【区分所有法】公正証書で作れるのは4つだけ ─ §32の白リストと「規約敷地」の中身を腑に落とす

📘 深掘り解説 | 区分所有の順路 3 / 8 論点③〈規約〉の「公正証書の白リスト」 のくわしい解説です
この記事は〈区分所有の型〉で迷った論点だけを読む場所です。順に全部読む必要はありません。
区分所有法 ・ 論点③の深掘り 公正証書の白リスト
公正証書で作れるのは4つだけ ─ §32の白リストと「規約敷地」の中身を腑に落とす
分譲業者が住人ゼロの一瞬に1人で作れる「公正証書規約」。でも何でも作れるわけではありません。作れるのは建物と敷地の”設計図”に当たる4項目だけ。なぜ4つなのか、「規約敷地」とは何なのかを講師と生徒の会話で腑に落とします。理由で分かれば、リストも罠も忘れません。
目次

まず1問 ― 公正証書と「持分割合」(平成13年 問15 肢1)

最初に建物の専有部分の全部を所有する者は,公正証書により,共用部分の全部について持分割合を定める規約を設定することができる。

📋 論点③の”白リスト” ― 公正証書で設定できる規約は§32の4項目だけ
① 規約共用部分(§4②)=1階の一室を集会室=共用部分にする 等
② 規約敷地(§5①)=隣の駐車場・庭・通路を建物の敷地に取り込む
③ 分離処分OKの定め(§22①ただし書)=専有部分と敷地利用権を分離処分できるとする定め
④ 数戸持ちの敷地利用権の割合(§22②ただし書)=1人が数戸持つとき各戸に割り振る敷地利用権の割合

📌 §32には「これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む」の括弧書きもある(=§22③準用)が、4項目の枠は崩れない。本問の客体=「共用部分の持分割合」(§14)は、この4つのどれかに入っているか?

結論:×(誤り)

主語(最初に専有部分の全部を所有する者=分譲業者)も形式(公正証書)も○。だが客体=「共用部分の持分割合」(§14)は、§32が限定列挙する4項目のどれにも入っていない→公正証書では設定できない。
では、なぜ4つだけに絞られているのか? ここからが本題です。

🧠 なぜこうなる? ― 講師と生徒で”天秤”に乗せる

⚖️ 天秤の世界
公正証書規約は「分譲業者の便宜」と「後から買う人の保護」を天秤にかけ、時期(住人ゼロの一瞬)対象(設計図の4項目)の二重ロックで折り合いを付けます。
🙋‍♂️
生徒:先生、〈規約は誰が作れる?〉の回で二段罠は覚えました。公正証書規約=分譲業者が住人ゼロの一瞬だけ1人で作れる規約ですよね。じゃあその一瞬なら、業者はどんな内容の規約でも作れるんですか? 持分割合とか、管理費の負担とか。
👨‍🏫
講師:天秤に乗せてみろ。シーンは新築分譲マンションのモデルルーム。あなたは契約書にハンコを押す直前だ。もし業者が公正証書1枚で「共用部分の持分は、業者が保有する未販売住戸にたっぷり厚く」「管理費の割合も業者有利に」——何でも決められるとしたら、どうなる?
🙋‍♂️
生徒:…私は中身も知らないまま、その規約を丸ごと引き受けることになりますね。怖いです。
👨‍🏫
講師:そう。天秤の左=業者の便宜——売り出す前に物件の枠組みを固めないと、そもそも売り出せない。右=後から買う人の保護——知らないうちに不利な規約を押し付けられない。法の落としどころは、単独立法を許すのは「時期=住人ゼロの一瞬だけ」(〈規約は誰が作れる?〉の回で学習済み)に加えて「対象=建物と敷地の設計図に当たる4項目だけ」。二重ロックだ。例外は最小限に絞る——これが天秤の答えだ。
🙋‍♂️
生徒:その4項目が、上の白リストなんですね。
👨‍🏫
講師:§32の限定列挙だ。①規約共用部分(§4②)——1階の一室を集会室=共用部分にする。②規約敷地(§5①)——隣の駐車場や庭・通路を建物の敷地にする。③分離処分OKの定め(§22①ただし書)。④数戸持ちの敷地利用権の割合(§22②ただし書)。条文には「これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む」の括弧書きもあるが(§22③準用)、4項目の枠は崩れない。覚え方は——どれも「建物と敷地のかたち」=パンフレットの物件概要に載る設計図系、だ。
🙋‍♂️
生徒:②の「規約敷地」って初めて聞きました。敷地を規約で決めるって、どういうことですか?
👨‍🏫
講師:条文をそのまま読むぞ。§5①「区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる」。シーン:マンション本体の登記上の敷地のに、平面駐車場や中庭・遊歩道がある。規約で「ここもこのマンションの敷地」と取り込める。取り込めば、敷地のルール(分離処分の禁止など)がそこにも及ぶ。
👨‍🏫
講師:実際に出ているぞ。平成17年 問14 肢4「区分所有者の共有に属さない敷地であっても、規約で定めることにより、区分所有者の団体の管理の対象とすることができる。」——○か×か?
🙋‍♂️
生徒:○…ですか? 共有じゃない土地でも、規約で取り込んで管理の対象にできる——§5①そのままだから。
👨‍🏫
講師:○だ(この年の正解は肢3=法定共用部分の専有部分化×の肢)。ただしここは正確に——これは公正証書の問題ではなく、「規約で敷地を取り込めるか」という§5①そのものの出題だ。公正証書の白リスト②の中身が、そのまま規約一般でも問われた例、として押さえておけ。
🙋‍♂️
生徒:分かってきました。4つは全部「建物と敷地のかたち」の話だ。お金の取り分=共用部分の持分割合(§14)はリストにない! 「規約で定められること」と「公正証書で定められること」は別の関門なんですね。
👨‍🏫
講師:それが冒頭の平成13年だ。3手で仕上げるぞ。手1=🔵「公正証書により…規約を設定」→論点③の白リストへ。手2=主語「最初に建物の専有部分の全部を所有する者」は🟡○、形式「公正証書」も○。罠は客体🔴「共用部分の全部について持分割合を定める規約」=§14の持分割合→白リスト4項目のどれでもない。手3×。ここで板書だ。
(a) 持分割合は普通の規約なら§14④で別段の定め可公正証書では不可——H13の罠の正体はこの切り分けだ。「規約で定められる」という正しい知識を「なら公正証書でも可」に誤結合させる。
(b) 白リスト④「敷地利用権の割合」(§22②=数戸持ちの人の土地の割り振り)と、リスト外の「共用部分の持分割合」(§14=共用部分の取り分)は、名前が似た別物。割合どうしで混同するな。
🙋‍♂️
生徒:「規約なら○・公正証書なら×」。同じ”持分割合”でも、入口が違うだけで答えが変わるのか…。
👨‍🏫
講師:ここで引っかけ①。平成19年 問15 肢2「最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、建物の共用部分を定める規約を設定することができる。」——○か×か?
🙋‍♂️
生徒:「建物の共用部分を定める規約」…白リスト①の規約共用部分(§4②)ど真ん中! ○です。
👨‍🏫
講師:正解(この年は「誤っているものはどれか」で、正解は肢4=保管場所の個別通知不要の別肢だ)。リストに載っていれば素直に○と判定する。×の練習ばかりしていると、載っているものまで疑い出す——それも負け筋だ。
👨‍🏫
講師引っかけ②は復習だ。令和3年(12月)問13 肢2——廊下や階段室を公正証書規約でどうにかできるか、という例の二段罠。白リストの言葉で言い直せるか?
🙋‍♂️
生徒:白リスト①は§4②の規約共用部分であって、廊下・階段室=§4①の法定共用部分は、公正証書どころか規約でも対象外。入口にすら立てないんでした。
👨‍🏫
講師:完璧だ。この二段罠を主役として解くのは〈時期の絞りと使用禁止リストの回〉に任せる。ここでは「白リスト①は§4②だけ・§4①は入らない」とだけ再確認しておけ。
👨‍🏫
講師:最後に引っかけ③=主語のリマインド。「後から全戸を買い占めて専有部分の全部を所有するに至った者」が公正証書規約を設定したら?
🙋‍♂️
生徒:×! 「最初に」所有した者限定でした(ドリルでやりました)。
👨‍🏫
講師:よし。これで判定の型が揃った。主語→形式→客体の3チェックだ。①主語=「最初に」全部所有? ②形式=公正証書? ③客体=白リスト4項目のどれか?——3つ全部○で、初めて○だ。
⚖️ 暗記メモ(この天秤を本番へ持っていく)
  • 公正証書は”設計図の4つ”だけ=①規約共用部分(§4②)②規約敷地(§5①)③分離処分OKの定め(§22①但書)④数戸持ちの敷地利用権の割合(§22②但書)
  • お金の取り分=共用部分の持分割合(§14)はリスト外→公正証書では×。ただし普通の規約なら§14④で別段OK
  • 「§22②敷地利用権の割合」(数戸持ちの土地の割り振り)と「§14持分割合」(共用部分の取り分)は名前が似た別物
  • 判定は3チェック=主語(最初に全部所有?)→形式(公正証書?)→客体(4項目のどれか?)
  • 正直な位置づけ:直接出題はH13〜H19に集中・H20以降なし=守りの知識。深追いせず白リスト4つ+持分割合の罠だけ持ち帰る
📖 条文チェック(§32・§4②・§5①・§22①②・§14)

§32(公正証書による規約の設定):最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、§4②・§5①並びに§22①ただし書及び同条②ただし書(これらの規定を§22③において準用する場合を含む)の規約を設定することができる=4項目の限定列挙

§4②(規約共用部分):区分所有権の目的となりうる建物の部分・附属の建物は、規約で共用部分とすることができる(登記が第三者対抗要件)。

§5①(規約敷地):区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。

§22①ただし書:専有部分と敷地利用権の分離処分は原則禁止だが、規約で別段の定め(分離処分可)ができる。

§22②ただし書:数個の専有部分を所有する者の各専有部分に係る敷地利用権の割合は、規約で別段の割合を定めることができる。

§14①③(共用部分の持分):各共有者の持分は専有部分の床面積(壁その他の区画の内側線で囲まれた部分)の割合による。

§14④:持分割合は規約で別段の定めをすることを妨げない(=普通の規約なら可・公正証書では不可、の対比の根拠)。

論点③の深掘り:公正証書の白リスト ─ 3手で解く
公正証書で「共用部分の持分割合」の規約は設定できるか
平成13年 問15 肢1
📋 問題文(色=解き方の地図)

最初に建物の専有部分の全部を所有する者は,公正証書により共用部分の全部について持分割合を定める規約を設定することができる。

1 見分ける ▸ どの論点? → 公正証書による規約の設定
🔵青の「公正証書により…規約を設定」が見分け語。論点③〈規約〉の”公正証書の白リスト”へ振り分ける。
2 考える ▸ 決め手と罠は? → 客体「共用部分の持分割合」(§14)は§32の白リスト4項目の外=公正証書では設定不可
🟡主語(最初に全部所有=分譲業者)と形式(公正証書)は○。罠は🔴客体。持分割合は普通の規約なら§14④で別段の定め可——「規約で可」を「公正証書でも可」にすり替えるのが罠。
3 仕上げる ▸ ○か×か? → × 誤り
白リスト=規約共用部分・規約敷地・分離処分可の定め・数戸持ちの敷地利用権の割合の4つだけ。持分割合はリスト外→「設定できる」は誤り。
📋 問題文(ヒントなし・自分で解く)

最初に建物の専有部分の全部を所有する者は,公正証書により,共用部分の全部について持分割合を定める規約を設定することができる。

1 見分ける ▸ どの論点?
2 考える ▸ 決め手は?
3 仕上げる ▸ ○か×か?
🏋 この論点の過去問を、もっと解く

公正証書規約(「最初に」の主語罠・法定共用部分の二段罠)を含む規約の過去問は、ドリルの論点③にまとめてあります。3手(見分ける→決め手→○×)で腕試し。

▶ 区分所有法ドリルで腕試し →
📌 この記事の核心
公正証書規約は二重ロック——時期=住人ゼロの一瞬だけ・対象=建物と敷地の”設計図”4項目だけ(①規約共用部分§4② ②規約敷地§5① ③分離処分OKの定め§22①但書 ④数戸持ちの敷地利用権の割合§22②但書)。お金の取り分=共用部分の持分割合(§14)はリスト外→公正証書では×(普通の規約なら§14④で別段OK)。判定は主語→形式→客体の3チェック。理由で分かれば、リストも罠も迷いません。
読み終えたら | 区分所有の順路 3 / 8
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