【区分所有法】規約でどっちに動かせる? ─ 伸長のみ・減のみ・重くのみを「少数者を守る向き」の1本で導き出す

📘 深掘り解説 | 区分所有の順路 3 / 8 論点③〈規約〉×論点④〈集会の運営〉 のくわしい解説です
この記事は〈区分所有の型〉で迷った論点だけを読む場所です。順に全部読む必要はありません。
区分所有法 ・ 論点③×④ 規約の可動域(方向マップ)
規約でどっちに動かせる? ― 伸長のみ・減のみ・重くのみを「少数者を守る向き」の1本で導き出す
通知期間は伸ばすだけ、1/5は減らすだけ、定足数は重くするだけ——バラバラに見える暗記を「少数者を守る向き」の1本で導き出します。規約は万能ではない、その理由を講師と生徒の会話で腑に落とします。
目次

まず1問 ― 集会の招集請求の「1/5」(平成29年 問13 肢2)

区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができるが、この定数は規約で減ずることはできない。

📮 規約の可動域「方向マップ」 ― 砦の数字は”少数者を守る向き”にだけ動く
① 賛成要件 各3/4(重大変更)=反対少数者の砦 → 原則下げ不可・唯一の例外として重大変更だけ過半数(1/2超)まで下げ可(§17①・深掘りは〈決議の数字〉→
② 定足数(特別決議柱書の各過半数の出席)=少人数で勝手に決めさせない下限 → 重く(上回る割合)のみ可
③ 招集通知の期間(1週間前/建替えは2ヶ月前)=不意打ち防止の準備期間 → 伸長のみ(短縮・「伸縮」は×)(§35①・§62⑥・物語は〈集会の運営〉→
④ 招集請求・直接招集の1/5=少数者が集会をこじ開ける鍵 → 減のみ可(増やすのは不可)(§34③⑤)★本問はこの行
⑤ 通知外の事項の決議=「通知した事項しか決議できない」原則 → 特別の定数が定められた事項を除き規約で別段可(§37②)
⑥【隣の列】そもそも法律の原則を規約で書き換えられるか=管理者の選任(§25①)・保存行為(§18②)・小規模復旧(§61④)は決議の要否ごと、分離処分の禁止(§22①ただし書)は禁止そのものを規約で別段の定め可——「向き」以前のもう1列

📌 本問は④の行。§34③ただし書=この定数は規約で減ずることが「できる」 ⇒ 「減ずることはできない」と言う本問と食い違う。

結論:×(誤り)

招集請求の定数1/5は、§34③ただし書で「規約で減ずることができる」。前半(1/5以上で請求できる)は条文どおり正しく、最後の「できない」だけが逆の、逆張り一点狙いの肢。
では、なぜ減らすのはOKで、増やすのはダメなのか? ここからが本題です。

🧠 なぜこうなる? ― 講師と生徒で”天秤”に乗せる

⚖️ 天秤の世界
規約の可動域は「規約の自治(自分たちのルールを自分たちで決める自由)」と「少数者の保護(数の力・不意打ちから守る砦)」の天秤で決まります。規約は万能ではない——砦の数字は“少数者に有利な向き”にしか動かせないのです。
🙋‍♂️
生徒:先生、トレーナー(型)で「守る方向にだけ動かせる」って習いました。砦の数字は規約で緩められないんですよね? だったら1/5も減らせないはずで、この肢はじゃないんですか?
👨‍🏫
講師:いい間違え方だ。まず整理しておくぞ。「守る方向にだけ動かせる」はトレーナー(型)・論点③の定足数の箱にすでに書いてある1文で、この記事はその深掘りだ——新しい原則じゃない。で、君はその1文を「砦の数字=凍結」と読み替えてしまった。守るのは“向き”であって“凍結”じゃない。天秤に乗せてみろ。
👨‍🏫
講師:100戸のマンションを想像しろ。管理者(理事長)が「面倒だ」と集会を開いてくれない。3階の廊下は雨漏りしているのに、修繕を議題にしたい仲間は15戸。1/5=20戸に届かない。集会を開けと請求すらできないんだ。ここで規約を「10分の1(10戸)で請求できる」に減らしたら、どうなる?
🙋‍♂️
生徒:困っている少数の人の声が、集会に届きやすくなります…!
👨‍🏫
講師:そうだ。じゃあ逆に、規約で「3分の1必要」に増やしたら?
🙋‍♂️
生徒:34戸も集めないと請求できない…理事長は永久に独裁できちゃいます。怖いです。
👨‍🏫
講師:1/5は少数者が集会をこじ開ける”鍵”なんだ。鍵を軽くする(減らす)=少数者を守る向きだから規約でOK。重くする(増やす)=口封じだから不可。§34③ただし書が「この定数は、規約で減ずることができる」と、減の向きだけ開けてあるのはそういうことだ。
🙋‍♂️
生徒:あっ…!「伸長のみ」「減のみ」「重くのみ」って、向きがバラバラの暗記に見えてたけど、逆なんですね。数字ごとに“誰の砦か”を見れば、動かせる向きは全部「少数者に有利な方向」の1本で導ける…!
👨‍🏫
講師:その調子で方向マップを1行ずつ導出するぞ。通知期間=不意打ち防止の準備の砦→延ばすのは守る・縮めるのは不意打ち=伸長のみ(物語の本編は〈集会の運営〉の回)。定足数=少人数で勝手に決めさせない下限→重くは守る・軽くは保護を削る=重くのみ賛成要件=反対少数者の砦→原則下げ不可・唯一の例外が重大変更で1/2超まで(詳細は〈決議の数字〉の回)。そして1/5=こじ開ける鍵→減のみ。ぜんぶ同じ1本だろ?
👨‍🏫
講師:では冒頭の平成29年問13肢2、3手で仕上げるぞ。手1、論点は?
🙋‍♂️
生徒:「集会の招集を請求することができる」「規約で減ずる」…数字を規約で動かせるかを聞いてる=規約の可動域です!
👨‍🏫
講師手2。決め手は§34③ただし書=「この定数は、規約で減ずることができる」。減らす=少数者が招集しやすくなる向き=守る方向だからOK。なのに肢は「減ずることはできない」と逆を言っている。ここには罠が2つ仕込まれているぞ。(a)「砦=凍結」と覚えた人ほど○にする——守るのは向きであって凍結じゃない。(b)「規約で下げられるのは重大変更だけ」の誤転用——§17①はあくまで賛成要件の話で、1/5は賛成要件じゃない。マップの別の行だ。
🙋‍♂️
生徒手3、×! 前半の「1/5以上で請求できる」は条文どおりで、最後の「できない」だけが逆…逆張りの一点狙い、いやらしい!
👨‍🏫
講師:じゃあ引っかけ①(平成27年 問13 肢2)。「集会の招集の通知は、会日より少なくとも2週間前に発しなければならないが、この期間は規約で伸縮することができる。」——○か×か?
🙋‍♂️
生徒:「伸縮」! 縮めるのは不意打ちだからダメ…×です!
👨‍🏫
講師:×で正解。ただしこの肢、誤りが2つある二重誤りだ。「2週間前」も誤り(正しくは1週間前)、「伸縮」も誤り(伸長のみ)。「伸縮」だけを決め手にすると、数字側の誤りを見なくなる癖がつくぞ。招集通知の物語の本編は〈集会の運営〉の回で。
👨‍🏫
講師引っかけ②(令和4年 問13 肢2)。「管理者がないときは、区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。」——今度はどうだ?
🙋‍♂️
生徒:あれ? さっきは「管理者に請求」だったのに、これは「集会を招集することができる」って直接やってます…勝手に招集はダメだから×?
👨‍🏫
講師だ。よく読め、「管理者がないときは」とある。管理者がいなければ請求する相手がいないだろ? だから1/5で直接招集できる(§34⑤)。管理者がいるとき=管理者への請求(§34③)、いないとき=直接招集(§34⑤)。どちらも定数は減のみ。この言い分けだけ押さえろ。
👨‍🏫
講師:最後に引っかけ③(平成12年 問13・正解は肢3)。正解肢の趣旨=「共用部分の変更(重大変更)は集会の決議で決する必要があり、規約によっても集会決議以外の方法で決することはできない」→これが
🙋‍♂️
生徒:え、規約って万能じゃないんですか? さっきから「規約でOK」ばっかり見てたので…
👨‍🏫
講師:だからマップには隣の列を作ってある。「向き」を問う前に、そもそも法律の原則(集会決議の要否など)を規約で書き換えられるかという列だ。保存行為(§18②)・小規模復旧(§61④)・分離処分の禁止(§22①ただし書)・管理者の選任(§25①)は「規約で別段の定め可」=決議の要否や禁止といった法律の原則ごと書き換えられる。だが重大変更の決議そのものは規約でも外せない——動かせるのは賛成要件の数字(それも1/2超まで)だけだ。ちなみにこの問題の肢1(管理者の選任は「規約に別段の定めがない限り」集会の決議=規約で別段可→×)は管理者の回で実演済みだから復習だけな。※肢3の原文の括弧書き「改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く」は平成14年改正前の旧文言(現行は形状・効用基準)だが、結論は現行法でも○だ。
🙋‍♂️
生徒:「①〜⑤はどっちの向きに動かせるかの列、⑥はそもそも原則を規約で書き換えられるかの列」…方向マップ1枚で全部さばけますね!
⚖️ 暗記メモ(この天秤を本番へ持っていく)
  • 向きに迷ったら「どっちが少数者に有利か」で導く(砦=凍結ではない)
  • 通知期間=伸長のみ/1/5=減のみ/定足数=重くのみ(§35①・§62⑥/§34③⑤/特別決議柱書)
  • 賛成要件を下げられるのは重大変更だけ(過半数=1/2超まで・頭数も議決権も両方・§17①)
  • 通知外決議=特別の定数事項を除き規約で可(§37②)
  • 管理者選任・保存行為・小規模復旧・分離処分の禁止=規約で別段可(法律の原則ごと書き換えられる隣の列)
📖 条文チェック(§34③⑤・§35①・§62⑥・§17①・§37②ほか)

§34③(少数者の招集請求):区分所有者の5分の1以上の者であって議決権の5分の1以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる(=減のみ・増やすのは不可)。※頭数側の括弧書き(議決権を有しないものを除く)は深入り不要。

§34⑤(直接招集):管理者がないときは、1/5以上で集会を直接招集できるこの定数も規約で減のみ

§35①(招集通知):会日より少なくとも1週間前に発する。この期間は規約で伸長のみ(短縮・伸縮は×)。

§62⑥(建替え決議の集会):招集通知は会日より少なくとも2ヶ月前これも規約で伸長のみ

§17①(重大変更):賛成要件=出席した区分所有者及びその議決権の各3/4規約で過半数(2分の1超)まで下げ可=頭数も議決権も両方・下げられるのは重大変更だけ。柱書の定足数(頭数・議決権の各過半数の出席)=規約で上回る割合のみ可。

§37②(通知外の事項の決議):この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定め可。

§18②・§61④・§22①ただし書(隣の列):保存行為・小規模復旧・分離処分の禁止は規約で別段の定めができる=決議の要否や禁止の原則そのものを規約で書き換えられる群。

論点③×④:規約の可動域 ─ 3手で解く
招集請求の定数「1/5」は規約で減ずることはできない?
平成29年 問13 肢2
📋 問題文(色=解き方の地図)

区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができるが、この定数は規約で減ずることはできない

1 見分ける ▸ どの論点? → 集会の招集請求(規約の可動域)
🔵青の「集会の招集を請求」+「規約で減ずる」=数字を規約で動かせるか?が問われている。論点③×④〈規約の可動域〉の方向マップへ振り分ける。
2 考える ▸ 決め手と罠は? → §34③ただし書=この定数は、規約で「減ずることができる」(減のみOK・増は不可)
🟡前半「1/5以上で請求できる」は条文どおり正しい。1/5は少数者が集会をこじ開ける鍵=減らすのは守る向きだから規約でOK。🔴「減ずることはできない」は可否の反転の罠(「砦=凍結」と覚えた人が落ちる)。
3 仕上げる ▸ ○か×か? → × 誤り
この定数は規約で減ずることが「できる」。前半は正しく、最後の「できない」だけが逆=×。
📋 問題文(ヒントなし・自分で解く)

区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができるが、この定数は規約で減ずることはできない。

1 見分ける ▸ どの論点?
2 考える ▸ 決め手は?
3 仕上げる ▸ ○か×か?
🏋 この論点の過去問を、もっと解く

規約・集会の運営(招集請求・通知期間・定足数・議事録)の過去問は、ドリルの論点③・④にまとめてあります。3手(見分ける→決め手→○×)で腕試し。

▶ 区分所有法ドリルで腕試し →
📌 この記事の核心
規約は万能ではない。砦の数字は「少数者を守る向き」にしか動かせない。だから通知期間=伸長のみ/1/5=減のみ/定足数=重くのみ——バラバラに見える暗記は全部この1本から導出できる。例外的に下げられるのは重大変更の賛成要件ただ1つ(1/2超まで・頭数も議決権も両方)。「向き」の前にそもそも原則を規約で書き換えられる隣の列(保存・管理者選任・小規模復旧・分離処分の禁止)も忘れずに。迷ったら「どっちが少数者に有利か」——それだけで逆張りの罠には落ちません。
読み終えたら | 区分所有の順路 3 / 8
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