【危険負担】大改正の本丸:「双方無過失」の履行拒絶権と旧法のひっかけ

危険負担の順路 6 / 6 双方無過失(履行拒絶権)
← 5. 買主のミス(受領遅滞)これで最後。おつかれさまでした。

いよいよ最終回——危険負担の本丸「双方無過失」です。地震や戦災など、誰のせいでもなく建物が消えた。このとき買主は代金を払わなくていい? 払う? ここで2020年の民法大改正が効いてきます。旧法では「当然に消滅」だった代金支払債務が、改正後は「履行を拒絶できる権利」に変わりました。試験でこの違いを見抜けるかが合否の分かれ目です。

目次

本日のターゲット問題(平成19年 問10 肢4 改題)

甲建物が引渡し前の時点で自然災害により滅失した場合、Bは、代金支払債務の履行を拒むことができる。

【Step 4】双方無過失(危険負担の本丸)

  原因は誰のミス?
    ├─ 売主A(債務者)  → Step 2:債務不履行
    ├─ 買主B(債権者)  → Step 3:債権者主義
    └─ 双方無過失       → Step 4:履行拒絶権(§536①)★

  本問:自然災害 → 双方無過失
    → 買主は代金支払を 拒める(§536①)
    → 「履行を拒むことができる」と一致

  ⚠ 改正前:代金債務は「当然に消滅」していた(旧§536①)
  ⚠ 改正後:代金債務は当然消滅せず、「拒絶権」になった
            → 解除すれば消える、放置すれば残る

  結論:○(正しい)

答え:◯(正しい)

🎯 この問題の核心

双方無過失なら、買主は代金支払を「拒める」(§536①・改正後の表現)。本問はその通りなので○。ただし「当然に消滅する」と書いてあれば即×——それは旧法の亡霊。

🧭 判定軸=「引渡しは”拒める”/は”払う”、そして”当然消滅”は旧法の亡霊」。まず自分で○×を出そう
双方無過失で建物が消えた——買主は代金を払う? 2020年改正の本丸です。答えのアコーディオンを開く前に、自分の手で○か×か決めてみてください。
🙋‍♂️
生徒:まず本問(平成19年 問10 肢4 改題)から。引渡しに地震で甲建物が滅失したケースですよね。買主の代金債務は当然に消滅するはずなのに、この肢は「履行を拒むことができる」と書いてある。当然消滅じゃないなら…これ×じゃないですか?
👨‍🏫
講師:いい引っかかり方だ。でも答えは——逆なんだ。2020年改正で§536①は「当然に消滅」から「履行を拒むことができる(履行拒絶権)」に変わった。今や”当然消滅”のほうが旧法の亡霊で×。「拒むことができる」は改正後の正しい表現だから、平19問10肢4改題はだ。
では逆を試そう。建物を引き渡した後に地震で壊れたら、買主はどうなる?
🙋‍♂️
生徒:引渡し後でも、地震は地震——双方無過失なのは変わりません。だったら買主はやっぱり代金を拒めるはず。「代金の支払を拒むことができない」なんて肢は×ですよね?
👨‍🏫
講師:またしても逆だ。答えは——ここが最大の落とし穴。カギは「引渡し」という境界線だ。§567①は「引渡しがあった時以後」の双方無過失の滅失は買主の負担と定めている。鍵を受け取った翌日に地震が来ても、もう代金は拒めない。だから「拒むことができない」は正しくてだ。
🙋‍♂️
生徒:じゃあ引渡しを境に、前と後で立場がまるごと逆転するんですね。前は買主が拒めて、後は買主が全額払い…。
👨‍🏫
講師:そう。引渡し前=§536①で買主は「拒める」(=当然消滅ではない)。引渡し後=§567で危険が買主に移り、拒めない。そして”当然に消滅する“の6文字を見たら、それは改正前の言い回し=×。この3点で本丸はさばける。
🙋‍♂️
生徒:整理すると——まず双方無過失か。次に引渡し前か後か。前なら§536①で「拒める」(当然消滅とは書かない)、後なら§567で「払う」。そして「当然に消滅する」と書いてあれば旧法の罠で×。この2軸だけで見抜けるんですね。
👨‍🏫
講師:完璧だ。あとはこの2軸を、似た顔の肢に当てていくだけ。ちなみに契約そのものを終わらせたい買主は、別途§542で自分から解除する——それも覚えておこう。下の道場で”当然消滅”の罠を、もう一度踏み抜いてみてくれ。
💡 深掘り:
判定軸は2つ。①双方無過失か(地震・戦災など、誰のミスでもなく消えた)。②引渡しの前か後か。引渡し=§536①で買主は代金を「拒める」(=当然消滅ではない。「当然に消滅する」は旧法の亡霊で×)。引渡し=§567①で危険が買主に移り、代金は「拒めない」(全額払い)。契約そのものを終わらせたければ、買主が自ら§542で解除する。
⚡ 仕上げ:引っかけ(○か×か、自分で答えてから開こう)
引渡しに自然災害で甲建物が滅失した場合、Bは代金支払債務の履行を拒むことができる(平成19年 問10 肢4 改題):§536①(改正後)の履行拒絶権。「拒むことができる」は改正後の正しい表現。
引渡し前の地震で甲建物が全壊した場合、Bの代金支払債務は当然に消滅するため、Bは代金を支払う必要はない(オリジナル予想問題)×:改正で効果は「当然消滅」から「履行拒絶権」へ。代金債務は当然には消滅しない=”当然に消滅する”は旧法の亡霊で誤り。
【逆罠】甲建物の引渡しを受けた後に、双方無過失の地震で甲建物が滅失した場合でも、Bは代金の支払を拒むことができない:§567①、引渡し後は危険が買主に移転。無過失でも代金は拒めず全額払い。

§536①(債務者の危険負担等/改正後):当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる

§542①一(催告によらない解除):債務の全部の履行が不能であるときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。

§567①(危険の移転):売主が買主に目的物を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失等したときは、買主は、代金の支払を拒むことができない。

【ポイント】§536①は「当然消滅」から「拒絶権」に大改正。完全に終わらせるには§542で解除する。§567で引渡し後は買主負担に切り替わる。

暗記ポイント

🎯 試験本番ではこう即答する:双方無過失(地震・戦災など)と書いてあったら、買主は代金支払を「拒める」。これだけは正解の核。「当然に消滅する」と書いてあれば即×——それは旧法の亡霊。

⚖️ 概念マップ:改正で「当然消滅 → 履行拒絶権」。買主に「払わない選択肢」が与えられただけで、契約は自動的には終わらない。終わらせたければ解除(§542)。引渡し後なら§567で逆転(買主が代金全額払い)。

  • 双方無過失 → §536①で履行拒絶権。当然消滅ではない
  • 完全に終わらせるには§542で解除(自分で行動する)
  • 引渡し後の双方無過失滅失 → §567で買主は代金全額払い(拒絶不可)

⚠️ よくある引っかけ

  • 「代金支払債務は当然に消滅する」→ ×(旧法の亡霊)。改正後は履行拒絶権
  • 「双方無過失の滅失でも引渡し後なら買主が払う」→ (§567)
  • 「双方無過失で買主は何も主張できない」→ ×。履行拒絶権+解除権がある

オリジナル「予想問題」道場(大改正の罠)

【当ブログ・オリジナル予想問題】 大改正の核心を狙い撃ちした問題です。「当然に消滅」というフレーズが何を意味するか——ここが見抜けるかどうか。

Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約を締結した。建物の引渡し前に、当事者双方の責めに帰することができない地震によって甲建物が全壊した場合、Bの代金支払債務は当然に消滅するため、Bは代金を支払う必要はない。

👨‍🏫
講師:「結論は買主Bが代金を払う必要がないこと自体は正しい方向です。でも記述は『当然に消滅するため』と理由づけている。これが旧法の言い回し。改正後は『拒絶権の行使』で結果として払わなくてよくなるだけで、債務自体は当然には消えていません

結論は同じでも、理由づけが旧法なら×(誤り)と判定する。試験では『結論』だけでなく『理由』も読みましょう。これが大改正カテゴリの最強の罠です。」
危険負担 / Step4:双方無過失
大改正の本丸「当然消滅」の罠
オリジナル予想問題(大改正の罠)
📋 問題文

Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約を締結した。建物の引渡し前に、当事者双方の責めに帰することができない地震によって甲建物が全壊した場合、Bの代金支払債務は当然に消滅するため、Bは代金を支払う必要はない。

🔑 条件の抽出
原因双方無過失(地震)で引渡し前に全壊
記述「代金支払債務は当然に消滅する」
Step 4:双方無過失(危険負担の本丸)
双方無過失なら買主は代金支払を拒める。だが2020年改正で効果が「当然消滅」から「履行拒絶権」へ変更された。代金債務は当然には消滅せず、買主が「払わない」と主張できる(または解除すれば消滅)。「当然に消滅するため」は旧法の亡霊
結論

×(誤り)

改正で効果は「当然消滅」から「履行拒絶権」へ変更。代金債務は当然消滅しない(買主は履行拒絶できるだけ)。「当然に消滅する」は旧法の亡霊で誤り。

📋 問題文

Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約を締結した。建物の引渡し前に、当事者双方の責めに帰することができない地震によって甲建物が全壊した場合、Bの代金支払債務は当然に消滅するため、Bは代金を支払う必要はない。

Step 4:双方無過失(危険負担の本丸)

双方無過失のとき、買主の代金支払債務は「当然に消滅」する?

最終判定

「代金支払債務は当然に消滅する」は正しい?

結論

×(誤り)

改正で効果は「当然消滅」から「履行拒絶権」へ変更。代金債務は当然消滅しない(買主は履行拒絶できるだけ)。「当然に消滅する」は旧法の亡霊で誤り。

【まとめ】📌 この記事の核心

📌 この記事の核心
⚖ 双方無過失の滅失なら買主は代金支払を「拒める」(§536①)。これが2020年改正の本丸。「当然に消滅」は旧法の亡霊——フレーズだけで即×。完全に終わらせたければ買主が自ら解除(§542)する必要がある。引渡し後なら§567で逆転して買主が全額負担。これで危険負担アルゴリズムは完結。

🎉 危険負担シリーズ全4回 完結! 第0関門(特約・引渡し)→Step 2(売主のミス)→Step 3(買主のミス)→Step 4(双方無過失)の4ルートをすべて押さえました。試験本番ではこのアルゴリズムを1問あたり30秒で回せるようになるのが目標です。


つぎの順路へ

危険負担はここまでです。おつかれさまでした。
つづけて読むなら賃貸借・借地借家法の順路へ。対抗要件・転貸・定期借地借家の仕分けができるようになります。

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