⚖️ 天秤の世界
1つの決議に「頭数(人の多数)」と「議決権(財産=床面積の多数)」の2つの天秤を両方乗せる。そして可決ラインは「半分ちょうど」では足りない――賛否同数では、天秤はどちらにも傾いていない。
🙋♂️生徒:先生、括弧の「伴わないものを除く」で頭が真っ白です…。結局これは軽微変更の話ですか?重大変更の話ですか?しかも「定数」って何ですか?数字を見る前に、そもそも文が読めません。
👨🏫講師:正直でいい、そこが出発点だ。天秤に乗せる前に、まず肢文が読めなきゃ始まらない。区分所有の肢は、ほぼ全部この定型句――「◯◯(…を除く。)は、区分所有者及び議決権の各〇分の〇以上の多数による集会の決議で決する」――で書かれている。今日は数字の暗記じゃなく
“読み方”を装備する回だ。数字の重さ(梯子)は
論点①の記事でやった。この記事は、その一段手前のゲートだ。
👨🏫講師:まず括弧。呪文に見えるが、3語に刻め。「著しい変更を伴わないもの」=軽微変更。それ「を除く」。除いて残るのは――重大変更だ。イメージしろ。廊下の床材を同じ物に張り替えるだけなら、形も使い勝手も変わらない=軽微(§18①・過半数)。階段の一部を壊してエレベーターを新設したら、形状も効用も激変=重大(各3/4)。括弧は「軽微は外します」の宣言で、本体の文は最初から重大変更の話をしている。
🙋♂️生徒:括弧は「軽微は外します」の宣言なんですね。だから本体の各3/4は正しい。二重否定で逆に読んで、数字のほうを×にするところでした…。
👨🏫講師:ひとつ注意書きだ。平成前半の過去問(S63・H2・H7・H10・H12の5年度に実在する)では、括弧が「(改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く。)」になっている。これは単なる言い換えじゃない――平成14年改正で、重大変更の定義そのものが”費用がかかるか”基準から”形状・効用が著しく変わるか”基準に変わった。ただし読み方の型は同じだ=括弧=軽微を除く=残るは重大変更。ドリルは現行文言だけだから、古い年度の原文で出会っても慌てるな。
🙋♂️生徒:次の疑問です。「区分所有者及び議決権の各4分の3」って、1個の数字じゃないんですか?
👨🏫講師:天秤は2つある。頭数(人の多数)の天秤と、議決権(財産=床面積の多数)の天秤だ。30戸のマンションで、投資家Aが16戸を買い占めたとしよう。議決権(床面積)だけで決めるなら、Aが1人で過半数=残りの住民全員が反対しても可決してしまう。逆に頭数だけなら、小さい部屋の住民の”数の力”で、建物の大部分を所有する人たちを縛れてしまう。だから「及び=かつ」「各=それぞれ」――人の多数と財産の多数、両方をクリアして初めて可決だ。
🙋♂️生徒:どちらか片方の支配で決めさせない仕組みなんですね。…その「議決権」って、何で決まるんですか?
👨🏫講師:規約に別段の定めがなければ、専有部分の床面積の割合だ(§38→§14①)。床面積は壁その他の区画の内側線で囲まれた部分で測る(§14③)――壁の中心線(壁芯)で測るのは×だ。そして§14④で規約による別段の定めができる。この「規約に別段なければ」の留保は必ずセットで付けろ。ちなみに1人で3戸持てば、頭数は1・議決権は3戸分だ。
👨🏫講師:そして過去問の「この区分所有者の定数」。これは頭数側を指す試験用語だ。「区分所有者の定数」=人の数、「議決権」=財産の割合。じゃあ聞くが――301号室が夫婦の共有だったら、頭数は2人か?
👨🏫講師:§40だ。専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は持分価格の過半数で議決権を行使すべき者1人を定める。票は1人がまとめて投じ、頭数も1と数える(頭数1は確立した解釈だ――§40の明文が定めるのは行使者の指定まで)。ミニ実演いくぞ。令和元年 問13 肢1「専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、集会においてそれぞれ議決権を行使することができる」――?
🙋♂️生徒:各自バラバラは不可、行使者1人。だから×ですね!
👨🏫講師:装備は揃った。冒頭の肢を3手で解くぞ。手1(見分ける):「各4分の3以上の多数による集会の決議」→論点①〈決議の数字〉。手2(考える):罠デコイを順に外す。(a) 括弧→「軽微を除く」=重大変更の話で、各3/4は正しい。(b) 母数に「出席した」が無い旧表記→それだけでは×にしない。正誤は中身で決まる(論点①の復習だ)。(c) 定数(頭数)を規約で減らすこと自体→現行§17①の括弧書きは頭数も議決権も両方減らせる=×の理由にならない。…じゃあ、どこで斬る?
🙋♂️生徒:残るのは…最後の「2分の1以上」ですか?
👨🏫講師:そこだ。§17①の引下げは「これを下回る割合(二分の一を超える割合に限る。)」=半分ちょうどは不可。なぜか? 賛否がちょうど15対15に割れた総会を想像しろ。どちらの意思とも言えないのに”可決”にしたら、反対の半分は絶対に納得しない。天秤が傾いて初めて多数だ。だから下限は2分の1超。1/2ちょうどを含む「2分の1以上」は×。手3(仕上げる):×だ。
🙋♂️生徒:罠が3段重ね(括弧・旧母数・定数)で、全部スルーして「以上」の1語で斬る…! しかもこの×は旧法でも現行法でも×=安心して×と言えるんですね。
👨🏫講師:ここで引っかけ①(反転肢その1)。平成24年 問13 肢2――「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決するが、規約でこの区分所有者の定数及び議決権を各過半数まで減ずることができる」。○か×か?
🙋♂️生徒:定数及び議決権…両方減らすのはダメだった気がします。×?
👨🏫講師:
現行法で○だ。§17①の括弧書きは
頭数も議決権も両方、過半数(2分の1超)まで下げられる。旧教材はこの肢を×としていた=
答えが反転する地雷肢だ。古い解答のまま覚え直すな。なお「下げられるのは重大変更だけ(規約の設定変更廃止・法人化・義務違反の措置・建替えは不可)」という本論は
論点①の記事に任せる。
👨🏫講師:引っかけ②(反転肢その2・旧文言括弧の実物)。平成7年 問14 肢1――「共用部分の変更(改良を目的とし,かつ,著しく多額の費用を要しないものを除く。)を行うためには,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議が必要であるが,議決権については規約で過半数まで減ずることができる」(原典の表記のまま)。
🙋♂️生徒:あ、さっき装備した旧文言括弧の実物だ!読み方の型は同じ=軽微を除く=重大変更。そして「議決権について」の引下げも、現行は可…だから現行法で○!
👨🏫講師:正解。これも旧教材では×だった反転ペアだ。旧×のまま覚えている独学組が、確実にここで落ちる。
👨🏫講師:仕上げに引っかけ③。令和元年 問13 肢4――「集会の議事は、法又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数で決する」。定型句は完璧に読める。さて?
🙋♂️生徒:…主語が、ただの「集会の議事」? 何の議題とも書いてない…。普通決議は各過半数(§39①)だから、各4分の3は×!
👨🏫講師:そのとおり。現行の条文は「出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権」の各過半数だ(§39①)。定型句のパースができたら、次は
「どの議題か」で数字が変わる=数字の梯子(
論点①)へ接続しろ。読み方+梯子で、この定型句はもう怖くない。
⚖️ 暗記メモ(この読み方を本番へ持っていく)
- 括弧「(…著しい変更を伴わないものを除く。)」=軽微を除く=重大変更(各3/4)の話
- 「及び=かつ・各=それぞれ」=頭数と議決権の2つの天秤を両方クリア
- 議決権=規約に別段なければ床面積(内側線)の割合(§38→§14)
- 「定数」=頭数側・共有は行使者1人=頭数も1(§40)
- 引下げの下限=2分の1超(「2分の1以上」と来たら×)
- 母数の旧表記(「出席した」なし)だけでは×にしない=正誤は中身で決まる
- 旧文言括弧「改良を目的とし…」=平成14年改正前の定義(費用基準)・読み方の型は同じ