【区分所有法】“3分の2”は1つじゃない ─ 復旧の2/3・読替えの2/3・“価格の2/3”を仕分けて腑に落とす

📘 深掘り解説 | 区分所有の順路 3 / 8 論点①〈決議の梯子〉に潜む3つの「2/3」 のくわしい解説です
この記事は〈区分所有の型〉で迷った論点だけを読む場所です。順に全部読む必要はありません。
区分所有法 ・ 論点①の深掘り:3つの“2/3”の仕分け(復旧×読替え×規模)
“3分の2”は1つじゃない ─ 復旧の2/3・読替えの2/3・“価格の2/3”を仕分けて腑に落とす
過去問には3種類の“2/3”が出てきます。復旧の2/3(§61⑤)/読替えの2/3(§17⑤)/規模の「価格の2/3」。同じ数字に見えて、聞かれていることは全部違う——「その2/3は何の数字か」を先に仕分けるやり方を、講師と生徒の会話で腑に落とします。
目次

まず1問 ― 大規模滅失の「復旧決議」(平成7年 問14 肢2)

区分所有建物の一部が滅失し,その滅失した部分が建物の価格の1/2を超える場合,滅失した共用部分の復旧を集会で決議するためには,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数が必要であり,規約で別段の定めをすることはできない。

🧭 3つの“2/3”の仕分け ― まず「その2/3は何の数字か」
① 規模のものさし(「建物の価格の◯/◯が滅失」)=決議の数字ですらない=しきい値1/2に翻訳する(1/2超なら大規模)
② 復旧の2/3(大規模滅失=1/2超を元に戻す決議)=§61⑤の固有の決議=梯子の独立した1段
③ 読替えの2/3(瑕疵除去・バリアフリーの重大変更)=重大変更3/4の“割引”(§17⑤・法律上当然・規約不要)

📌 本問は「価格の1/2を超える」=①で「大規模」と翻訳して②復旧決議の土俵へ。現行の決議数字は「出席した区分所有者及びその議決権の各2/3以上」⇒「各3/4以上が必要」と言っている本問と食い違う。

結論:×(誤り)

現行法(令和8年4月施行)では、大規模滅失(建物の価格の1/2超)の復旧決議は出席した区分所有者及びその議決権の各2/3以上(§61⑤)。「各3/4以上の多数が必要」は旧法の数字=この数字ひとつで×です(後半「規約で別段の定めをすることはできない」は現行でも正しい)。
では、なぜ復旧は重大変更(3/4)より軽い2/3で済むのか? 3つの“2/3”はどう仕分けるのか? ここからが本題です。

🧠 なぜこうなる? ― 講師と生徒で”天秤”に乗せる

⚖️ 天秤の世界
左の皿に「みんなの財産を作り変える重さ(重大変更の3/4)」、右の皿に「元に戻すだけ・安全に住むための必要」。右が勝つ場面がちょうど2つあり、どちらも一段軽い2/3に下がります。そこへ決議の数字ですらない「価格の2/3」が紛れ込む——だから先に仕分けます。
🙋‍♂️
生徒:先生、トレーナー(型)の論点①を暗記していたら“2/3”が2回出てきました。大規模滅失の復旧=2/3バリアフリー等の重大変更=2/3。同じ数字なんだから「2/3系」で1個にまとめていいですよね? しかも過去問には「建物の価格の2/3に相当する部分が滅失」なんて肢まであって、2/3が3つ目…頭が爆発しました。
👨‍🏫
講師:まとめるな。天秤に乗せろ。場面を思い浮かべてみろ。①台風でマンションの半分以上が潰れ、住人が避難所から「元の建物に戻りたい」と願っている——これが復旧②エントランスの外壁タイルが剥がれて通行人の頭上に落ちかけ、段差の前では車椅子の住人が立ち往生している——これが瑕疵の除去・バリアフリー化だ。どっちも「贅沢な作り変え」に見えるか?
🙋‍♂️
生徒:見えません…。どちらも元に戻すだけ・安全に住むための必要ですね。
👨‍🏫
講師:そう。だから右の皿が勝ち、重大変更の3/4より一段軽い2/3に下がる場面がちょうど2つある。復旧の2/3(§61⑤)読替えの2/3(§17⑤)だ。ただし出自が違う。復旧の2/3は§61⑤が最初から「各2/3以上」と決めている梯子の独立した1段。読替えの2/3は重大変更3/4の“割引”=§17⑤が第1項・第3項の「四分の三」を「三分の二」と法律上当然に読み替える。規約は要らない=瑕疵除去・バリアフリーという事実だけで勝手に下がる
🙋‍♂️
生徒:片方は最初からそこにある段、片方は3/4からの値引き…。では3つ目の「価格の2/3」は何なんですか?
👨‍🏫
講師:あれは決議の数字ですらない。滅失の大きさを測る“規模のものさし”だ。しきい値は1/2ただ1つ——価格の1/2以下=小規模→各自が単独で復旧できる/1/2超=大規模→復旧決議。肢に「価格の2/3が滅失」と来たら「1/2超だから大規模」と翻訳して、2/3という数字自体は捨てろ
🙋‍♂️
生徒:2/3は3つあるけど、聞かれ方が全部違うんですね。
滅失の大きさの話か(規模=しきい値1/2に翻訳)
直す決議の話か(復旧=§61⑤の2/3)
危険除去・バリアフリーの作り替えの話か(読替え=§17⑤の2/3)
どの2/3か」を先に仕分ければ混ざらない!
👨‍🏫
講師:それが答えだ。仕分け3問。①「価格の2/3に相当する部分が滅失」→? ②「滅失した共用部分を復旧する旨の決議」→? ③「外壁の瑕疵の除去・バリアフリー化に必要な変更の決議」→?
🙋‍♂️
生徒:①は規模!「1/2超=大規模」と翻訳して数字は捨てる。②は復旧の2/3(§61⑤)。③は読替えの2/3(§17⑤)=3/4の割引!
👨‍🏫
講師:よし、冒頭の平成7年の肢を3手で斬るぞ。手1:「価格の1/2を超える」→大規模滅失の復旧決議(§61⑤)。手2:現行法の賛成要件は「出席した区分所有者及びその議決権の各2/3以上」=肢の「各3/4以上が必要」は旧法の数字で誤り。手3×。畳みかけるが、この肢は出題当時は正解肢(○)だった。旧法では大規模復旧=3/4だったからだ。令和8年改正で2/3に変わった=旧テキストのまま覚えている人ほど、自信満々で○にする最悪の反転肢だ。
🙋‍♂️
生徒:こわ…。あれ?でも後半の「規約で別段の定めをすることはできない」も旧法くさくないですか?ここも×の理由になりそう。
👨‍🏫
講師:ならない。後半は現行法でも正しい。§61⑤の賛成要件2/3には、重大変更の3/4と違って引下げの括弧書きがない=規約で下げられない。ただし“一切いじれない”のではなく、定足数(頭数・議決権の各過半数の出席)を規約で引き上げることだけは可。正しい後半に安心させて、前半の旧数字3/4を見逃させる——それがこの肢の構造だ。もう1つ、母数に「出席した」が無い旧表記は、それだけでは×の理由にしない。正誤は中身で決まる。この肢の×の決め手は「3/4」という数字、ただ1点だ。
👨‍🏫
講師引っかけ①〈規模の2/3〉。平成9年の肢だ。「建物の価格の2/3に相当する部分が滅失したときは,集会において,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数で,滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる」(平成9年 問13 肢3)——どう読む?
🙋‍♂️
生徒:「価格の2/3」は規模!1/2超=大規模と翻訳して捨てる。決議の数字は…あれ、「各3/4以上の多数で…できる」?
👨‍🏫
講師:いい仕分けだ。「価格の2/3」は規模のものさし=決議の数字ではない。決議の数字のほうは旧法3/4→現行2/3に変わった。実はこれも出題当時の正解肢だ。この肢からは「価格の2/3は翻訳して捨てる」「大規模復旧の決議数字は2/3に変わった」——この2点だけ持ち帰れ。
👨‍🏫
講師引っかけ②〈トリガー語の衝突〉。肢に「外壁」「バリアフリー」と出た瞬間、お前はどの数字に飛ぶ?
🙋‍♂️
生徒:読替えの2/3!…と言いたいですが、たしか建替えのところでも外壁とバリアフリーを見た気が…。
👨‍🏫
講師:そこだ。同じ言葉が2箇所に出る。仕分けの軸は議題だ。「直す」=共用部分の変更なら§17⑤の読替え2/3側。「壊して建て直す」=建替えなら4/5で、外壁等の剝離・落下のおそれやバリアフリー基準不適合などの客観的事由に該当すれば3/4(§62②三・五)。梯子の暗記で「バリアフリー=建替えを3/4に緩める事由」とだけ覚えた人ほど、§17⑤の読替え側を落とす。建替えの3/4は“第4の隣接数字”=2/3ファミリーに入れるな
👨‍🏫
講師引っかけ③〈規約で動かせるかの非対称〉。復旧の2/3と読替えの2/3、規約でもっと軽くできるのはどっちだ?
🙋‍♂️
生徒:えっ、同じ2/3なのに違うんですか!?
👨‍🏫
講師:違うんだ。§61⑤の復旧2/3は規約で下げ不可(引下げの括弧書きなし・動かせるのは定足数の引上げのみ)。いっぽう§17⑤の読替え2/3は、さらに§17①の括弧書きで規約により1/2超まで引き下げられる(ちょうど1/2は不可・「超」に限る)。安全のための変更は、法律が勝手に2/3へ割引き、規約でもっと軽くもできる。壊れた建物の復旧は、法律が決めた2/3から動かせない——この対比で記憶に固定しろ。
🙋‍♂️
生徒:「その2/3は何の数字か」を先に仕分ける。規模は翻訳して捨てる、復旧は固定の2/3、読替えは3/4の割引でさらに下げ可。もう混ざりません!
⚖️ 暗記メモ(この天秤を本番へ持っていく)
  • 2/3は3つ=①規模(「価格の◯/◯滅失」→しきい値1/2に翻訳)②復旧決議(§61⑤・出席者ベース・規約で下げ不可=定足数の引上げのみ可)③読替え(§17⑤・瑕疵除去+バリアフリー・規約不要で当然に3/4→2/3・さらに規約で1/2超まで下げ可)
  • 建替えの3/4は“第4の隣接数字”=2/3ファミリーに入れない(外壁・バリアフリーは建替えでは「4/5→3/4に緩和する客観的事由」・§62②三・五)
  • 旧法の「大規模復旧=3/4」は現行の罠=肢に出たら×の決め手(母数の旧表記だけでは×にしない・正誤は中身で決まる)
📖 条文チェック(§61・§17⑤・§17①・§62)

§61①②(小規模滅失=建物の価格の1/2以下):各区分所有者が単独で滅失した共用部分・自己の専有部分を復旧できる(復旧決議・建替え決議等の後は不可)。単独で復旧した者は、他の区分所有者に§14の割合で費用の償還を請求できる。

§61③④:小規模滅失は集会で復旧決議(過半数)をすることもできる。①〜③は規約で別段の定め可

§61⑤(大規模滅失=1/2超):定足数=頭数・議決権の各過半数の出席(規約で上回る割合のみ定め可)+賛成要件=出席した区分所有者及びその議決権の各2/3以上。この2/3には引下げの括弧書きがない=規約で下げられない

§17⑤(読替え):瑕疵の除去・バリアフリー化に必要な共用部分の変更は、第1項・第3項の「四分の三」を「三分の二」と法律上当然に読み替える(規約不要)。

§17①括弧書き:読替え後もさらに規約で2分の1を超える割合まで引下げ可(ちょうど1/2は不可・「超」に限る)。

§62①(建替え):区分所有者及び議決権の各4/5(全員ベース・規約で下げ不可)。

§62②三・五:外壁等の剝離・落下により周辺に危害を生ずるおそれ/バリアフリー基準不適合などの客観的事由に該当すれば、法律上当然に3/4になる。

論点①の深掘り:3つの“2/3”の仕分け ─ 3手で解く
大規模滅失の復旧決議=各3/4以上が必要で、規約で別段の定めもできない?
平成7年 問14 肢2
📋 問題文(色=解き方の地図)

区分所有建物の一部が滅失し,その滅失した部分が建物の価格の1/2を超える場合,滅失した共用部分の復旧を集会で決議するためには,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数が必要であり,規約で別段の定めをすることはできない。

1 見分ける ▸ どの論点? → 大規模滅失(1/2超)の復旧決議
🔵青が2つ。「価格の1/2を超える」=規模のものさし→「大規模」と翻訳。「復旧を集会で決議」=直す決議。⇒ 復旧の2/3(§61⑤)の土俵へ。
2 考える ▸ 決め手と罠は? → 現行法の賛成要件=出席した区分所有者及びその議決権の各2/3以上(§61⑤)
🔴赤の「各3/4以上が必要」は旧法の数字=この一点で×。後半「規約で別段の定め不可」は現行でも正しい(2/3に引下げ括弧なし・規約でいじれるのは定足数の引上げのみ)=正しい後半に安心させる罠デコイ。母数の旧表記は×の理由にしない。
3 仕上げる ▸ ○か×か? → × 誤り
出題当時(旧法=3/4)は○の正解肢だった反転肢。令和8年改正で2/3に変わった=旧テキストの数字は現行の罠。
📋 問題文(ヒントなし・自分で解く)

区分所有建物の一部が滅失し,その滅失した部分が建物の価格の1/2を超える場合,滅失した共用部分の復旧を集会で決議するためには,区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数が必要であり,規約で別段の定めをすることはできない。

1 見分ける ▸ どの論点?
2 考える ▸ 決め手は?
3 仕上げる ▸ ○か×か?
🏋 この論点の過去問を、もっと解く

決議の数字(梯子・2/3・3/4・4/5)と復旧の過去問は、ドリルの論点①・⑤にまとめてあります。3手(見分ける→決め手→○×)で腕試し。

▶ 区分所有法ドリルで腕試し →
📌 この記事の核心
“2/3”は3つある。①規模(「価格の◯/◯が滅失」→しきい値1/2に翻訳して数字は捨てる)、②復旧決議(§61⑤・出席者の各2/3・規約で下げ不可=定足数の引上げのみ可)、③読替え(§17⑤・瑕疵除去+バリアフリー・規約不要で当然に3/4→2/3・さらに規約で1/2超まで下げ可)。建替えの3/4は“第4の隣接数字”=2/3ファミリーに入れない。そして旧法の「大規模復旧=3/4」は現行の罠=肢に出たら×の決め手。「その2/3は何の数字か」を先に仕分ければ、もう混ざりません。
読み終えたら | 区分所有の順路 3 / 8
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次