除の効力は生じない。
(手付)第557条 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
解除アルゴリズム:Phase 1・Step A(手付解除)
手付解除のタイムリミット(売主からの解除)
令和2年(10月)問9 肢1
📋 問題文
①の契約において、Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。(正しいか?)
🔑 条件の抽出
入口「手付を交付」「倍額を現実に提供して解除」→ Phase 1:解除原因 → Step A(手付解除)
着眼解除したいのは売主A。Aから見た「相手方」は買主B
🗺 Step A:相手方は「履行に着手」したか?
解除したい売主Aから見た「相手方」は買主B。Bは「代金支払の準備をして催告」=履行に着手済み。相手方が着手したら手付解除のキャンセルボタンは押せない。
結論
×(誤り)
相手方(買主B)が履行に着手済みのため、売主Aは手付解除できない。手付解除のタイムリミットは「相手方が」着手するまで。
📋 問題文
①の契約において、Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。(正しいか?)
🗺 Step A:相手方は「履行に着手」したか?
解除したい売主Aから見て、相手方である買主Bは履行に着手している?
最終判定
「売主Aは手付の倍額を提供して解除できる」は正しい?
結論
×(誤り)
相手方(買主B)が履行に着手済みのため、売主Aは手付解除できない。手付解除のタイムリミットは「相手方が」着手するまで。
暗記ポイント
🎯 試験本番ではこう即答する
⚖️ 概念マップ:手付解除=「とにかくやめたい」キャンセル。ブロック条件は1つだけ=『相手方の』履行着手。
- 買主から解除 → 手付を放棄(すでに払い済みなので行動不要)
- 売主から解除 → 手付の倍額を「現実に提供」(口頭の準備・催告では不可)
- ブロック条件 → 「相手方が」履行に着手したら、もう解除不可
⚠️ よくある引っかけ
- 「自ら(自分が)履行に着手していれば解除できない」→ ✕。見るのは常に”相手方”。自分が着手しても相手方が未着手なら解除可。
- 「売主が倍額を口頭で告げて受領を催告すれば解除できる」→ ✕。倍額は”現実に提供”が必要(特別編で再確認)。
過去問「比較」道場(ひっかけ回避)
同じStep Aでも、出題者は「自ら着手」という言葉で焦らせてきます。判定軸が”相手方”であることを、もう1問で固めましょう。
【比較対象:平成21年 問10 肢2】BがAに解約手付を交付している場合、Aが契約の履行に着手していない場合であっても、Bが自ら履行に着手していれば、Bは手付を放棄して売買契約を解除することができない。
答え: ×(誤)
🎯 この問題の核心
相手方A が未着手なら、B は自ら着手していても手付放棄で解除できる。「できない」は誤り。判定軸は常に”相手方”。
解除アルゴリズム:Phase 1・Step A(手付解除)
見るのは「相手方」だけ(買主からの解除)
平成21年 問10 肢2
📋 問題文
BがAに解約手付を交付している場合、Aが契約の履行に着手していない場合であっても、Bが自ら履行に着手していれば、Bは手付を放棄して売買契約を解除することができない。(正しいか?)
🔑 条件の抽出
入口「解約手付」→ Step A(手付解除)
着眼解除したいのは買主B。Bから見た「相手方」は売主A
🗺 Step A:相手方は「履行に着手」したか?
解除したい買主Bから見た「相手方」は売主A。問題文に「Aが履行に着手していない」と明記=相手方は未着手。自分(B)が着手していても、相手方が未着手なら解除できる。
結論
×(誤り)
相手方Aが未着手なら、Bは自ら着手していても手付放棄で解除できる。「できない」は誤り。「自ら着手」で焦らせる典型的引っかけ。
📋 問題文
BがAに解約手付を交付している場合、Aが契約の履行に着手していない場合であっても、Bが自ら履行に着手していれば、Bは手付を放棄して売買契約を解除することができない。(正しいか?)
🗺 Step A:相手方は「履行に着手」したか?
解除したい買主Bから見て、相手方である売主Aは履行に着手している?
最終判定
「Bは手付を放棄して解除することができない」は正しい?
結論
×(誤り)
相手方Aが未着手なら、Bは自ら着手していても手付放棄で解除できる。「できない」は誤り。「自ら着手」で焦らせる典型的引っかけ。
【まとめ】📌 この記事の核心
📌 この記事の核心
解除の理由が「ワガママ(とにかくやめたい)」ならStep A。判定軸は『相手方が履行に着手したか』ただ一つ。自分の着手は無関係。買主は手付放棄・売主は倍額を”現実に提供”。
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