【区分所有法】3/4で決めても、まだ追い出せない ─ 義務違反者は「決議+訴え+判決」の2段構えを天秤で腑に落とす

📘 深掘り解説 | 区分所有の順路 3 / 8 論点⑤〈義務違反者と裁判所(訴えをもって)〉 のくわしい解説です
この記事は〈区分所有の型〉で迷った論点だけを読む場所です。順に全部読む必要はありません。
区分所有法 ・ 論点⑤ 義務違反者と裁判所(訴えをもって)
3/4で決めても、まだ追い出せない ─ 義務違反者は「決議+訴え+判決」の2段構えを天秤で腑に落とす
迷惑住人を追い出す決議が満場一致に近い賛成で通った。それでも、その夜に鍵は替えられない。3/4という大きな数字を集めても、人の住まいと財産を最終的に奪う権限は多数決にはなく、裁判所という「最後の関門」に預けられている――決議は切符、判決がゴール。なぜそうなるのかを講師と生徒の会話で腑に落とします。
目次

まず1問 ― 占有者への契約解除(平成5年 問14 肢4)

(設定:Aは、区分所有者から専有部分を賃借している者。本問は「誤っているものはどれか」の一肢です)

Aが区分所有者の共同の利益に反する行為を行った場合において,区分所有者の共同生活上の障害が著しく,他の方法によってはその障害を除去することが困難であるときは,管理組合法人は,集会の決議をもって,その賃貸借契約を解除することができる。

🪜 論点⑤の”階段” ― 上に行くほど数字が増え、弁明が増え、最後は裁判所が入る
① 裁判外の停止請求(「やめろ」と請求する)=決議不要・各区分所有者が単独でも可(※通説の解釈)
② 停止等の訴訟=集会の決議が要るが、普通決議(過半数)で足りる(§57②)
③ 使用禁止・競売・契約解除+引渡し(§58〜§60)=出席者の各3/4+事前の弁明の機会+「訴えをもって」=判決必須

📌 本問は③の最終段(占有者への契約解除+引渡し)。「集会の決議をもって…解除できる」と言っている ⇒ 訴え・判決を飛ばしている

結論:×(誤り)

§60①は「集会の決議に基づき、訴えをもって」契約の解除+専有部分の引渡しを請求すると定める。各3/4の決議+弁明の機会はあくまで訴訟を起こすための前提条件で、決議だけでは解除できない=裁判所の判決までが必要
では、なぜ3/4も集めたのに、まだ追い出せないのか? ここからが本題です。

🧠 なぜこうなる? ― 講師と生徒で”天秤”に乗せる

⚖️ 天秤の世界
義務違反者への措置は「迷惑住人から共同生活を守りたい隣人たちの総意(多数決の力)」と「一人の住まい・契約・所有権を奪うことの重さ」を天秤にかけて仕組みが決まります。
🙋‍♂️
生徒:これ、占有者の追い出しの話ですよね!梯子の記事で習いました。使用禁止・競売・引渡しは各3/4+事前の弁明の機会。この肢は「障害が著しく」「他の方法では困難」と要件もちゃんと書いてあるし、管理組合法人が主体になれるのも習ったし――だと思ったのに、なぜ×なんですか!?
👨‍🏫
講師:残念、×だ。しかも君は“ちゃんと勉強したからこそ”この罠に落ちた。要件の長い文言は§60①のほぼ逐語で正しい。「管理組合法人は」も条文に明記された主体で正しい。間違っているのはたった一箇所、最後の述部――「集会の決議をもって…解除することができる」だ。
👨‍🏫
講師:天秤に乗せろ。左の皿=迷惑住人から共同生活を守りたい隣人たちの総意(多数決の力)。右の皿=一人の人間の住まい・契約・所有権を奪うことの重さ。……201号室の賃借人Aを想像しろ。ベランダをゴミで埋め、深夜に廊下で騒ぎ、注意しても半年やめない。臨時総会は満場に近い賛成で可決、会場に拍手が起きる。――ではその夜、理事長はAの部屋の鍵を替えて閉め出せるか?
🙋‍♂️
生徒:え……できない、んですか? あれだけの賛成が集まったのに。
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講師:できない。管理組合が総意で決めたのは「裁判所に訴え出る」ことまでだ。住まいを奪う最終決定を隣人の多数決だけでやれるなら、多数派はいつでも気に入らない一人を追い出せてしまう。だから法律は条文に「訴えをもつて」と書いた(§58①・§59①・§60①)。決議は訴えるための切符であって、追い出しの執行令状ではない。決議は切符、判決がゴールだ。
🙋‍♂️
生徒:あっ、分かってきました。梯子は“何票要るか”の話で、今日は“票が集まった後、誰が最終決定するか”の話なんですね。決議+訴え+判決の2段構え
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講師:そうだ。階段を下から整理するぞ。① 裁判外の停止請求(「やめろ」と請求する)=決議不要・各区分所有者が単独でも請求できる(※これは通説の解釈だ)。② 停止を訴訟でやるなら=集会の決議が要る。ただし普通決議(過半数)で足りる(§57②)。訴えは管理者又は集会で指定された区分所有者が、決議により全員のために提起できる(§57③)。③ 使用禁止§58・競売§59・解除+引渡し§60=定足数(頭数・議決権の各過半数の出席。規約で上回る割合にできるだけ)を満たした集会で、出席した区分所有者及びその議決権の各3/4以上事前の弁明の機会「訴えをもって」=判決必須
🙋‍♂️
生徒:決議が不要なのは①だけ。訴え(判決)が不要なのも①だけ。上に行くほど、数字が増えて、弁明が増えて、最後は裁判所が入る……きれいな階段ですね。
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講師:ここで引っかけ①(梯子の下段に上段の数字を持ち込む罠)。平成3年 問14 肢3――「区分所有法第57条の行為の停止等を請求する訴訟は、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議によらなければ、提起できない」。○か×か?
🙋‍♂️
生徒:訴訟には決議が要るんですよね……で、義務違反者だから3/4……○!
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講師:×だ。停止の訴訟は普通決議(過半数)で足りる。3/4が要るのは使用禁止から上だ。ちなみに同じ問題の肢4「使用禁止を請求する訴訟は各3/4以上の決議によらなければ提起できない」は○で、こちらがこの年の正解肢だった。「停止=過半数/使用禁止=3/4」と対で覚えろ。
👨‍🏫
講師引っかけ②(法人は訴訟の”顔”になれない?)。同じ平成3年 問14の肢1「管理組合法人は…競売を請求する訴訟は提起できない」、肢2「管理組合法人は…引渡しを請求する訴訟を提起することはできない」。どうだ?
🙋‍♂️
生徒:うーん……法人は賃貸借契約の当事者じゃないから、引渡しの訴訟までは無理……とか?
👨‍🏫
講師:どちらも×。§59①・§60①の条文主体は「区分所有者の全員又は管理組合法人」。法人は停止・使用禁止・競売・引渡し、全部の訴訟でフルの主体になれる。契約の当事者かどうかは関係ない。共同生活を守るために法律が与えた特別の武器だ。
🙋‍♂️
生徒:法人って訴訟の”顔”になれるんですね。じゃあ、その法人の中身は誰が動かすんですか?
👨‍🏫
講師理事だ。理事は必置(§49①)。理事が複数いるなら、規約に別段の定めがない限り、法人の事務は理事の過半数で決する(§49②)。令和3年12月の本試験でも、この「理事の過半数」が正しい内容の肢として出ている。そして監事も必置で、理事や法人の使用人との兼任は禁止(§50①②)。見張り役が身内では意味がないからな。法人のつくり方(各3/4+登記)は〈義務違反者と復旧〉の回で済ませたからここでは繰り返さない。あの法人化決議(§47①)も、定足数+出席者ベース各3/4の二段構えだ。
👨‍🏫
講師:仕上げに引っかけ③(言い回しの対比)。平成8年 問14 肢4――「占有者が,建物の保存に有害な行為をするおそれがある場合,管理組合法人は,区分所有者の共同の利益のため,集会の決議により,その行為を予防するため必要な措置を執ることを請求する訴訟を提起することができる」。さっきのH5肢4とそっくりだが?
🙋‍♂️
生徒:出た、「集会の決議により」……また決議だけで完結させる罠ですね。×!
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講師:これはだ。よく見ろ、述部は「決議により訴訟を提起することができる」――訴訟の入口に立つ話だ。停止・予防系は§57④で占有者にも準用され、決議は過半数でいい。H5肢4の「決議をもって解除することができる」は結果まで決議で手に入れる話だから×。「決議により訴訟を提起できる」=○/「決議をもって解除できる」=×。同じ”決議”でも、入口の話か結果の話かで正誤が割れる。
🙋‍♂️
生徒:述部の着地点を見る……! 要件が逐語で正しい肢ほど、最後の述部を疑え、ですね。
👨‍🏫
講師:最後に脇役の細部だ。(a) 弁明の機会の相手は当該占有者本人(§60②が§58③を準用)。部屋を貸している区分所有者(賃貸人)ではない。追い出されるのはAだから、言い分を聞くのもAだ。(b) 競売(§59)の細部=判決に基づく競売の申立ては判決確定の日から6月以内、そして競売を申し立てられた本人(その者の計算で買い受けようとする者を含む)は買受けの申出ができない(§59③④)。追い出された本人が競売で買い戻せたら意味がないからな。ここは宅建での出題は見かけないから補足でいい。
🙋‍♂️
生徒:そういえば、占有者Aには招集通知は来ませんよね。集会があること自体、どうやって知るんですか?
👨‍🏫
講師招集通知を発した後、遅滞なく、建物内の見やすい場所に掲示する(§44②)。占有者は利害関係があれば集会に出席して意見を述べられるから(§44①・議決権はない)、その機会を保障する掲示で、規約がなくてもやる。⚠混同注意――平成8年 問14 肢1の「規約に特別の定めがある場合、掲示で通知できる」は§35④=区分所有者への招集通知の掲示”代用”で、こちらは規約に特別の定めが必要占有者への周知掲示(§44②・規約不要)とは別制度だ。おまけをひとつ――判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者(賃貸人など)に引き渡す(§60③)。部屋は没収品じゃない。
⚖️ 暗記メモ(この天秤を本番へ持っていく)
  • 階段=裁判外の停止請求(決議不要・各自単独可=通説)→ 停止の訴訟(普通決議=過半数)→ 使用禁止・競売・解除+引渡し(出席者の各3/4+事前の弁明+「訴えをもって」=判決必須
  • 合言葉=「決議は切符、判決がゴール」/「決議をもって解除」=×・「決議により訴訟を提起」=○
  • 弁明の相手=本人(占有者への解除は占有者に弁明・賃貸人ではない)
  • 法人は全訴訟の主体○/理事・監事は必置/複数理事=規約に別段なければ過半数/監事は兼任禁止
  • 競売の細部=判決確定から6月以内に申立て・本人(その計算の者含む)は買受×
  • 掲示2制度=占有者への周知§44②(規約不要) vs 招集通知の掲示代用§35④(規約に特別の定めが要る)
📖 条文チェック(§57〜§60・§44②・§49・§50)

§57①(行為の停止等の請求):共同の利益に反する行為(おそれ含む)→ 他の区分所有者の全員又は管理組合法人が、行為の停止・結果の除去・予防措置を請求できる(裁判外の請求は決議不要)。

§57②③:停止等を訴訟で行うには集会の決議(普通決議=過半数で足りる)。管理者又は集会において指定された区分所有者が、決議により全員のために訴訟を提起できる。

§57④:以上は占有者にも準用

§58①②③(使用禁止):「集会の決議に基づき、訴えをもって」請求。決議は定足数(頭数・議決権の各過半数の出席・規約で上回る割合のみ可)+出席した区分所有者及びその議決権の各3/4以上。あらかじめ当該区分所有者に弁明する機会

§59①③④(競売):競売も「訴えをもって」。判決に基づく競売の申立ては判決確定の日から6月以内。競売を申し立てられた区分所有者(その者の計算で買い受けようとする者を含む)は買受けの申出不可

§60①②③(占有者への契約解除+引渡し):占有者への契約解除+専有部分の引渡しも「集会の決議に基づき、訴えをもって」。弁明の相手は当該占有者(§58③準用)。引渡しを受けた者は遅滞なく占有する権原を有する者へ引き渡す

§44②(占有者への集会周知):招集通知を発した後遅滞なく、建物内の見やすい場所に掲示(規約不要)。※§35④の招集通知の掲示代用(規約に特別の定めが必要)とは別制度。

§49①②(理事):理事は必置。複数理事は規約に別段の定めがなければ事務は理事の過半数で決する。

§50①②(監事):監事は必置。理事又は管理組合法人の使用人と兼任禁止

論点⑤:義務違反者と裁判所 ─ 3手で解く
占有者への契約解除は「集会の決議をもって」できるか
平成5年 問14 肢4
📋 問題文(色=解き方の地図)

Aが区分所有者の共同の利益に反する行為を行った場合において,区分所有者の共同生活上の障害が著しく,他の方法によってはその障害を除去することが困難であるときは,管理組合法人は,集会の決議をもってその賃貸借契約を解除することができる。

1 見分ける ▸ どの論点? → 義務違反者への措置の最終段(占有者への契約解除+引渡し)
🔵青の「共同の利益に反する行為」+「賃貸借契約を解除」が目印。論点⑤〈義務違反者と裁判所〉の階段のいちばん上へ振り分ける。
2 考える ▸ 決め手と罠は? → §60①=「集会の決議に基づき、訴えをもって」請求=決議は切符、判決がゴール
🔴「集会の決議をもって…解除できる」が罠=訴え・判決を飛ばしている。「管理組合法人は」も長い要件文言も条文どおり○のデコイで、×なのは述部だけ。要件が逐語で正しい肢ほど、最後の述部を疑え
3 仕上げる ▸ ○か×か? → × 誤り
各3/4の決議+事前の弁明はあくまで訴訟の前提。解除には裁判所の判決までが必要で、「決議をもって解除できる」は誤り。
📋 問題文(ヒントなし・自分で解く)

Aが区分所有者の共同の利益に反する行為を行った場合において,区分所有者の共同生活上の障害が著しく,他の方法によってはその障害を除去することが困難であるときは,管理組合法人は,集会の決議をもって,その賃貸借契約を解除することができる。

1 見分ける ▸ どの論点?
2 考える ▸ 決め手は?
3 仕上げる ▸ ○か×か?
🏋 この論点の過去問を、もっと解く

義務違反者(停止請求・使用禁止・競売・契約解除+引渡し・占有者)の過去問は、ドリルの論点⑤にまとめてあります。3手(見分ける→決め手→○×)で腕試し。

▶ 区分所有法ドリルで腕試し →
📌 この記事の核心
3/4という大きな数字を集めても、人の住まいと財産を最終的に奪う権限は多数決にはない。使用禁止・競売・契約解除+引渡しは決議(出席者の各3/4+事前の弁明)+「訴えをもって」=判決の2段構え。決議は切符、判決がゴール――「決議をもって解除できる」は×、「決議により訴訟を提起できる」は○。決議が不要なのは裁判外の停止請求だけ。上に行くほど、数字が増え、弁明が増え、最後は裁判所が入る。理由で分かれば、言い回しの罠にも迷いません。
読み終えたら | 区分所有の順路 3 / 8
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