【危険負担】過去問を『型』で解く判定フロー

🎯
ここは”勉強したのに本番で落とす”人が最も多い勝負どころ
危険負担は2020年改正の核心カテゴリ。知識があっても本番で「滅失原因は誰のせいか」「引渡しの前後」「双方無過失なら買主は”履行拒絶”できる」を一瞬迷えば差がつきます。だからこの記事は、第1部フローでこの論点を1つずつ当てはめて答えを出す道に整理しました。過去問でこのフローを何度も回せば、本番でも差をつけられます。
このアルゴの本体は第1部フロー(Step0から各Stepを上から回す)です。過去問で何度も回すと本番でも解けるようになります(得点への近道)。第2部【ダッシュボード】はフローを回した結論を点検・確認する一覧表。その引き方は記事末尾に実演(🔎 3ステップで判定する手順)を付けました。⚠「代金支払債務は当然に消滅する」は旧法の亡霊=現行法では×(正しくは”履行拒絶権”)。
🧭 Step 0|現在地スキャン まずここだけ見る
危険負担は「他カテゴリへの誤振り分け」で事故ります。まず「①全部の履行不能(§536)か ②賃貸借の一部滅失(§611)か ③売買の一部滅失→減額(§563)か」だけを見極めてください。
売買などで目的物が”全部”滅失・履行不能/代金を払う・拒める 危険負担§536の本編へこのフローで解く
賃貸借中の建物が”一部”滅失・損壊 賃貸借§611へパス当然減額・解除
売買の目的物が”一部”滅失→代金減額 契約不適合§563へパス減額・追完請求
🤔 迷ったら:「代金を払う/拒める」が全部の履行不能で問われていれば§536本編(第0関門→Step 1)。賃貸借中の一部滅失は§611、売買の一部滅失の減額は§563へ回す。
民法アルゴリズム
『危険負担』の判断アルゴリズム
誰がリスク(損)を背負うのか? 2020年改正対応版
第1部:基本フロー(OS)
前提ルール:視点は常に「建物」に固定せよ!

このアルゴリズムでは、「建物の引渡し」を基準に用語を固定します。

債務者 = 渡す人(売主)
債権者 = 貰う人(買主)
2020年改正のキモ: 危険負担の効果は「債務の消滅」から「反対給付の履行拒絶権(代金の支払いを拒める)」へと変更されました。
第0関門(Step 1の前の絶対チェック)
Q1 特約はあるか?
YES 特約優先(ゲーム終了)
NO 次のチェックへ
Q2 すでに「引渡し」は終わっているか?
YES (引渡し後) × 買主の負け(全額払い)
⚠ この「引渡し後=買主の負け」は双方に帰責事由がない滅失の場合(§567①)。売主の責めに帰すべき事由による滅失なら危険負担ではなく債務不履行(解除・損害賠償)の話になる=Step 1の帰責判定を忘れずに
リスクの爆弾は買主に移転済。不可抗力でもゲーム終了。
NO (引渡し前) 原則ルール(Step 1)へ
S1
「誰のせい」でなくなったか?(帰責事由の判定)

Q.契約締結後、引渡し前に目的物が滅失し、引渡しができなくなった(履行不能)原因は誰にあるか?

売主(債務者)のミス
例:売主の寝タバコ
Step 2 へ
買主(債権者)のミス
例:買主が内覧中に燃やした等
Step 3 へ
誰のせいでもない
例:地震、落雷などの不可抗力
Step 4 へ
Step 2 売主の過失 (債務不履行)
Q.売主のミスで滅失した場合、買主はどうなるか?
支払拒絶・解除・損害賠償請求が可能
これは危険負担ではなく「債務不履行」の問題です。買主は代金の支払いを拒むことができ、直ちに解除や損害賠償を請求できます。
【超・重要トラップ:履行遅滞のワープ】
売主が約束の日をサボっている状態(履行遅滞)の最中に、地震などの不可抗力で全壊した場合、Step 4には行きません!サボっていた「売主のせい」とみなされ、この【Step 2】へ強制ワープさせられます。
Step 3 買主の過失 債権者主義
Q.買主のミスで滅失した場合、買主はどうなるか?
⚠ セットで覚える:買主(債権者)に帰責事由があるときは、買主からの契約の解除もできない(§543)。「払う」+「解除もできない」の2点セット
×
支払拒絶不可(代金を全額払う)
買主に責任があるため、代金の支払いを拒むことはできません。売主は建物を引き渡す必要はなくなりますが、代金は全額請求できます。
※ただし、売主が建物を管理しなくてよくなったことで浮いた費用(利益)があれば、それは買主に償還しなければなりません。
【超・重要トラップ:受領遅滞のワープ】
売主が準備したのに買主が受け取りをサボっている状態(受領遅滞)の最中に、地震などの不可抗力で全壊した場合、「サボっていた買主のせい」とみなされ、この【Step 3】へ強制ワープさせられます!地震でも買主は全額払わなければなりません。
Step 4 双方無過失 (危険負担の本丸)
Q.地震や台風など、どちらも悪くない場合、買主はどうなるか?
支払拒絶・契約解除が可能
買主は「建物がないなら払わない」と代金の支払いを拒絶(放置)するか、契約自体を解除して債務を消滅させることができます。
※もし手付金を払っていたら、解除して返還請求します。
⚠拒絶しただけでは代金債務は残ったまま。完全に消す(チャラにする)には解除が必要=「双方無責なら買主は当然に代金債務を免れる」は×(§542①の解除をして初めて消える)。
【超・重要トラップ:旧法の亡霊に注意!】
旧法時代は「代金を払う義務も当然に消滅する」というルールでしたが、新法では消滅しません!あくまで買主が払わないと主張できる『履行拒絶権』に変わりました。本試験で「当然に消滅する」と出たら即座に「×」をつけること!
第2部:トリガー・ダッシュボード(武器庫)

問題を解く際は、以下のキーワードに反応してください。

問題文のトリガー
適用ルール・結論(決め手ワード)
「特約」がある
特約優先 (民法より優先)
引渡し「後」の滅失
買主の負け (全額払う)
滅失の原因:
売主のせい
払わなくてよい (解除等)
滅失の原因:
買主のせい
払わなければならない (全額)
滅失の原因:
不可抗力
払わないと言える (拒絶権)
「当然に消滅する」
誤り (消滅はしない)
過去問ワークアウト
「①関門・帰責の判定 → ②Stepを辿る → ③結論」の3手で解きます。すべて2020年改正後の現行法で判定。
例1:引渡し後の滅失
第0関門
建物の引渡しが終わった後、不可抗力(地震など)で建物が滅失した。買主は代金を払わなければならないか?
▼ 自分で判定してから開く(答え)
①関門:Q2「引渡しは終わっているか?」→ YES(引渡し後)
②フロー:リスクの爆弾は引渡しで買主に移転済み。不可抗力でも問答無用で買主の負け
③結論:買主は代金を全額払う(買主の負け=代金を全額支払い)
例2:双方無過失(令和3年12月 問9 肢4)
Step 4
契約締結後・引渡し前に、甲建物がEの放火で全焼した場合、①売買ではBはAへの代金支払を拒むことができ、②賃貸ではAB間の賃貸借契約は終了する。
▼ 自分で判定してから開く(答え)
①関門:引渡し前・特約なし・第三者の放火=双方無過失 → Step 4
②フロー:双方無過失なら、①売買の買主は代金支払を拒める(履行拒絶権)。②賃貸は履行不能で終了
③結論:記述のとおり → 〇(正しい) ※改正後の本物の過去問
例3:売主のミス(H19 問10 肢2)
Step 2
甲建物が引渡し前にAの責めに帰すべき火災により滅失した場合、有効に成立していた売買契約は、Aの債務不履行によって無効となる。
▼ 自分で判定してから開く(答え)
①関門:滅失原因は売主A(債務者)のミス → Step 2(債務不履行)
②フロー:売主の過失は危険負担ではなく債務不履行。買主は解除・損賠できるが、契約が「当然に無効」になるのではない
③結論:「無効となる」は誤り → ×(誤り)
例4:履行遅滞のワープ(H8 問11 肢4)
Step 2へワープ
Bが代金の支払いを終え、建物の引渡しを求めたのにAが応じないでいる場合でも、建物が地震で全壊したときは、Bは、契約を解除して代金の返還を請求することができない。
▼ 自分で判定してから開く(答え)
①関門:売主Aが引渡しを遅滞中(履行遅滞)に地震で全壊
②フロー:サボっていた売主のせいとみなされStep 2へ強制ワープ。買主は解除して代金返還を請求できる
③結論:「解除して返還請求できない」は誤り → ×(誤り)
例5:旧法の亡霊(当然消滅の罠)
Step 4 トラップ
引渡し前に、当事者双方の責めに帰することができない地震によって甲建物が全壊した場合、Bの代金支払債務は当然に消滅するため、Bは代金を支払う必要はない。
▼ 自分で判定してから開く(答え)
①関門:双方無過失(地震)→ Step 4
②フロー:改正で効果は「当然消滅」→「履行拒絶権」へ変更。代金債務は当然には消滅せず、買主が「払わない」と主張できるだけ。「当然に消滅する」は旧法の亡霊
③結論:「当然に消滅するため」が誤り → ×(誤り)
このアルゴリズムの過去問カバレッジ
大半
※危険負担は単独出題が少ないカテゴリのため専用ドリルはありません。型の練習は本記事の過去問ワークアウト5問で(解く→開いて確認の順で使うと実技になります)。
第0関門(特約・引渡し)+Step 1〜4で、危険負担の合格に効く核の肢=「引き渡す債務が全部履行不能になったとき、代金を払うのか・拒めるのか」は、現行法でこの型で判定できます。
※「売買の一部滅失→代金減額」や、解除・対抗要件・使用者責任など他分野と複合した肢は〈捨て・対象外〉=この型で深追いせず、契約不適合など該当分野の型で解きます(下の注意参照)。旧法前提の古い肢も現行法では出ない論点。これらは深入りせず△で次へ進み、合格に効く核の肢はこの型で判定します。

カバーする論点:特約優先/引渡し後のリスク移転/売主のミス(債務不履行)/買主のミス(債権者主義・全額払い)/双方無過失(履行拒絶権)/履行遅滞・受領遅滞のワープ

⚠️ 最重要の注意

  • 危険負担は2020年4月に大改正。旧法は「債権者主義(買主が払う)」「当然消滅」だったが、改正で「履行拒絶権」に変更。「当然に消滅する」と書いてあれば即×(旧法の亡霊)。⚠ただし買主のせいで滅失した場合に「買主が払う」は現行法でも正しい結論(Step 3)=「債権者主義っぽい言い回し=必ず×」ではない。×を疑うのは「双方無責なのに当然消滅・当然に買主負担」のパターンだけ。
  • 平成19年・平成5年・平成1年の過去問は旧法前提で作問されており、現行法で解き直すと当時の正解と異なる肢があります。本アルゴはすべて現行法で判定しています。
  • 「売買の目的物が一部滅失・損壊し、代金を減額できるか」は危険負担ではなく契約不適合責任(§563の代金減額請求)の論点です。この型では扱いません → 「契約不適合責任」のアルゴリズムで判定してください(「独立の減額請求権が当然にある」と即断しない)。

🔎 ダッシュボードの「引き方」:3ステップで判定する手順
早見表は”引き方”を知らないと使えません。実際の本試験で、キーワード→該当行→即答 の動作を実演します(現行法で判定)。
手順は3ステップだけ:① キーワードを拾う → ② 上の表で該当行を引く → ③ 結論をそのまま当てる
実演A(令和3年度〈12月実施〉 問9 肢4)— 改正後の本物(※上のワークアウト例2と同じ肢=引き方の解説用)
肢:「契約締結後・引渡し前に、甲建物が第三者の放火(双方無過失)で全焼した場合、売買では買主Bは売主Aへの代金支払を拒むことができ、賃貸ではAB間の賃貸借契約は終了する。」
  1. キーワードを拾う:「引渡し前」+「双方の責めに帰せない(第三者の放火)」
  2. 表を引く:→ 【双方無過失で履行不能 → 買主は代金支払を”拒絶できる”(履行拒絶権・§536①)/賃貸は履行不能で終了】
  3. 即答:表どおり買主は支払を拒める → この肢は○(正しい)
実演B(旧法の罠=「当然に消滅」を狩る)(※上のワークアウト例5と同じ肢)
肢:「引渡し前に、双方無過失の地震で甲建物が全壊した場合、Bの代金支払債務は当然に消滅するため、Bは代金を支払う必要はない。」
  1. キーワードを拾う:「代金支払債務は当然に消滅する」
  2. 表を引く:→ 【2020改正で「当然消滅」→「履行拒絶権」へ。代金債務は当然には消滅せず、買主が”払わない”と主張できるだけ】
  3. 即答:「当然に消滅する」は旧法の表現 → この肢は×(誤り=旧法の罠)
💡 コツ:まず滅失原因(誰のせいか)と引渡しの前後を確認。「当然に消滅」「債権者主義で買主が払う」は旧法=現行法では×を疑う。表と同じなら○、逆なら×。
🧠 結論を思い出す(タップで答え)
特約がある (ゲーム終了)
引渡し「後」の滅失(双方無責)=買主の負け=代金を (§567①)
売主のせいで滅失=危険負担ではなく (支払拒絶・解除・損害賠償)
買主のせいで滅失=代金を +買主からの (§543・2点セット)
(買主のせいの場合)売主に浮いた費用(利益)=買主に しなければならない
双方無過失(地震など)=買主は =払わないと言えるだけ・完全に消すには が必要
「当然に消滅する」と出たら (旧法の亡霊・現行法は履行拒絶権)
履行遅滞中に不可抗力で滅失 とみなしてStep 2へワープ/受領遅滞中なら でStep 3へ
🌫️ ここから先は深追い禁止(△で保留してOK)
型の主役=滅失原因の振り分け(債務者の過失=債務不履行/双方無過失=履行拒絶権)・引渡しの前後・履行遅滞中の滅失・特約の有効性。ここを押さえれば合格者と同じ土俵に立てます。
一方、賃貸借の一部滅失(§611)・売買の一部不適合との境界・特殊な同時履行の処理は、無理に当てはめず△で保留して次へ“全部取ろう”として時間を溶かすのが、不合格の典型パターンです。
📖 用語ミニ辞典 ― 言葉に詰まったらここ
フローで知らない言葉が出たら、ここで30秒だけ確認 → ▲でフローへ戻れます。
危険負担きけんふたん
売買契約の後、引渡し前に、目的物がどちらのせいでもなく滅失・損傷したとき、代金を払う義務がどうなるかの問題。
例:引渡し前に、地震で建物が壊れた。買主は代金を払う?
この型では まずStep 1で「誰のせいか(帰責事由)」を判定し、双方無責のときに初めて危険負担の出番です(§536①)。
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帰責事由きせきじゆう
誰のせいか」という責任の原因。落ち度・過失のことです。
例:滅失が売主のせい/買主のせい/どちらのせいでもないか。
この型では Step 1の入口。売主のせい=債務不履行、買主のせい=§536②、双方無責=危険負担、と進み先が分かれます。
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反対給付はんたいきゅうふ
契約で自分が相手に約束した「お返し」の給付。売買では買主の代金支払いのことです。
例:建物の引渡し(売主の給付)に対する、代金の支払い(買主の反対給付)。
この型では 危険負担の効果は「反対給付(=代金)を拒めるか」という形で問われます(§536①)。
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履行拒絶権りこうきょぜつけん
代金の支払いを拒める」権利。2020年改正で、危険負担の効果がこれに変わりました。
例:双方無責で建物が滅失→買主は代金の支払いを拒める(ただし契約は自動では消えない)。
この型では 改正の最重要ポイント。旧法の「債務が当然に消滅」は×。消すには別に「解除」が必要です(§536①)。
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危険の移転きけんのいてん
引渡しを境に、滅失・損傷のリスク(危険)が売主から買主へ移ること(§567)。
例:引渡し後に、どちらのせいでもなく建物が滅失→買主は代金を全額払う(買主の負け)。
この型では 「引渡しが済んでいるか」が分かれ目。引渡し後なら危険負担の出番はなく、買主が代金を負担します。
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債権者主義さいけんしゃしゅぎ
滅失しても「債権者(買主)」が代金を払うべき、という考え方。
例:買主のミスで建物が滅失→買主は代金を払う(§536②)。
この型では 買主に帰責事由があるケースの結論。「払う」+「解除もできない」の2点セットです(§543)。
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