連帯債務・保証の順路 8 / 13 連帯債務者の相殺
連帯債務者の一人(B)が債権者に反対債権を持っている。Bが相殺すれば全員が助かります(相殺は絶対効)。では、他の連帯債務者(C)はその債権を勝手に使って相殺できるのか?——改正で答えがスッキリ整理されました。
目次
本日のターゲット問題(令和3年度 問2 肢2)
債務者A、B、Cが負担部分均等で債権者Dに300万円の連帯債務を負う。BがDに対して300万円の債権を有している場合、Bが相殺を援用しない間に300万円の支払の請求を受けたCは、BのDに対する債権で相殺する旨の意思表示をすることができる。
🗺 登場人物の関係
連帯債務者Bが債権者Dに300万の反対債権 → CがDから請求された
→ §439②。Cは"Bの負担部分まで履行を拒める"だけ。Bの債権で相殺はできない(肢は誤り)
【連帯債務 S1:相殺(§439)】
反対債権を持つB本人が相殺 → 絶対効(全員の債務が対当額消える §439①)
他の連帯債務者C は…
・他人(B)の債権で 相殺はできない(処分権なし)
・Bが相殺しない間、Bの負担部分の限度で「履行を拒絶」できる(§439②)
答え: ×(誤)
🎯 この問題の核心
相殺できるのは反対債権を持つB本人だけ(§439①・絶対効)。他のCはBの債権で相殺できず、Bの負担部分の限度で履行を拒絶できるだけ(§439②)。
🧠 なぜこうなる? ── 相殺か、履行拒絶か
「Cも相殺できる」と丸暗記していると、改正の言い換えや似た肢で必ずぐらつきます。なぜCは相殺できず履行拒絶だけなのかを腹落ちさせれば、旧法の記憶に引きずられず一発で切れるようになります。
🧭 🧭 判定軸=「債権は持ち主のもの。勝手に使えない」
相殺は債権の処分だから、その債権を持つ本人(B)にしかできない。Cにできるのは支払いを待たせる「履行拒絶」だけ。
⚖️ まず天秤に乗せる
⚖️ ここは「早く全員を救いたい」他の連帯債務者Cの便宜と、反対債権はBの財産でありその処分権はB本人に留保するべきという要請の綱引きです。誰が得かではなく「その債権は誰のものか」で決まる。だから相殺(=処分)はB本人だけ、Cはせいぜい「Bの分は待って」と履行を拒めるところまで、と切り分けられます。
相殺できるのは
反対債権を持つB本人だけ。Bが相殺すれば絶対効で全員の300万円が対当額まで消える(§439①)。
Cにできるのは
他人(B)の債権は処分できないので相殺は不可。Bが相殺しない間、Bの負担部分100万円の限度で「履行拒絶」できるだけ(§439②)。
🙋♂️生徒:相殺は絶対効なんですよね? だったらCがBの債権で相殺して、全員助かればいいじゃないですか。
👨🏫講師:よくある誤答だ。旧法ではCが負担部分について相殺を援用できたから、その記憶が残っているんだな。でも一つ聞くぞ。BがDに対して持っている300万円の債権は、誰の財産だ?
👨🏫講師:そのとおり。ではBの財布に入っている300万円を、Cが勝手にレジから抜いて使えるか? 相殺というのは債権を消す=処分する行為だ。他人の財産を本人の同意なく処分はできない。だから相殺できるのはB本人だけ(§439①)。Bが相殺すれば絶対効で全員の300万円が消えるが、それをやるかどうかはB本人の自由だ。
🙋♂️生徒:じゃあBがモタモタして相殺してくれない間、Cは300万円全額を払うしかないんですか?
👨🏫講師:そこが2つ目の落とし穴だ。改正で手当てされていて、CはBの負担部分100万円の限度で「今は払わない」と履行を拒める(§439②)。相殺そのものはできないが、「Bの分はBの債権で消せるはずだから、その100万円は今は払わない」と言えるわけだ。自分の言葉で整理してみろ。
🙋♂️生徒:はい。相殺できるのはBだけ。CはBの債権では相殺できず、Bの負担部分100万円の分だけ支払いを待てる——つまり相殺(処分)と履行拒絶(支払猶予)を取り違えさせるのが、この論点の罠ですね。
👨🏫講師:完璧だ。「相殺」と書いてあれば✕、「履行拒絶」なら○と機械的に切れる。では本試験の肢で腕試しだ。①(令和3年 問2 肢2)「Bが相殺を援用しない間に請求を受けたCは、BのDに対する債権で相殺する旨の意思表示をすることができる」——○か×か?
🙋♂️生徒:×です。できるのはBの負担部分の限度での“履行拒絶”だけ(§439②)で、“相殺”は処分権を持つB本人のみ(§439①)。旧法の亡霊=昔はCが負担部分につき相殺を援用できたけど、改正で履行拒絶に変わった。相殺と履行拒絶のすり替えの罠ですね。
👨🏫講師:よし。②(令和7年 問9 肢3)。連帯債務者の一人について生じた事由のうち「他の連帯債務者に効力が生じないもの」を選ぶ四択で、肢3が「連帯債務者がした相殺の援用」だ。これは“効力が生じないもの”に当たるか?
🙋♂️生徒:当たりません。相殺の援用はコウ・ソウ・コンの一角で絶対効(更改§438・相殺§439①・混同§440)だから、他の連帯債務者に及ぶ。“効力が生じないもの”は請求だけ=正解は肢1です。相殺を相対効だと主語をすり替えるのが罠ですね。
👨🏫講師:では締めに③(令和3年 問2 肢1・肢3)。「DがCに債務を免除した/DがAに裁判上の請求をした」場合でも、DはA・Bに300万円全額を請求できるか?
🙋♂️生徒:できます。請求も免除も相対効(§441)だから、DがCに免除・請求してもA・Bには及ばず、DはA・Bに300万円全額を請求できる。絶対効は更改§438・相殺§439①・混同§440だけで、請求・免除を絶対効と思い込むのが罠。横に並ぶ連帯債務でも、影響し合う事由は限定列挙なんですね。
第439条① 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する(=絶対効)。② 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
暗記ポイント
🎯 試験本番ではこう即答する
⚖️ 概念マップ:連帯債務の相殺。①反対債権を持つ本人の相殺=絶対効(全員消える)②他の連帯債務者は他人の債権で相殺できず、履行拒絶のみ。
- 反対債権を持つ連帯債務者本人の相殺=絶対効(§439①)
- 他の連帯債務者は他人の債権で相殺できない(処分権がない)
- ただしBの負担部分の限度で履行を拒絶できる(§439②・改正)
⚠️ よくある引っかけ
- 「他の連帯債務者がBの債権で相殺できる」→ ✕(できるのは履行拒絶のみ)
- 「相殺は相対効」→ ✕(相殺は絶対効)
🏋 この論点の過去問を、もっと解く
連帯債務・保証の過去問は、
連帯債務・保証ドリルに論点別にまとめてあります。「現在地スキャン→決め手→○×」の3手で腕試し。
【まとめ】📌 この記事の核心
📌 この記事の核心
相殺できるのは反対債権を持つ本人だけ(絶対効 §439①)。他の連帯債務者は他人の債権で相殺できず、負担部分の限度で履行を拒絶できるだけ(§439②)。「相殺」か「履行拒絶」かで○×が決まる。
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