【区分所有法】決議の数字は”梯子”で決まる ─ 出席者ベースと母数の罠を天秤で腑に落とす(論点①)

📘 深掘り解説 | 区分所有の順路 3 / 8 論点①〈決議の数字〉 のくわしい解説です
この記事は〈区分所有の型〉で迷った論点だけを読む場所です。順に全部読む必要はありません。
区分所有法 ・ 論点① 決議の数字
決議の数字は梯子で決まる(論点①)
過半数・3分の2・4分の3・5分の4――議題ごとにバラバラに見える数字を丸暗記する前に、なぜその重さになるのかを講師と生徒の会話で腑に落とします。理由で分かれば、数字も改正も忘れません。
目次

まず1問 ― 重大変更の「定数」(令和3年(10月) 問13 肢2)

形状又は効用の著しい変更を伴う共用部分の変更については、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決するものであるが、規約でこの区分所有者の定数を過半数まで減ずることができる。

🪜 論点①の”梯子” ― 影響が重大なほど賛成のハードルが上がる
① 保存・小規模滅失の復旧(元に戻すだけ・誰も損しない)=単独でできる(決議不要)
② 管理・軽微な変更・小規模滅失の復旧決議・行為の停止(日常レベル)=過半数(普通決議)
③ 大規模滅失(1/2超)の復旧(大金だが元に戻すだけ)=各2/3
④ 重大変更・規約・法人化・使用禁止等(戻しにくく全員を縛る)=各3/4
⑤ 建替え(権利が一旦消滅する最大の決定)=各4/5(母数も全員)

📌 本問は④重大変更の段の話。「規約でこの定数を過半数まで減ずることができる」か?が問われている ⇒ §17①ただし書と照合する。

結論:○(正しい)

重大変更の賛成要件(各3/4)は、§17①ただし書で規約により過半数(2分の1超)まで減らせる(頭数も議決権も両方)。母数の「区分所有者及び議決権」(”出席した”なし)は旧表記ですが、本問が問う点ではありません。
では、なぜ議題ごとに数字が違い、なぜ母数の表記だけでは×にしないのか? ここからが本題です。

🧠 なぜこうなる? ― 講師と生徒で”天秤”に乗せる

⚖️ 天秤の世界
決議の数字は「全員一致で決めたい理想」と「マンションを動かしたい現実」を天秤にかけて重さが決まります。令和8年改正は、所在不明者で止まる旧法から動きやすさへ天秤を動かしました。
🙋‍♂️
生徒:先生、区分所有法って議題ごとに数字がバラバラすぎませんか? 過半数、3分の2、4分の3、5分の4…。1個ずつ丸暗記しようとして、正直もう心が折れそうです。
👨‍🏫
講師:丸暗記するな。梯子だ。天秤に乗せてみろ――その決定で侵害される利益・影響が重大なほど、賛成のハードルが上がる。これが区分所有を貫く”1つの考え方”だ。
👨‍🏫
講師:下から登るぞ。保存は雨漏りを元に戻すだけ=誰も損しない→単独(決議不要)管理・軽微な変更は日常レベル→過半数。地震で建物の半分超が壊れた大規模滅失の復旧各2/3。大金だが”元に戻すだけ”だから、”作り変える”重大変更(3/4)より一段軽い。重大変更・規約・法人化・使用禁止等は元に戻しにくく、反対者も後から買う人も継続的に縛る→各3/4。そして建替えは権利が一旦消滅する最大の決定→各4/5。ここだけは母数も全員だ。
🙋‍♂️
生徒:なるほど…! 数字を1個ずつ覚えるんじゃなくて、「この議題は梯子のどの段?」って段で思い出すんですね。2/3が3/4より軽い理由まで言えるなら、忘れる気がしません。
👨‍🏫
講師:そこで令和8年改正の話だ。旧法の母数は「区分所有者及び議決権」=全員ベースだった。すると所在不明の所有者や集会に来ない人が多いマンションでは、どんなに頑張っても3/4を永久に超えられない。外壁がボロボロでも直せず、マンションが朽ちていく。だから改正は母数を「出席した区分所有者及びその議決権」=出席者ベースに変えた(定足数=頭数と議決権の各過半数の出席)。天秤に”動きやすさ“を足した改正だ。
👨‍🏫
講師:ここで引っかけ①。冒頭の令和3年の問題をもう一度見ろ。母数が「区分所有者及び議決権の各4分の3」――“出席した”が無い旧表記だ。じゃあこの肢は、それだけで×か?
🙋‍♂️
生徒:現行法は出席者ベースなんですよね? だったら旧表記の過去問は…全部×になっちゃいませんか?
👨‍🏫
講師:ならない。正誤は中身(数字・主体・例外)で決まる。この肢が正面から問うているのは母数じゃなく、「規約でこの区分所有者の定数を過半数まで減ずることができるか」だ。答えは――できる。§17①ただし書で、重大変更の賛成要件(各3/4)は規約で過半数(2分の1超)まで下げられる。しかも頭数も議決権も両方だ。ただし下げられるのは重大変更ただ1つ。規約の設定変更廃止・法人化・義務違反者の措置・建替えは下げられない。だからこの肢は。母数の旧表記は目くらましの罠デコイ――それだけでは×にしない。母数そのものを正面から問う肢のときだけ、出席者ベースで判定しろ。
🙋‍♂️
生徒:危なかった…母数の表記に釣られて×にするところでした。「どこが問われているか」を先に見るんですね。
👨‍🏫
講師引っかけ②。「招集の手続を省略して集会を開くには、区分所有者の4分の3以上の同意があればよい」――○か×か?
🙋‍♂️
生徒:4分の3…梯子の重い段と同じ数字だし、○っぽく見えます。
👨‍🏫
講師:×だ。招集手続の省略(§36)も、集会を開かずに決める書面決議(§45)も、全員の同意・承諾が要る。考えてみろ――多数決の梯子はあくまで”集会で決める“ときのルールだ。集会そのものをスキップするなら、知らないうちに決められて困る人が1人でもいたらアウト。だから全員。「4分の3」と書かれたら×だ。
🙋‍♂️
生徒:梯子=集会で決めるとき、省略・書面決議=全員。線引きがスッキリしました!
⚖️ 暗記メモ(この天秤を本番へ持っていく)
  • 梯子で思い出す:保存=単独/管理・軽微=過半数/大規模滅失の復旧=2/3/重大変更・規約・法人化・使用禁止等=3/4/建替え=4/5(地震・火災・外壁落下・配管・バリアフリーの客観的事由で3/4)
  • 母数=原則「出席した区分所有者及びその議決権」(出席者ベース)。建替えだけ全員。定足数=頭数・議決権の各過半数の出席
  • 母数の旧表記だけでは×にしない――正誤は中身で決まる(母数を正面から問う肢だけ出席者ベースで判定)
  • 重大変更の規約緩和=頭数も議決権も両方・過半数まで・重大変更だけ
  • 招集手続の省略・書面決議=全員の同意(「4分の3」と来たら×)
📖 条文チェック(§17①・§39①・§31①・§36/§45・§62)

§17①(共用部分の重大変更):形状・効用の著しい変更は、出席した区分所有者及びその議決権の各3/4以上の多数による決議。ただし規約で過半数(2分の1超)まで減らせる=頭数も議決権も両方(重大変更のみ)。

§39①(議事):集会の議事は、法・規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者及びその議決権の各過半数で決する。

§31①(規約の設定・変更・廃止)出席した区分所有者及びその議決権の各3/4以上の多数による決議。こちらは規約で減らせない

§36・§45(省略・書面決議):招集手続の省略=区分所有者全員の同意/書面・電磁的方法による決議=全員の承諾(集会を開かずに決めるから多数決不可)。

§62(建替え)区分所有者及び議決権の各4/5以上の多数(母数は全員ベース)。地震・火災・外壁落下・配管・バリアフリー等の客観的事由があれば3/4

論点①:決議の数字 ─ 3手で解く
重大変更の定数は、規約で過半数まで減らせる
令和3年(10月) 問13 肢2
📋 問題文(色=解き方の地図)

形状又は効用の著しい変更を伴う共用部分の変更については、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決するものであるが、規約でこの区分所有者の定数を過半数まで減ずることができる

1 見分ける ▸ どの論点? → 決議の数字
🔵青の「各4分の3以上の多数による集会の決議」=数字・割合が主役。論点①〈決議の数字〉の梯子へ振り分ける。
2 考える ▸ 決め手と罠は? → 重大変更の賛成要件(各3/4)は規約で過半数まで減らせる(頭数も議決権も両方)
🟡「規約で…過半数まで減ずることができる」が決め手(§17①ただし書・重大変更だけ)。母数に「出席した」が無いのは旧表記だが、本問が問う点ではない=罠デコイ。それだけでは×にしない。
3 仕上げる ▸ ○か×か? → ○ 正しい
規約で定数を過半数まで減らせる ⇒ 肢の記述どおり ⇒ ○。
📋 問題文(ヒントなし・自分で解く)

形状又は効用の著しい変更を伴う共用部分の変更については、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決するものであるが、規約でこの区分所有者の定数を過半数まで減ずることができる。

1 見分ける ▸ どの論点?
2 考える ▸ 決め手は?
3 仕上げる ▸ ○か×か?
🏋 この論点の過去問を、もっと解く

決議の数字(梯子・母数・規約による増減・省略/書面決議)の過去問は、ドリルの論点①にまとめてあります。3手(見分ける→決め手→○×)で腕試し。

▶ 区分所有法ドリルで腕試し →
📌 この記事の核心
決議の数字は、議題ごとの丸暗記でなく「影響が重大なほど賛成のハードルが上がる梯子」で思い出す。保存(単独)→管理(過半数)→大規模滅失の復旧(2/3)→重大変更・規約・法人化・使用禁止等(3/4)→建替え(4/5)。母数は原則出席者ベース(建替えだけ全員)――でも母数の旧表記だけでは×にしない。正誤は中身で決まる。重大変更の規約緩和は頭数も議決権も両方・過半数まで・重大変更だけ。招集手続の省略・書面決議は全員の同意。理由で分かれば、数字も改正も迷いません。
読み終えたら | 区分所有の順路 3 / 8
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