【危険負担】合否を分ける第0関門「特約と引渡し」をアルゴリズムで判定

危険負担の順路 3 / 6 第0関門(特約と引渡し)

「家が地震で消えたら、代金はどうなる?」——これが危険負担の入口です。でも実は、この問いに飛びつく前に必ず通る関門があります。それが「特約はあるか/引渡しは済んでいるか」。ここをスキップすると、民法のルールどおりに考えても全部ハズレます。なぜなら、危険負担は任意規定——当事者が「こうする」と決めればそれが絶対優先だからです。

目次

本日のターゲット問題(平成19年 問10 肢4)

甲建物が引渡し前の時点で自然災害により滅失しても、AB間に「自然災害による建物滅失の危険は、建物引渡しまでは売主が負担する」との特約がある場合、Aの甲建物引渡し債務も、Bの代金支払債務も共に消滅する。

【第0関門】特約はあるか?/引渡しは済んでいるか?

  Q1:特約はあるか?
    ├─ YES → 特約が絶対優先(ゲーム終了)
    │       本問:「危険は引渡しまで売主が負担」
    │       → 売主が建物消失リスクを負う
    │       → 引渡し債務 消滅 / 代金支払債務 消滅
    └─ NO  → Q2へ

  Q2:引渡しは済んでいるか?
    ├─ YES → §567で買主負担(買主が代金を全額払う)
    └─ NO  → Step 1(帰責事由の判定)へ

  本問:特約あり → 両債務消滅 → ○

答え:◯(正しい)

🎯 この問題の核心

危険負担は任意規定。当事者の特約が民法のルールより絶対優先する(§91)。本問は「危険は引渡しまで売主が負担」と決めているから、その通り両債務とも消滅 → ○。

🧭 第0関門=「特約」と「引渡し」の2枚の関門。⚖民法(§536)を動かす前に、まず自分で通してみよう
危険負担は任意規定。特約があれば民法は引っ込み(§91)、引渡し済みなら§567で買主負担に切り替わる。「誰のせい?」を考えるのは、この2枚を通したその後です。
🙋‍♂️
生徒:まずターゲット(平19問10肢4)から。「危険は引渡しまで売主が負担」という特約があって、引渡し前に地震で建物が消えた ── その場合両方の債務が消える、と言い切ってます。こういう断定的な肢はたいてい罠だから、×だと思います。
👨‍🏫
講師:惜しい、そこが引っかけの一枚上を行くところ。答えはだ。危険負担は任意規定で、当事者が特約で決めたらそっちが絶対優先(§91)。「危険は引渡しまで売主が負担」=建物が消えるリスクは売主持ち→買主は代金を払わなくていい→Aの引渡し債務もBの代金債務も両方消える。特約どおりで○。ここは第0関門、民法(§536)の出番はまだ来ない。
🙋‍♂️
生徒:特約があると民法が引っ込むんですね。じゃあ特約がない普通のケースは、次に何を見るんですか?
👨‍🏫
講師:いい問いだ。特約が無ければ次の関門「引渡しは済んだか」を見る。ここでもう1問(平成1年問9肢1)。「家屋の所有権移転登記後、引渡し前に天災で滅失した場合、売主Aは買主Bに代金を請求できない」── これは○か×か?
🙋‍♂️
生徒:登記がもう買主に移ってる…登記が動いた=所有者は買主だから、代金は払うはず。だから「請求できない」は×…かな?
👨‍🏫
講師:それが定番の罠だ。答えは。危険のバトンは「登記」ではなく「引渡し」で移る(§567)。まだ引渡し前だから買主負担には切り替わらない。引渡し前の天災(双方に責任なし)では買主は代金を拒める=Aは「請求できない」。だから○。登記に釣られたら負けだ。
🙋‍♂️
生徒:なるほど…鍵を渡した瞬間にリスクのバトンが買主へ移る。それまでは登記が動いていても売主持ち。整理すると ── ①特約はあるか(あれば§91で特約が全部決める)→ ②引渡しは済んだか(済んでれば§567で買主が全額)→ まだなら次のStep、という順で見ればいいんですね。
👨‍🏫
講師:その通り。第0関門は「特約 → 引渡し」の2枚。ここで結論が出たらゲーム終了、「誰のせい?」の判定はその後だ。あとはこの2軸を、似た顔の肢に当てるだけでいい。
💡 深掘り:
第0関門は2枚の関門。①特約(§91・任意規定)=あれば特約が絶対優先。「売主が危険を負担」なら両債務消滅、「買主が負担」なら買主が全額払い。②引渡し(§567)=済んでいれば買主負担に切り替わる。危険のバトンは登記ではなく引渡しで移る。①②ともNOのときだけ、初めてStep1(帰責事由)の判定へ進む。
⚡ 仕上げ:引っかけ(○か×か、自分で答えてから開こう)
「危険は引渡しまで売主が負担」との特約があり、引渡し前に滅失した場合、Aの引渡し債務もBの代金支払債務も共に消滅する(平19問10肢4):危険負担は任意規定。特約が民法より絶対優先する(§91)。「売主負担」の特約なので両債務とも消滅。
所有権移転登記後・引渡し前に天災で家屋が滅失した場合、売主Aは買主Bに代金を請求できない(平成1年問9肢1):危険のバトンは登記でなく引渡しで移る(§567)。引渡し前なので買主は代金を拒める=Aは「請求できない」。
「危険は引渡しまで売主が負担」との特約があっても、危険負担は§536の強行規定だから特約は無効となり、買主が代金を負担する×:危険負担は任意規定。特約が民法より優先する(§91)。「特約があるのに§536で考える」は定番の誤り。
引渡しが済んだ後、双方の責めに帰せない事由で建物が滅失した場合でも、買主は代金を全額支払わなければならない【逆罠】建物が消えたのに買主が払うのは酷に見えるが、引渡しで危険は買主へ移る(§567)。引渡し後なら買主が全額負担で○。

§91(任意規定と異なる意思表示):法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う

§567①(目的物の滅失等についての危険の移転):売主が買主に目的物を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失等したときは、買主は代金支払を拒めない(追完請求・解除・損賠もできない)。

【ポイント】§91=特約優先の根拠。§567=引渡し後は買主負担に切り替わる(危険の移転)。この2つが第0関門の柱。

危険負担 / 第0関門:特約
特約は民法より優先(任意規定)
平成19年 問10 肢4
📋 問題文

甲建物が引渡し前の時点で自然災害により滅失しても、AB間に「自然災害による建物滅失の危険は、建物引渡しまで売主が負担する」との特約がある場合、Aの甲建物引渡し債務も、Bの代金支払債務も共に消滅する。

🔑 条件の抽出
特約「建物滅失の危険は引渡しまで売主が負担」
原因引渡し前に自然災害で滅失
第0関門 / Q1:特約はあるか?
危険負担は任意規定。当事者が特約を結べば民法のルールより特約が絶対優先(ゲーム終了)。本問は「危険は引渡しまで売主が負担」という特約。だから建物滅失のリスクは売主が負い、買主は代金を払わなくてよい=両債務とも消滅。
結論

○(正しい)

危険負担は任意規定。特約が優先する。「売主が危険を負担」する特約なので両債務とも消滅する。

📋 問題文

甲建物が引渡し前の時点で自然災害により滅失しても、AB間に「自然災害による建物滅失の危険は、建物引渡しまで売主が負担する」との特約がある場合、Aの甲建物引渡し債務も、Bの代金支払債務も共に消滅する。

第0関門 / Q1:特約はあるか?

「売主が危険を負担する」特約があるとき、両債務はどうなる?

最終判定

「特約があるとき両債務とも消滅する」は正しい?

結論

○(正しい)

危険負担は任意規定。特約が優先する。「売主が危険を負担」する特約なので両債務とも消滅する。

暗記ポイント

🎯 試験本番ではこう即答する:危険負担の問題を見たら、まず「特約はあるか」「引渡しは済んでいるか」を探す。どちらかにYESなら、その時点で結論が出る。「誰のせい?」のステップ判定はその後

⚖️ 概念マップ:危険負担は任意規定。民法の§536は「何も決めなかったとき」のデフォルト。特約 → §567 → 帰責事由の順で関門を通過する。第0関門で結論が出ればゲーム終了。

  • 特約あり → 特約優先(§91)。「売主負担」なら両債務消滅、「買主負担」なら買主全額払い
  • 引渡し済み → §567で買主負担(買主は代金を全額払う)
  • 特約なし+引渡し前 → ここで初めてStep 1(帰責事由)へ進む

⚠️ よくある引っかけ

  • 「特約があるのに§536(民法)で考える」→ ×。特約優先で民法は引っ込む
  • 「引渡し前後を区別しない」→ ×。引渡しは危険のバトン渡し。前後で結論が逆転する

過去問「比較」道場(ひっかけ回避)

【比較対象:平成1年 問9 肢1】 今度は「所有権移転登記後、引渡し前」というイジワルな設定です。第0関門の「引渡し」がカギを握ります。

家屋の所有権移転登記後、引渡し前に、その家屋が天災によって滅失した場合、Aは、Bに対し代金を請求することができない。

👨‍🏫
講師:「『登記済み・引渡し前』のときに天災で滅失。引渡しが済んでいないので§567の出番はまだ来ません。天災は双方無過失だから本来はStep 4。改正後ルールでは買主は代金支払を拒める=『請求できない』は○(正しい)

『登記が移ったからもう買主負担』は罠。危険のバトンは『登記』ではなく『引渡し』で移ります。ここを混同させるのが定番の引っかけです。」

【まとめ】📌 この記事の核心

📌 この記事の核心
⚖ 危険負担の問題はいきなり「誰のせい?」で考えない。第0関門=特約/引渡しを最初に通す。特約があれば民法(§536)は引っ込み、特約の通りに結論が出る(§91)。引渡し済みなら§567で買主負担に切り替わる。本問は「危険は引渡しまで売主が負担」の特約があるから、両債務とも消滅で○。

→ 次の記事:「売主のミス=債務不履行ルート」


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