【債務不履行の基礎】”いつから遅滞?”を1枚で判定する型

解除の順路 3 / 13 債務不履行の基礎(いつから遅滞?)
目次

🎯 この型で「まるごと」解ける過去問

「債務不履行」と聞くと覚えることが多そうに見えます。でも過去問で本当に問われているのは、たった2つの入口だけです。

📌 この型が担当する過去問

  • R6問5(履行遅滞)… 4肢すべてが「いつから遅滞になるか(起算点)」だけを聞いている問題。
  • H24問8(債務不履行)… 「帰責事由」と「金銭債務の特則(不可抗力でも遅滞になる=§419③)」で正誤が決まる問題。

※H24問8の肢2は出題当時(旧法)の「年5分」表記です。現行の法定利率は年3%(§404)。この型ではH24問8の肢1・肢4を扱います。

この2問は、肢を1つずつ丸暗記するとキリがありません。そこで、「①責任は成立する? → ②いつから遅滞?」の2段構えという1枚の判定表でさばく道具を渡します。この順番で肢を通すと、上の2問はほぼ機械的に切れます。(※点数を保証する記事ではありません。判定の”型”を渡すだけです。)

🚪 入口トリガー(この型を呼び出す合図)

肢の中に次の言葉が出てきたら、迷わずこの型を起動してください。

  • いつから遅滞の責任を負うか」「履行遅滞になるのはいつか」
  • 遅延損害金」「利率の定めがない」
  • 帰責事由がないのに賠償責任を負う?」「不可抗力なのに…」

🧩 Q0:そもそも損害賠償の責任は成立する?

「いつから遅滞か」を考える前に、まず「責任がそもそも発生しているか」を確認します。ここで落とす肢が意外と多いところです。

① 原則:帰責事由(責めに帰すべき事由)が必要 ― 民法415条

🔵 論点:損害賠償を請求するには、債務者の「責めに帰すべき事由(帰責事由)」が必要です。

約束を破ったことが「債務者の責めに帰すことができない事由」によるものなら、損害賠償請求はできません(民法415条1項ただし書)。

② 例外:金銭債務だけは”特別扱い” ― 民法419条

代金の支払いのようにお金を払う債務(金銭債務)には、上の原則が通用しません。ここがH24問8の主戦場です。

論点 普通の債務 金銭債務(お金を払う債務)
帰責事由なし(不可抗力)なら? 責任を負わない 🔴 不可抗力でも責任を負う(=不可抗力を抗弁にできない)
損害の証明は? 必要 不要(証明しなくても請求できる)
遅延損害金の額は? 🟡 法定利率 年3%(約定利率がこれより高ければ約定利率)

🔴 罠アンカー:「Bの責めに帰すべき事由はないのだから、遅延損害金を払う義務はない」——お金を払う債務でこう言ったら×。金銭債務は不可抗力でも履行遅滞になります(H24問8肢4=これが”誤り”=正解肢)。

③ 契約を結ぶ”前”の説明義務違反は?

🔵 契約締結前の説明義務(信義則上の説明義務)に違反しても、それは「不法行為」の問題です。債務不履行による賠償責任は負いません(H24問8肢1=正しい)。「まだ契約が無い=まだ債務が無い」とイメージすると覚えやすいです。

⏱ Q1:いつから「履行遅滞」になる? ― 民法412条ほか

責任が成立するとわかったら、次は起算点です。R6問5は4肢中3肢がここで切れます(残る1肢は下の豆知識へ=捨ててOK)。次の4パターンに当てはめるだけ。

期限のタイプ 遅滞になる起算点
確定期限 代金は◯月◯日払い 期限が到来した時(当然に)
不確定期限 「父が死んだら引き渡す」 🔴「到来後に請求を受けた時」と「到来を知った時」の早い方(=知っただけでも遅滞。請求は不要)
期限の定めなし 不当利得の返還/期限を決めなかった債務 履行の請求を受けた時
不法行為の損害賠償 交通事故の賠償金 損害の発生と同時(請求は不要。被害者保護のため)

🔴 最頻出の罠(不確定期限)

「不確定期限は、到来を知った後に請求を受けた時から遅滞」——これだけだと言う肢は×。正しくは「請求を受けた時」または「到来を知った時」の早い方🟡 知っただけでも(請求が無くても)遅滞になるのが決め手です(R6問5肢4=誤り)。

🥋 この型で R6問5 を実際に切ってみる

「4肢すべてが起算点」の問題を、上の表に当てはめて切ってみてください(表に無い肢がどうなるかも含めて)。まず自分で○×を出してから、答えを開きましょう。

肢1:不法行為の加害者は、請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

肢2:善意の受益者は、不当利得返還債務について、請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

肢3:同時履行の関係にある損害賠償債権で相殺したあと、相殺後の報酬残債務は、その履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

肢4:不確定期限があるときは、到来を知った後に請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

▶ 答え合わせ(表に当てはめる)

・肢1 → ×。不法行為は「損害の発生と同時」。請求は不要。表の4行目。

・肢2 → 。不当利得=期限の定めなし。だから「請求を受けた時」で正しい。表の3行目。これが正解肢。

・肢3 → △保留。相殺のあとに残った債務は、表のどの行にもありません。ここで無理に決めず、△のまま次の肢へ。

・肢4 → ×。不確定期限は「請求を受けた時」または「知った時」の早い方。「知った後に請求」だけにしているので誤り。表の2行目。

正解は肢2。表で3肢を切り、表に無い肢3は△保留のまま——それでも正解に届きました。型に無い肢は無理に決めず、確定できた○で勝つ。これがこの型の正しい使い方です。(肢3の答えは下の豆知識:相殺の意思表示をした日の翌日から)

⚠ 豆知識(ここは深追い不要)

  • 相殺した後に残った債務の起算点は、相殺の意思表示をした日の翌日から(R6問5肢3)。細かい論点なので、ここは捨ててOK。「翌日から」だけ頭の隅に。
  • 同時履行の抗弁権が付いている間は、期限が来ていても履行遅滞にはなりません。この論点は「解除の型」で詳しく扱います(下のリンク)。

✍️ 30秒暗記メモ(穴埋め)

指で答えを隠してから開いてください。数字と決め手の言葉だけ、口に出せれば十分です。

金銭債務の遅延損害金は、利率の定めがなければ法定利率〔 ? 〕%

年3%(約定利率がこれより高ければ約定利率)。

不確定期限の起算点は「請求を受けた時」と「到来を知った時」の〔 ? 〕

早い方。知っただけでも(請求が無くても)遅滞になる。

不法行為の損害賠償は、〔 ? 〕と同時に遅滞になる(請求不要)

損害の発生と同時。被害者保護のため請求は要らない。

金銭債務は、〔 ? 〕を抗弁にできない

不可抗力を抗弁にできない(=責任を免れない)。損害の証明も不要。

期限の定めのない債務(不当利得の返還など)は、〔 ? 〕を受けた時から遅滞

履行の請求を受けた時から。

🔗 次に読む(解除の型)

「遅滞になった → では催告して解除できる?」——ここから先は解除の型の担当です。

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