【区分所有法】“書面”の三兄弟 ─ 書面で票を出す・集会を開かず書面で決める・全員の書面合意を言い分ける

📘 深掘り解説 | 区分所有の順路 3 / 8 論点④〈集会の運営〉に潜む「書面の三兄弟」 のくわしい解説です
この記事は〈区分所有の型〉で迷った論点だけを読む場所です。順に全部読む必要はありません。
区分所有法 ・ 論点④の深掘り:書面の三兄弟
“書面”の三兄弟 ─ 書面で票を出す・集会を開かず書面で決める・全員の書面合意を言い分ける
「書面決議=全員」と丸暗記していると、書面で票を出すだけの話にまで”全員”を持ち込んで撃ち抜かれます。同じ「書面」でも、集会という議論の場が生きているかで天秤の傾きはまるで違う。講師と生徒の会話で三兄弟を言い分けます。
目次

まず1問 ― 議決権は書面で出せない?(昭和63年 問14 肢1)

集会の議決権の行使は,集会に出席して行うことを要し,書面で,又は代理人によって行うことはできない。

📜 “書面の三兄弟” ― 軸は「集会という議論の場が生きているか」
長男:書面・代理人による議決権行使(集会は開かれる・票の出し方を変えるだけ)=完全に自由(§39②が明文で保障・規約の定めも全員の承諾も不要)
次男:書面による決議(集会そのものを開かない)=“やること”に全員の承諾(§45①・中身は各議題の定数の多数決)
三男:全員の書面合意(採決すらしない)=決議があったものとみなす(§45②)

📌 本問は長男の話。集会は開かれる前提で「出席して行うことを要し、書面・代理人ではできない」と断言 ⇒ §39②の明文と真っ向から食い違う。

結論:×(誤り)

§39②が明文で「議決権は、書面又は代理人によっても行使することができる」と保障しています。規約の定めも、全員の同意・承諾も不要=完全に自由。「できない」と断言する本肢は×。約38年前の肢ですが、§39②の骨格は現行法(令和8年4月施行)でも同じ=今出ても×です。
では、なぜ次男(書面による決議)には全員の承諾が要るのに、長男は自由なのか? ここからが本題です。

🧠 なぜこうなる? ― 講師と生徒で”天秤”に乗せる

⚖️ 天秤の世界
左の皿には「集会という議論の場をみんなから奪う重さ」、右の皿には「集会は開いたまま、1人が票の出し方を変えるだけの軽さ」。奪うものが重ければ全員の承諾、誰の議論の場も奪わなければ完全に自由──同じ”書面”でも、天秤の傾きはまるで違います。
🙋‍♂️
生徒:先生、暗記メモで「省略・書面決議=全員の同意」と覚えました。じゃあ、出張で集会に行けない人が書面で票を出すのにも、全員の同意が要るんですよね?
👨‍🏫
講師:その丸め方は入門としては悪くない。だが束ね方が粗いままだと、本試験がまさにそこを撃ってくる。冒頭の肢がそれだ──昭和63年に実際に出ている。
🙋‍♂️
生徒:たしかに「書面=全員の同意が要る」と考えると、「勝手に書面はダメ」=○に見えちゃいます。でも答えは×…。なぜですか?
👨‍🏫
講師:天秤に乗せてみろ。”書面”が出てくる制度は3つある=三兄弟だ。区別の軸はたった1つ、「集会という議論の場が生きているか」。まずシーンA。大阪へ単身赴任中の305号室・佐藤さん。集会は日曜にマンションの集会室で開かれる。佐藤さんは議決権行使書に○を付けてポストに投函した。集会室では質疑も反論もいつも通り行われる。──さて、誰かの”議論の場”を奪ったか?
🙋‍♂️
生徒:…誰も奪ってません。集会はちゃんと生きていて、佐藤さんが票の出し方を変えただけです。
👨‍🏫
講師:そう、右の皿=軽い。だから長男=§39②の書面・代理行使は、条文が明文で「議決権は、書面又は代理人によっても行使することができる」と保障している。規約の定めも、全員の同意・承諾も不要=完全に自由だ。
👨‍🏫
講師:シーンB。理事長が回覧板で「今年は集会を開かず、書面を回して決めます」と言い出した。これはどうだ?
🙋‍♂️
生徒:それは…集会そのものが消えます。その場で質問して、反論して、心変わりする機会が、全員からなくなる。
👨‍🏫
講師:左の皿=重い。全員から議論の場を奪うんだから、“書面でやること”そのものに全員の承諾が要る──これが次男=§45①書面による決議だ。ただし二段構えに注意しろ。全員の承諾は「集会を開かず書面でやる」というやり方へのOKにすぎない。承諾が取れたあとの中身は各議題の定数の多数決──普通決議なら過半数の賛成で可決だ。「全員の承諾=全員賛成が必要」ではない
👨‍🏫
講師:シーンC。そもそも採決すらしない。全員が同じ書面に判を押した=全員の合意。この時点で「書面による決議があったものとみなす」──三男=§45②だ。中身に全員が一致しているんだから、もう決を採る必要すらない。ちなみに、この書面決議が集会の決議と同一の効力を持つのは§45③の働きだ。混ぜるなよ。
🙋‍♂️
生徒:見えました! 全員が要るのは“集会を開かないこと”へのOKであって、票を紙で出すことじゃないんですね。長男は完全に自由だ!
👨‍🏫
講師:その通り。長男には“おまけ”もある。§39②の後段だ。書面・代理人で行使した人の頭数と議決権は「出席した区分所有者」に算入される。令和8年改正で決議の母数は原則出席者ベースになったから、これが効く──欠席してほったらかしなら母数から消えるが、書面で票を出せば頭数も議決権も出席側にフルカウントだ。
🙋‍♂️
生徒:票を出すだけで「出席した人」扱い。分母の側にも効くんですね。
👨‍🏫
講師:ああ。ただし”分母”の設計そのものは姉妹記事〈決議の分母〉が主役だ。ここでは長男のおまけとして覚えておけば十分。さて、冒頭の昭和63年 問14 肢1を3手で片付けるぞ。
「集会の議決権の行使は,集会に出席して行うことを要し,書面で,又は代理人によって行うことはできない。」
手1:集会は開かれる前提で「票の出し方」を断言している=長男(§39②)の論点。手2:§39②の明文に真っ向から反する。「書面決議=全員の承諾」の知識をここへ持ち込ませるのが出題者の狙いだ。手3×。約38年前の肢だが、§39②の骨格は現行法でも同じ=今出ても×だ。
👨‍🏫
講師:じゃあ引っかけ①。平成21年 問13 肢2:「法又は規約により集会において決議をすべき場合において、これに代わり書面による決議を行うことについて区分所有者が1人でも反対するときは、書面による決議をすることができない。」──○か×か?
🙋‍♂️
生徒:「1人でも反対」…厳しすぎる気もするけど、これは次男の話ですよね。”やること”への全員の承諾だから、1人の反対で崩れる。○!
👨‍🏫
講師:正解、○だ。同じ型は令和3年(10月)問13肢1でも再登場している=定番中の定番。
👨‍🏫
講師引っかけ②。平成23年 問13 肢4:「法又は規約により集会において決議すべきとされた事項であっても、区分所有者全員の書面による合意があったときは、書面による決議があったものとみなされる。」
🙋‍♂️
生徒:全員の「合意」…三男だ。決議があったものとみなされる──条文どおり。○!
👨‍🏫
講師:○だ。次は引っかけ③=言葉の罠。同意・承諾・合意──似て非なる3つの語を、条文はきっちり使い分けている。
同意=§36 招集手続の省略(全員の同意で招集通知をスキップ)
承諾=§45① 書面による決議(”やり方”へのOK・中身は多数決)
合意=§45②(中身への全員一致・即「決議があったものとみなす」)
ついでに1行だけ対比しておく。議事録の署名は議長+集会に出席した区分所有者の2名(「全員」は×)。招集省略や議事録の深掘りは姉妹記事の主戦場だから、ここではこの対比だけで十分だ。
👨‍🏫
講師引っかけ④(現代の罠)。「書面=自由なら、ネット投票(電磁的方法)も自由だろ?」──どうだ?
🙋‍♂️
生徒:え…書面がOKなら、ネットもOKじゃないんですか?
👨‍🏫
講師:そこが罠だ。電磁的方法による議決権行使には規約又は集会の決議による定めが必要(§39③)。「書面=自由」を電磁的方法へ一般化しない。定めがあれば書面による行使とみなされて、さっきの後段=出席算入も同じに働く。
👨‍🏫
講師:最後に小さな注記を1行だけ。三兄弟の「全員」は正確には「区分所有者(議決権を有しないものを除く)全員」──§38の2の裁判所の裁判で議決権を有しない扱いになった所在等不明区分所有者は頭数に入らない。単なる行方不明では自動除外されない=裁判を経た場合に限る
🙋‍♂️
生徒:同じ”書面”でも、集会が生きているかで天秤がまるで違う。三兄弟と三語、持って帰ります!
⚖️ 暗記メモ(この天秤を本番へ持っていく)
  • 三兄弟=長男§39②書面・代理行使(集会あり・完全に自由・出席に算入)/次男§45①書面による決議(集会なし・“やり方”に全員の承諾・中身は各議題の定数の多数決)/三男§45②全員の書面合意(採決なし・決議があったものとみなす
  • 三語割当=同意=§36招集省略/承諾=§45①/合意=§45②
  • 電磁的方法だけは授権要(§39③・規約又は集会の決議。定めがあれば書面とみなして出席算入)
  • 「全員」の正体=区分所有者(議決権を有しないものを除く)全員(§38の2の裁判で除外された者は頭数外)
📖 条文チェック(§39②③・§45①②③・§36・§38の2・§42③)

§39②(議決権の書面・代理行使):議決権は、書面又は代理人によっても行使することができる(=自由・規約の定め不要)。後段=書面・代理行使をした者の頭数と議決権は「出席した区分所有者」の数・議決権に算入する。

§39③(電磁的方法)規約又は集会の決議により、書面に代えて電磁的方法で議決権を行使できる。この場合、書面による行使とみなして後段(出席算入)を適用。

§45①(書面又は電磁的方法による決議):区分所有者(議決権を有しないものを除く)全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議ができる(=集会を開かない)。決議自体は各議題の定数の多数決

§45②:区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があったときは、書面又は電磁的方法による決議があったものとみなす

§45③:書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。

§36(招集手続の省略):区分所有者(議決権を有しないものを除く)全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで集会を開ける。

§38の2(所在等不明区分所有者)裁判所の裁判により議決権を有しない扱いにできる → 三兄弟の「全員」の頭数から外れる(単なる行方不明では自動除外されない)。

対比:§42③(議事録):議事録の署名は議長+集会に出席した区分所有者の2名(「全員」は×)。

論点④の深掘り:書面の三兄弟 ─ 3手で解く
議決権は書面・代理人でも行使できるか
昭和63年 問14 肢1
📋 問題文(色=解き方の地図)

集会の議決権の行使は,集会に出席して行うことを要し,書面で,又は代理人によって行うことはできない

1 見分ける ▸ どの論点? → 集会の議決権の行使
🔵青の「集会の議決権の行使」=集会は開かれたまま「票の出し方」を問う話。三兄弟の長男(§39②)へ振り分ける。
2 考える ▸ 決め手と罠は? → §39②が明文で「書面又は代理人によっても行使することができる」=完全に自由
🟡規約の定めも全員の承諾も不要。「書面決議=全員の承諾」(次男§45①)を票の出し方へ持ち込ませるのが罠=🔴「できない」の断言は明文と正反対。
3 仕上げる ▸ ○か×か? → × 誤り
議決権は書面・代理人でも行使できる。「できない」と断言する本肢は誤り。§39②の骨格は現行法でも同じ=今出ても×。
📋 問題文(ヒントなし・自分で解く)

集会の議決権の行使は,集会に出席して行うことを要し,書面で,又は代理人によって行うことはできない。

1 見分ける ▸ どの論点?
2 考える ▸ 決め手は?
3 仕上げる ▸ ○か×か?
🏋 この論点の過去問を、もっと解く

書面・代理人による議決権行使、書面による決議、招集・集会運営の過去問は、ドリルの論点④にまとめてあります。3手(見分ける→決め手→○×)で腕試し。

▶ 区分所有法ドリルで腕試し →
📌 この記事の核心
“書面”の三兄弟は「集会という議論の場が生きているか」で言い分ける。長男§39②書面・代理行使=完全に自由(集会は生きている・出席に算入)/次男§45①書面による決議=”やること”に全員の承諾(集会を奪う・中身は各議題の定数の多数決)/三男§45②全員の書面合意=決議があったものとみなす。語も三つ巴で同意(§36)・承諾(§45①)・合意(§45②)。電磁的方法だけは規約又は集会の決議が要る(§39③)。天秤で分かれば、38年前の過去問も今の本試験も同じ手で解けます。
読み終えたら | 区分所有の順路 3 / 8
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