⚖️ 天秤の世界
一部共用部分は「一部の人の縄張り(使う人たちの自治)」と「1棟まるごとの統一管理(全員で決める利便)」を天秤にかけます。4層=①誰のもの②誰が管理③全員規約に載せてよいか④ブレーキは、すべてこの1つの天秤から導けます。
🙋♂️生徒:先生、マンションの1階に店舗が3軒あって、店舗だけが使う専用の脇入口があるとします。ああいう「一部の人しか使わない部分」は、その人たちだけのもの・その人たちだけで決めるべきですよね? 店舗入口のルールを、使いもしない5階の住人が決めるなんて変です。だから”マンション全員の規約”には載せられないはず…。
👨🏫講師:その直感、本試験が待ち構えている罠そのものだ。天秤に乗せてみろ。その脇入口の庇が錆びて、看板が剥がれかけているとする。店舗の連中が「うちらの縄張りだから放置」と言い出したら? マンションの正面が廃墟の顔になる。5階の住人が部屋を売ろうとしたら、内見客は入口前で回れ右だ。
🙋♂️生徒:うわ…。使うのは店舗だけでも、同じ1棟の外観も資産価値も管理の手間も、全員に跳ね返るんですね。
👨🏫講師:そう。天秤の両皿は〈使う人の自治(一部の人の縄張り)〉と〈1棟まるごとの統一管理(全員で決める利便)〉。一部共用部分のルールは全部この天秤から導ける。4層を上から順に降りるぞ。まず層1〈誰のもの〉。原則は共用すべき区分所有者(使う人)の共有だ(§3後段の定義・§11①ただし書)。平成25年の本試験もそのまま聞いた――「一部共用部分は、区分所有者全員の共有に属するのではなく、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。」→○。ただし、規約で別段の定めをすれば全員の共有にもできる(§11②)。令和2年(10月)には「一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属するが、規約で別段の定めをすることにより、区分所有者全員の共有に属するとすることもできる。」が出て、これも○だ。
🙋♂️生徒:原則は使う人の共有=縄張り、でも規約で全員のものにもできる=統一は選択肢、ということですね。
👨🏫講師:次は層2〈誰が管理〉。原則は使う人のみで管理する。ただし(a)区分所有者全員の利害に関係するもの、又は(b)全員規約に定めがあるものは全員で管理だ(§16)。「又は」=どちらか片方でOK。さっきの脇入口――建物正面の外壁と一体なら、外観は全員の利害(a)だし、「管理会社に1棟まるごと一元管理を任せたい」なら全員規約に載せる(b)。どちらのルートでも全員管理になる。
🙋♂️生徒:「かつ」ではなく「又は」…片方でいいんですね。統一管理の皿が意外と強い。
👨🏫講師:では層3〈全員規約に載せてよいか〉。冒頭の平成23年 問13 肢3だ。「一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めることができない。」――君の最初の直感で解くと?
🙋♂️生徒:全員の利害に関係しないなら、関係ない人のルールブックには載せられない…だから○では?
👨🏫講師:§30②を読め。「一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる」。見えるか? 法律は最初から“全員規約に載っているケース”を予定して条文を書いている。つまり載せることは「できる」んだ。全員の利害に関係しなくても、統一管理の皿に積みたければ積める。
🙋♂️生徒:「できない」と断定した瞬間に×! 一部の人のものでも、全体で統一管理したければ全員のルールブックに載せてもいい…。でも先生、それだと店舗側が不安です。使う人を守る仕掛けがあるんですよね?
👨🏫講師:それが
層4〈ブレーキ〉――
〈共用部分の”梯子”〉の回のラストで見た
1:4ストッパーの復習だ。全員規約でその事項を設定・変更・廃止するとき、
共用すべき区分所有者の1/4を超える者、又はその議決権の1/4を超える反対があれば、することができない(§31②)。
🙋♂️生徒:どうして「共用者全員の承諾」まで要求しないんですか? 縄張りを守るなら、そのほうが手厚いのに。
👨🏫講師:天秤だ。全員の承諾を要求したら、店舗1軒のわがままで1棟の統一管理が永久に止まる――重すぎる。かといって歯止めゼロなら、多数派が少数者の縄張りを蹂躙する――軽すぎる。だから「1/4超の反対がなければ通る」。自治と統一の均衡点だ。
👨🏫講師:ここで引っかけ①〈承諾すり替え〉。平成13年 問15 肢2――「一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについての区分所有者全員の規約の設定,変更,又は廃止は,当該一部共用部分を共用すべき区分所有者全員の承諾を得なければならない。」
🙋♂️生徒:縄張りを守る話だから、承諾が要る…で合ってそうな…あれ?
👨🏫講師:×だ。「全員の承諾(全員がYES)」と「反対が1/4以下(NOが少数)」は全く別のハードル。§31②が要求するのは後者だけ。ブレーキを「承諾」にすり替えるのが定番の罠だ。さっきの天秤を思い出せ――全員の承諾は”重すぎる”と法律自身が退けた選択肢だぞ。
👨🏫講師:引っかけ②〈以上と超の境界〉。令和5年 問13 肢4――「…当該一部共用部分を共用すべき区分所有者が8人である場合、3人が反対したときは変更することができない。」
🙋♂️生徒:8人の1/4は2人。3人は1/4を超えているから…ストッパー発動で「変更できない」=○!
👨🏫講師:正解。逆に
ちょうど2人(1/4ぴったり)の反対ならストップしない。「1/4
超」であって「1/4
以上」ではない――ここが境界だ。なお令和8年改正で頭数の母数に「議決権を有しないものを除く」の括弧書きが付いたが、8人全員が議決権を持つ本問では結論は変わらない。頭数計算は
過去問ドリルで解き直そう。
👨🏫講師:最後に引っかけ③〈帰属ペア〉。層1で見た平成25年「使う人の共有に属する」も○、令和2年(10月)「規約で全員の共有にできる」も○――原則と規約別段の両方が○になるペアだ。
🙋♂️生徒:「全員の共有に属するのではなく」なんて断定調で来られると、”別段の定めもできないのでは”と勘ぐりたくなりますが…原則を述べた肢は○、規約で全員共有化できる(§11②)と述べた肢も○。両にらみで読みます!
⚖️ 暗記メモ(4層を本番へ持っていく)
- 層1 誰のもの=使う人(共用すべき区分所有者)の共有。規約で全員共有化も可(§11②)
- 層2 誰が管理=原則使う人のみ。「全員の利害に関係」or「全員規約に定め」なら全員(§16・ORで覚える)
- 層3 全員規約に載せてよいか=載せることが「できる」(§30②)。「できない」の断定は×
- 層4 ブレーキ=「全員の承諾」ではなく「1/4超の反対」(§31②)。ちょうど1/4はセーフ(「超」であって「以上」ではない)。計算は過去問ドリルで