【区分所有法】共用部分は誰が動かす? ─ 保存・管理・重大変更の”梯子”を天秤で腑に落とす(論点②)

📘 深掘り解説 | 区分所有の順路 3 / 8 論点②〈共用部分のアクション〉 のくわしい解説です
この記事は〈区分所有の型〉で迷った論点だけを読む場所です。順に全部読む必要はありません。
区分所有法 ・ 論点② 共用部分のアクション
共用部分は、誰が動かす? ― 保存・管理・重大変更の”梯子”
廊下・外壁・屋上に何かを「する」とき、一人でできるのか/多数決なのか/特別多数なのか。数字を丸暗記する前に、なぜその重さになるのかを講師と生徒の会話で腑に落とします。理由で分かれば、数字も改正も忘れません。
目次

まず1問 ― 共用部分の「保存行為」(令和2年 問13 肢3)

共用部分の保存行為をするには、規約に別段の定めがない限り、集会の決議で決する必要があり、各共有者ですることはできない。

🪜 論点②の”梯子” ― アクションの重さで賛成のハードルが上がる
① 保存行為(壊れた所を現状回復・緊急)=各共有者が単独でできる(決議不要・§18①ただし書)
② 管理・軽微な変更(日常レベル)=集会の過半数(普通決議)
③ 重大変更(形状・効用の著しい変更=大きく作り変える)=出席者の各3/4(特別決議)

📌 本問は①保存行為の話。「集会決議が必要・単独ではできない」と言っている ⇒ 梯子の一番下(単独可)と食い違う。

結論:×(誤り)

保存行為は§18①ただし書で各共有者が単独でできる(決議は不要)。「集会決議が必要・各共有者はできない」は梯子の一番下と正反対で誤り。
では、なぜ共用部分なのに”一人で勝手に”やっていいのか? ここからが本題です。

🧠 なぜこうなる? ― 講師と生徒で”天秤”に乗せる

⚖️ 天秤の世界
共用部分のアクションは「素早く動きたい」と「みんなで決めたい」、そして「機動的に作り変えたい」と「反対者・少数者を守りたい」を天秤にかけて重さが決まります。
🙋‍♂️
生徒:先生、共用部分って”みんなのもの”ですよね。それを保存行為なら一人で勝手にやっていいなんて、ちょっと乱暴じゃないですか?ちゃんと集会で決めるべきでは。
👨‍🏫
講師:天秤に乗せてみろ。いま雨漏りを見つけたとする。応急修理を「集会を開いて議決するまで放置」したら、どうなる?
🙋‍♂️
生徒:…被害がどんどん広がって、結局全員が損しますね。
👨‍🏫
講師:そう。しかも保存行為は「マイナスをゼロに戻すだけ」だ。元の状態に直すだけで、誰も損しない・誰の権利も侵さない。緊急なのに全員の合意を待たせる意味がない。だから各共有者が単独でできる(§18①ただし書)。これが梯子の一番下だ。
🙋‍♂️
生徒:あ、”元に戻すだけ”だから文句が出ない。だから軽いんですね。
👨‍🏫
講師:ここから梯子を登るぞ。「ゼロをプラスに動かす」軽い変更=管理(エレベーターのメンテ契約、植栽の追加)は日常の判断=過半数「大きく作り変える」=重大変更(エントランス改装、増築)は、反対した人も・後から部屋を買う人も継続的に縛る重い決定だから出席者の各3/4侵害される利益・影響が重いほど、賛成のハードルが上がる――これが区分所有を貫く”1つの考え方”だ。
🙋‍♂️
生徒:保存(単独)→管理(過半数)→重大変更(3/4)。だんだん重くなる梯子、腑に落ちました!
👨‍🏫
講師:ここで引っかけ①。「保存行為はいかなる場合でも単独でできる」と書いてあったら?
🙋‍♂️
生徒:単独でできるんだから…○?
👨‍🏫
講師:×だ。単独可はあくまで“原則”。規約で「保存は管理者が行う」等の別段の定めができる(§18②)。「いかなる場合でも」と言い切らせるのが罠だ。原則を絶対と読ませたら負け。
👨‍🏫
講師引っかけ②(改正の地雷)。重大変更の3/4は規約で下げられる。何を、どこまで下げられる?
🙋‍♂️
生徒:たしか…頭数(区分所有者の定数)だけ下げられる、でしたっけ?
👨‍🏫
講師:それは旧法。令和8年改正の§17①では頭数も議決権も両方過半数(2分の1超)まで下げられる。しかも重大変更だけだ。規約の設定変更廃止・法人化・義務違反者の措置・建替えは下げられない。「議決権は減らせない」は旧法の亡霊=罠。
🙋‍♂️
生徒:両方・過半数まで・重大変更だけ。覚えました。最後に、共用部分でよく見る「1:4」って何ですか?
👨‍🏫
講師一部共用部分の話だ。たとえば1階店舗だけが使う専用の入り口。そのルールをマンション全員の規約で勝手に変えられたら、店舗の人はたまらない。そこで、使う人(=共用すべき区分所有者)の1/4を超える反対があれば、全員規約でも設定・変更できない(§31②)。
🙋‍♂️
生徒:「全員の承諾まで」は要らないけど、1/4超の反対で止まる。多数決の暴走を止める”木の盾”ですね。優しさと合理性の両立、絶妙です!
⚖️ 暗記メモ(この天秤を本番へ持っていく)
  • 3階層に仕分け:保存=単独/管理・軽微=過半数/重大変更=出席者3/4(重いほどハードル↑)
  • 「いかなる場合でも単独」は×(保存も規約で別段の定め可・§18②)
  • 重大変更の規約緩和=頭数も議決権も両方・過半数まで・重大変更だけ(「議決権は不可」は旧法の罠)
  • 1:4ストッパー=一部共用部分を全員規約で定めるとき、共用者の1/4超の反対で不可(§31②)
  • 持分・費用=専有部分の床面積の割合(頭数で等分は×)
📖 条文チェック(§18・§17①・§31②・§14)

§18①(共用部分の管理):共用部分の管理に関する事項は、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

§18②:前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない(=保存も規約で管理者集中などにできる)。

§17①(共用部分の重大変更):形状・効用の著しい変更は、出席した区分所有者及びその議決権の各3/4以上の多数による決議。ただし規約で過半数(2分の1超)まで減らせる=頭数も議決権も両方(重大変更のみ)。

§31②(一部共用部分の全員規約):共用すべき区分所有者の1/4を超える者、又はその議決権の1/4を超える者が反対したときは、することができない。

§14(持分・費用):各共有者の持分は専有部分の床面積の割合による(頭数で等分ではない)。

論点②:共用部分のアクション ─ 3手で解く
保存行為は各共有者が単独でできる
令和2年 問13 肢3
📋 問題文(色=解き方の地図)

共用部分の保存行為をするには、規約に別段の定めがない限り、集会の決議で決する必要があり、各共有者ですることはできない。

1 見分ける ▸ どの論点? → 共用部分の保存行為
🔵青の「共用部分の保存行為」が主語。論点②〈共用部分のアクション〉の梯子へ振り分ける。
2 考える ▸ 決め手と罠は? → 保存=マイナスをゼロに戻すだけ=各共有者が単独で可・決議不要
🟡保存行為は梯子の一番下(単独可・§18①ただし書)。「決議が必要で単独不可」は可否の反転の罠。
3 仕上げる ▸ ○か×か? → × 誤り
保存行為は各共有者が単独ででき、集会の決議は不要。「決議が必要・単独不可」は誤り。
📋 問題文(ヒントなし・自分で解く)

共用部分の保存行為をするには、規約に別段の定めがない限り、集会の決議で決する必要があり、各共有者ですることはできない。

1 見分ける ▸ どの論点?
2 考える ▸ 決め手は?
3 仕上げる ▸ ○か×か?
🏋 この論点の過去問を、もっと解く

共用部分(保存・管理・重大変更・一部共用部分・持分)の過去問は、ドリルの論点②にまとめてあります。3手(見分ける→決め手→○×)で腕試し。

▶ 区分所有法ドリルで腕試し →
📌 この記事の核心
共用部分に「何かする」ときは、アクションの重さで賛成のハードルが上がる梯子で考える。保存(単独)→管理(過半数)→重大変更(3/4)。保存が単独なのは”マイナスをゼロに戻すだけ・緊急”だから――でも「いかなる場合でも単独」は×(規約で別段可)。重大変更の規約緩和は頭数も議決権も両方・過半数まで・重大変更だけ。一部共用部分は1/4超の反対で止まる。理由で分かれば、数字も改正も迷いません。
読み終えたら | 区分所有の順路 3 / 8
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