【区分所有法】迷惑な人と借主 ─ 義務違反者への段階措置と占有者の権利を天秤で腑に落とす(論点⑤)

📘 深掘り解説 | 区分所有の順路 3 / 8 論点⑤〈占有者・義務違反者・復旧〉 のくわしい解説です
この記事は〈区分所有の型〉で迷った論点だけを読む場所です。順に全部読む必要はありません。
区分所有法 ・ 論点⑤ 占有者・義務違反者・復旧
迷惑な人と借主 ─ 段階措置と占有者の権利(論点⑤)
賃借人は集会で何ができるのか。迷惑な住人・借主は、どこまで・どうやって追い出せるのか。意見と議決権のちがい/段階を踏む措置と弁明/復旧の梯子を、数字を丸暗記する前になぜそうなるのかから講師と生徒の会話で腑に落とします。理由で分かれば、数字も手続も忘れません。
目次

まず1問 ― 占有者の「議決権」(令和元年 問13 肢2)

区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して議決権を行使することができる。

🪜 論点⑤の”梯子” ― 措置が重いほどハードルと手続が上がる
① 占有者(賃借人など)の権利=利害関係があれば集会に出席して意見を述べられる(§44)。ただし議決権はない
② 軽い措置=行為の停止(「やめろ」と請求)=裁判外の請求に決議不要・訴訟にするには集会の決議(過半数)
③ 重い措置=使用禁止・競売・引渡し(住まい・所有権を奪う)=各3/4+事前の弁明の機会

📌 本問は①占有者の権利の話。「議決権を行使することができる」と言っている ⇒ §44の「出席して意見を述べられる(だけ)」と食い違う。

結論:×(誤り)

占有者(賃借人など)は、利害関係があれば集会に出席して意見を述べられる――でも議決権はない(§44)。「議決権を行使することができる」は可否の反転で誤り。
では、なぜ現にそこに住んでいる人に票がないのか? ここからが本題です。

🧠 なぜこうなる? ― 講師と生徒で”天秤”に乗せる

⚖️ 天秤の世界
この論点は「マンション全体の秩序」と「住まい・所有権を奪うことの重さ」の天秤。そして占有者は「現に使う人」と「決めるのは所有者」の天秤で答えが決まります。
🙋‍♂️
生徒:先生、この問題ちょっと納得いきません。賃借人だって現にそこに住んでる住人ですよ? 廊下もエレベーターも毎日使ってる。議決権くらいあげてもよくないですか?
👨‍🏫
講師:天秤に乗せてみろ。集会で決めるのは何だ? 共用部分の変更、規約、建替え――つまり所有者の財産の行方だ。エントランス改装に1,000万かかるとして、その金を負担して資産価値を背負うのは誰だ?
🙋‍♂️
生徒:…所有者ですね。借主は来年引っ越してるかもしれない。
👨‍🏫
講師:そう。借りているだけの人に、他人の財産の処分を決めさせるわけにはいかない。でも一方で、工事の騒音も、ペット禁止への規約変更も、借主の生活には直撃する。だから法は天秤の真ん中で止めた――利害関係があれば集会に出席して意見を述べられる。ただし議決権はない(§44)。声は届けられる、でも決めるのは所有者だ。
🙋‍♂️
生徒:「声は届く・でも票はない」。だから本問の「議決権を行使することができる」は可否の反転で×なんですね!
🙋‍♂️
生徒:でも先生、逆のパターンが心配です。迷惑な借主が深夜にベランダで大騒ぎしてたら? 所有者じゃないんだから、管理組合は手が出せないんじゃ…。
👨‍🏫
講師:出せる。占有者は使用方法につき区分所有者と同一の義務を負う(§46②)。「借りてるだけだからルールは関係ない」は通らない。建物の使い方は所有者と同じルールに縛られる。それでもやめないなら、最終的には契約の解除+専有部分の引渡し請求(各3/4+事前の弁明の機会)で追い出せる。
🙋‍♂️
生徒:追い出しって、いきなりできるんですか?
👨‍🏫
講師:いきなりは無理だ。ここも梯子で考える。軽い順に――まず行為の停止。「やめろ」と請求するだけなら決議は不要訴訟にするには集会の決議(過半数)が要る。請求の主体は他の区分所有者の全員又は管理組合法人で、管理者が当然に単独でできるわけじゃない。それでも共同生活の維持が難しいなら、使用禁止・競売・(占有者への)引渡し各3/4+事前の弁明の機会だ。
🙋‍♂️
生徒:なぜ重い方だけ「弁明の機会」が要るんですか?
👨‍🏫
講師:使用禁止は住まいを、競売は所有権そのものを奪う、”元に戻せない”措置だからだ。人生を左右する決定を、本人の言い分も聞かずに多数決で下すのは公平じゃない。だから決める前に必ず弁明の機会を与える。軽い「やめてくれ」には要らない。いきなり競売はできない――重さに応じて手続が増える、これも天秤だ。
👨‍🏫
講師:ここで引っかけ①。「義務違反者への行為の停止の請求は、管理者が単独で行うことができる」――○か×か?
🙋‍♂️
生徒:管理者は管理のプロだし…○?
👨‍🏫
講師:×だ。請求の主体は他の区分所有者の全員又は管理組合法人(§57①)。管理者は集会の決議で指定されて初めて、全員のために訴訟を起こせる(§57③)。「管理者が単独で」は主語のすり替えの罠だ。
🙋‍♂️
生徒:迷惑な人の話は分かりました。この論点、もうひとつ「復旧」――災害で建物が壊れた話もセットでしたよね?
👨‍🏫
講師:そう、同じ天秤で解ける。小規模滅失(建物価格の1/2以下)は、各自が単独で復旧できる。小さい壊れを元に戻すだけなら誰も損しない=保存行為に近いからだ。集会で決議するなら日常レベル=過半数。ただし復旧決議や建替え決議の後は、単独では復旧できない――みんなの方針が決まった後に一人で勝手に直したら二度手間だろ?
🙋‍♂️
生徒:じゃあ大規模滅失(1/2超)の復旧は?
👨‍🏫
講師各2/3だ。大金が動くから管理(過半数)より重い。でも”元に戻すだけ”だから、”大きく作り変える”重大変更(3/4)よりは軽い。単独<過半数<2/3<3/4――理由が言えれば、数字は暗記じゃなく導出できる。
👨‍🏫
講師引っかけ②。「小規模滅失なら、復旧決議がされた後でも各自が単独で復旧できる」――○か×か?
🙋‍♂️
生徒:小規模なら単独OKだから…○?
👨‍🏫
講師:×だ。単独復旧ができるのは決議の前まで。復旧決議・建替え決議などの後は単独では復旧できない(§61①ただし書)。「いつでも単独」と言い切らせるのが罠だ。
🙋‍♂️
生徒:最後におまけで。管理組合が「法人」になる話もこの論点で見ました。
👨‍🏫
講師管理組合法人=集会の各3/4の決議+登記で成立する(§47)。昔あった「30人以上」という人数要件は廃止=いまは人数の縛りはない。「30人以上でなければ法人になれない」と来たら旧法の亡霊=×だ。
🙋‍♂️
生徒:声は届く・票はない、措置は段階+弁明、復旧は梯子、法人は3/4+登記。全部1本の天秤でつながりました!
⚖️ 暗記メモ(この天秤を本番へ持っていく)
  • 占有者=利害関係があれば出席して意見○・議決権×(§44)/使用方法は所有者と同一の義務(§46②)
  • 行為の停止=裁判外の請求は決議不要・訴訟は集会の決議(過半数)・主体は他の区分所有者の全員又は管理組合法人(管理者単独は×)
  • 使用禁止・競売・引渡し=各3/4+事前の弁明の機会(いきなり競売×・弁明は重い措置だけ)
  • 復旧=小規模(1/2以下)は単独可(決議後は不可)/決議なら過半数/大規模(1/2超)=各2/3
  • 管理組合法人=3/4+登記(「30人以上」の人数要件は廃止=なし)
📖 条文チェック(§44・§46②・§57〜§60・§61・§47)

§44①(占有者の意見陳述権):区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができる(=議決権はない)。

§46②(占有者の義務):占有者は、建物・敷地・附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約・集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。

§57(行為の停止等)他の区分所有者の全員又は管理組合法人が請求できる。訴訟を提起するには集会の決議が必要(管理者等は決議により全員のために訴訟提起できる)。

§58〜§60(使用禁止・競売・引渡し):集会の決議(出席した区分所有者及びその議決権の各3/4以上)+あらかじめ弁明する機会を与える。占有者に対しては契約の解除+専有部分の引渡しを請求。

§61(復旧)小規模滅失(建物価格の1/2以下)は各区分所有者が単独で復旧できる(ただし復旧決議・建替え決議等の後は不可)。集会での復旧決議は過半数大規模滅失の復旧決議は各2/3

§47(管理組合法人):集会の各3/4以上の決議で法人となる旨・名称・事務所を定め、登記をすることで成立(人数要件なし=「30人以上」は廃止)。

論点⑤:占有者・義務違反者・復旧 ─ 3手で解く
占有者は集会で「議決権」を行使できるか
令和元年 問13 肢2
📋 問題文(色=解き方の地図)

区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して議決権を行使することができる

1 見分ける ▸ どの論点? → 占有者(専有部分を占有する者)
🔵青の「専有部分を占有する者」=賃借人など借りて住む人が主語。論点⑤〈占有者・義務違反者・復旧〉へ振り分ける。
2 考える ▸ 決め手と罠は? → 占有者=利害関係があれば出席して意見は述べられる・議決権はない(§44)
🟡「利害関係があれば集会に出席して」までは○。🔴「議決権を行使できる」が可否の反転の罠=決めるのは所有者・使う人は声を届けられるだけ。
3 仕上げる ▸ ○か×か? → × 誤り
占有者にあるのは意見陳述権まで。「議決権を行使することができる」は誤り。
📋 問題文(ヒントなし・自分で解く)

区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して議決権を行使することができる。

1 見分ける ▸ どの論点?
2 考える ▸ 決め手は?
3 仕上げる ▸ ○か×か?
🏋 この論点の過去問を、もっと解く

占有者・義務違反者・復旧(意見と議決権・段階措置と弁明・小規模/大規模・法人化)の過去問は、ドリルの論点⑤にまとめてあります。3手(見分ける→決め手→○×)で腕試し。

▶ 区分所有法ドリルで腕試し →
📌 この記事の核心
占有者(賃借人など)は利害関係があれば集会に出席して意見を述べられる・議決権はない(§44)――声は届く・決めるのは所有者。迷惑な人への措置は段階で考える:行為の停止(過半数・主体は他の区分所有者の全員又は管理組合法人)<使用禁止・競売・引渡し(各3/4+事前の弁明の機会)いきなり競売はできない。復旧は小規模=単独可(決議後は不可)/大規模=各2/3、法人化は3/4+登記(30人要件は廃止)。理由で分かれば、数字も手続も迷いません。
読み終えたら | 区分所有の順路 3 / 8
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次