【区分所有法】規約は誰が作れる? ─ 公正証書の”二段罠”と規約の効力を天秤で腑に落とす(論点③)

📘 深掘り解説 | 区分所有の順路 3 / 8 論点③〈規約〉 のくわしい解説です
この記事は〈区分所有の型〉で迷った論点だけを読む場所です。順に全部読む必要はありません。
区分所有法 ・ 論点③ 規約
規約は誰が作れる?公正証書の二段罠(論点③)
マンションの独自ルール=規約。誰が作れて、何について作れて、誰を縛るのか。公正証書の単独設定は主語で○と思わせて客体で落とす二段罠の定番です。丸暗記の前に、なぜそうなるのかを講師と生徒の会話で腑に落とします。
目次

まず1問 ― 規約の「公正証書設定」(令和3年(12月) 問13 肢2)

最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、共用部分(数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分)の規約を設定することができる。

🏛 論点③の”骨組み” ― 規約は「3/4」が原則、公正証書は”一瞬だけ”の例外
① 原則:規約の設定・変更・廃止=集会の特別決議=出席者の各3/4(§31①)
② 例外:公正証書による単独設定=最初に専有部分の全部を所有する者(分譲業者)だけ(§32)
③ 対象の限定:公正証書で作れる規約は規約共用部分(§4②)・規約敷地(§5①)などに限る=廊下・階段室(§4①法定共用部分)は対象外

📌 本問の主語「最初に全部を所有する者」は②のとおり正しい。だが括弧の中身は③の対象外=廊下・階段室(法定共用部分)。主語○→客体×の二段罠

結論:×(誤り)

主語は正しい。しかし括弧内の「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室…」は§4①法定共用部分の定義そのもの。§32公正証書規約の対象は§4②規約共用部分・§5①規約敷地などに限られ、法定共用部分は対象外だから誤り。
では、なぜ業者1人で規約を作れる”一瞬”があるのか? ここからが本題です。

🧠 なぜこうなる? ― 講師と生徒で”天秤”に乗せる

⚖️ 天秤の世界
規約は「マンションの自治(独自ルール)」と「少数者・後から買う人の保護」を天秤にかけて、誰が・何について・どこまで作れるかが決まります。
🙋‍♂️
生徒:先生、規約の設定・変更・廃止が出席者の各3/4なのは分かりました。でも§32の公正証書って…分譲業者が1人で規約を作れるんですよね? みんなのルールなのに、ずるくないですか?
👨‍🏫
講師:天秤に乗せてみろ。分譲前のマンションを想像するんだ。モデルルームに来客はいても、住人はまだゼロ。専有部分の全部を持っているのは業者1人。ここで「規約を作るには集会で3/4」と言われたら、どうなる?
🙋‍♂️
生徒:集会って…出席者は業者1人ですよね。…あ、反対する仲間がそもそもいない
👨‍🏫
講師:そう。賛成を集めるべき相手がいない一瞬だ。だから法は、その一瞬だけ公正証書での単独設定を許した(§32)。逆に、後から部屋を買い占めて全部所有した者はどうだ? もう一度天秤に乗せろ。
🙋‍♂️
生徒:買い占めるまでは他の住人がいた…つまり賛成が必要な相手がもういた。だから×。「最初に」の一言が効いてるんですね!
👨‍🏫
講師:ここで二段罠だ。冒頭の問題(令和3年12月 問13 肢2)をもう一度読め。主語「最初に建物の専有部分の全部を所有する者」は正しい。じゃあ○か? 括弧の中を読んでみろ。
🙋‍♂️
生徒:「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室…」。え、これって…共用部分の説明ですよね?
👨‍🏫
講師:それは§4①法定共用部分の条文そのままだ。廊下・階段室は構造上当然にみんなのもの=規約で決めるまでもなく共用部分。公正証書で設定できる規約は§4②規約共用部分・§5①規約敷地などに限られる。当然に共用の廊下・階段室には規約の出る幕がない=公正証書でも規約でも対象外。主語で○と思わせて、客体で落とす。だから×だ。
🙋‍♂️
生徒:主語だけ確認して安心したら負け…。「誰が」と「何について」、二段でチェックします。もう1つ気になってたんですけど、規約って後から部屋を買った人にも効くんですか? その人、規約作りに参加してないし、契約もしてないのに。
👨‍🏫
講師:規約は人と人の契約じゃないその建物という共同体のルールだ。部屋を買うってことは、メンバーの椅子ごと引き継ぐってことだ。だから特定承継人(買主・競落人)にも効力が及ぶし、登記も要らない(§46)。規約に縛られたくないなら、その建物を買わない自由がある。
🙋‍♂️
生徒:椅子ごと引き継ぐ…なるほど。「特定承継人には効力が及ばない」と来たら×ですね。
👨‍🏫
講師引っかけ②。「規約は管理者が保管するが、管理者がいないときは理事会が保管する」――○か×か?
🙋‍♂️
生徒:理事会…マンションっぽい響きだから、○?
👨‍🏫
講師:×だ。条文は「規約又は集会の決議で定める者」。理事会は条文のどこにもない。それっぽい単語に頷いたら負けだ。ついでに保管場所は建物内の見やすい場所に掲示(各人への個別通知は不要)。利害関係人の閲覧を正当な理由なく拒む20万円以下の過料だ(§33)。
🙋‍♂️
生徒:掲示でOK・個別通知は不要・拒めば過料。事務ルールは「誰が・どこ・いくら」で押さえます。
👨‍🏫
講師:最後に引っかけ③。「規約の設定・変更・廃止の3/4も、規約で過半数まで下げられる」――○か?
🙋‍♂️
生徒:重大変更の3/4が下げられるんだから、規約も…○?
👨‍🏫
講師:×だ。規約で賛成要件を下げられるのは重大変更ただ1つ(§17①)。規約自身・法人化・義務違反者の措置・建替えは下げられない。自分のルールで自分のハードルまで下げられたら、3/4で守っている少数者の保護が崩れるだろ? ちなみに定足数は規約で重くは可・軽くは不可守る方向にだけ動かせる。
🙋‍♂️
生徒:下げられるのは重大変更だけ・定足数は守る方向だけ。天秤の「少数者の保護」側は、規約でも軽くできないんですね!
⚖️ 暗記メモ(この天秤を本番へ持っていく)
  • 公正証書の単独設定=「最初に」専有部分の全部を所有する者(分譲業者)だけ(後から買い占めて全部所有=×)
  • 対象は規約共用部分(§4②)・規約敷地(§5①)に限る=廊下・階段室(§4①法定共用部分)は対象外=主語○→客体×の二段罠
  • 規約の設定・変更・廃止=出席者の各3/4(§31①)/規約で下げられる賛成要件は重大変更ただ1つ
  • 特定承継人に効力が及ぶ・登記不要(§46)
  • 保管=管理者→「規約又は集会の決議で定める者」(理事会は×)/建物内の見やすい場所に掲示(個別通知不要)/閲覧拒否=過料20万円以下
  • 定足数=規約で重くは可・軽くは不可(守る方向のみ)
📖 条文チェック(§32・§4①・§31①・§46・§33)

§32(公正証書による規約の設定)最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、§4②(規約共用部分)・§5①(規約敷地)等の規約に限って設定できる(=主語は分譲業者・対象は限定)。

§4①(法定共用部分):数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分=当然に共用部分(規約の出る幕がない=公正証書でも規約でも対象外)。

§31①(規約の設定・変更・廃止):出席した区分所有者及びその議決権の各3/4以上の多数による集会の決議。

§46(特定承継人):規約・集会の決議は、区分所有者の特定承継人に対しても効力を生ずる(登記は不要)。

§33(規約の保管・閲覧)管理者が保管。管理者がないときは規約又は集会の決議で定める者が保管。保管場所は建物内の見やすい場所に掲示。正当な理由なく閲覧を拒むと20万円以下の過料

論点③:規約 ─ 3手で解く
最初に全部を所有する者は、公正証書で廊下・階段室の規約を設定できる?
令和3年(12月) 問13 肢2
📋 問題文(色=解き方の地図)

最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、共用部分(数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分)の規約を設定することができる。

1 見分ける ▸ どの論点? → 公正証書による規約の設定
🔵青の「公正証書により…規約を設定」が軸。誰が・何について規約を作れるか=論点③〈規約〉へ振り分ける。
2 考える ▸ 決め手と罠は? → 括弧内=廊下・階段室=§4①法定共用部分→§32公正証書の対象(§4②規約共用部分・規約敷地)の外=二段罠
🟡主語「最初に全部を所有する者」は正しい。🔴罠は括弧の中=法定共用部分。公正証書でも規約でも対象外=主語○→客体×
3 仕上げる ▸ ○か×か? → × 誤り
廊下・階段室(法定共用部分)は公正証書規約の対象外。主語が正しくても客体で落ちる → ×。
📋 問題文(ヒントなし・自分で解く)

最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、共用部分(数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分)の規約を設定することができる。

1 見分ける ▸ どの論点?
2 考える ▸ 決め手は?
3 仕上げる ▸ ○か×か?
🏋 この論点の過去問を、もっと解く

規約(公正証書・保管・閲覧・特定承継人・規約による緩和)の過去問は、ドリルの論点③にまとめてあります。3手(見分ける→決め手→○×)で腕試し。

▶ 区分所有法ドリルで腕試し →
📌 この記事の核心
規約は原則3/4(出席者の各3/4・§31①)。例外の公正証書単独設定は「最初に全部を所有する者」の一瞬だけで、対象は規約共用部分・規約敷地に限る=廊下・階段室(法定共用部分)は対象外――主語○→客体×の二段罠。規約は後から買った人にも効く(登記不要)。保管は管理者→規約又は集会の決議で定める者(理事会×)・掲示・閲覧拒否は過料20万円以下。規約で下げられる賛成要件は重大変更ただ1つ。理由で分かれば、罠は罠に見えます。
読み終えたら | 区分所有の順路 3 / 8
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