遺言は「最後の意思」が勝ちます。何枚書いても、矛盾する部分は新しいものが古いものを上書きする。今回は遺言の撤回・抵触の「上書きレース」と、もらうはずだった人(受遺者)が先に亡くなったときの行方を攻略します。
目次
本日のターゲット問題(後の遺言による上書き)
Aが公正証書で土地をBに遺贈すると遺言した場合でも、後に自筆証書でこれをCに遺贈すると遺言したときは、Bは、Aが死亡しても、当該土地の所有権を取得しない。
🗺 登場人物の関係
Aが①公正証書で「Bに遺贈」→ ②後に自筆証書で「Cに遺贈」
→ §1023。後の遺言が前と矛盾=前は撤回。Bは取得せず、Cが取得
【遺言の撤回・抵触=上書きレース】
・前後の遺言が抵触 → 後の遺言で前を撤回擬制(§1023①)
※公正証書 vs 自筆証書 …形式は優劣に無関係
・遺言後に目的物を生前処分(売却等)→ 抵触部分は撤回擬制(§1023②)
・受遺者が遺言者より先に死亡 → 遺贈は失効・代襲なし(§994)
答え: ◯(正)
🎯 この問題の核心
前後の遺言が抵触する部分は後の遺言で前を撤回したものとみなす(§1023①)。公正証書か自筆証書かは優劣に無関係。BはCに優先されず取得しない。
🧭 判定軸=「最後の意思」が勝つ“上書きレース”
遺言はいつでも撤回・変更できる。だから複数あれば一番新しい意思が優先します。まず本問を自分で○×判定してから、講師と生徒の対話を読み進めましょう。
🙋♂️生徒:まず本問(Aが公正証書でBに遺贈→後に自筆証書でCに遺贈)から。公正証書で作った遺言のほうが、あとの自筆証書より“格上”のはず。だからBはちゃんと土地をもらえて、「Bは取得しない」という本問は × ですよね?
👨🏫講師:そこが最大の罠。答えは ○だよ。形式の強さは関係ない。後の遺言が前と矛盾する部分は、後で前を撤回したものとみなす(§1023①)。公正証書(前)でBに遺贈しても、後の自筆証書(後)でCに遺贈すれば、その土地はCのもの。BはCに優先されず取得しない。だから「Bは取得しない」は正しい=○だ。
🙋♂️生徒:なるほど…“新しい意思が勝つ”んですね。じゃあ、書き直さなくても、遺言した物をA自身が生きているうちに売ってしまったら?
👨🏫講師:いい着眼だ。比較道場①(平成12年 問10 肢3)で確かめよう。Aが「甲土地をBに相続させる」と遺言したあと、A自身が甲土地を第三者に売って登記まで移した。「その遺言は取り消されたものとみなされる」──○か×か?
🙋♂️生徒:遺言が先にあるんだから、あとの売買のほうが引っ込むはず…だから「取り消されたとみなす」は ×?
👨🏫講師:また引っかかったね。正解は ○。遺言と矛盾する生前処分(売却・登記)をしたら、その部分は遺言を撤回したものとみなす(§1023②)。売買が無効になるのではなく、遺言のほうが撤回擬制される。「もう人に売った=意思が変わった」と行動で読むんだ。
🙋♂️生徒:受遺者の側も気になります。もらう予定だった人(受遺者)が、遺言者より先に亡くなったら、その子が代わりにもらえますよね?
👨🏫講師:それも比較道場②(平成4年 問13 肢3)で。遺産の全部を相続人の一人に贈与する遺言があっても、遺言者より先に受遺者が死亡→「その遺贈は効力を生じない」。これは ○。§994で遺贈は失効する。しかも代襲は“相続人”の制度で、遺贈にはあてはまらない。──たとえばAが「全財産を弟Xへ」と遺言したのに、Aより先にXが亡くなれば、Xの子は代わってもらえない。その財産はAの相続人に戻るんだ。
🙋♂️生徒:つまり2本柱ですね。①後の遺言でも生前処分でも、前と矛盾すれば“撤回擬制”(公正証書か自筆かは無関係/§1023①②)、②受遺者が先に死ねば遺贈は失効・代襲なし(§994)。この2つを当てはめれば、遺言の効力トラップは全部さばけます。
👨🏫講師:その通り。あとはこの2本柱を、下のki2道場(練習タブ)で似た顔の肢に何度も当てて反復すれば体に入る。仕上げに、下の“引っかけ3連発”を自分で○×判定してごらん。
💡 深掘り:
「後の遺言・生前処分=撤回擬制(形式は優劣に無関係/§1023①②)」「受遺者の先死亡=遺贈失効・代襲なし(§994)」。この2本柱で、遺言の効力トラップは攻略できます。“形式が強いほう”“子が代襲してもらえる”は、いずれも直感に引っぱられた誤りです。
⚡ 仕上げ:引っかけ(○か×か、自分で答えてから開こう)
① 公正証書遺言は、後の自筆証書遺言では撤回できない(本問・A公正証書でB遺贈→後に自筆でC遺贈/§1023①) → ×:形式は優劣に無関係。後の遺言が前と抵触する部分は、後で前を撤回したものとみなす(§1023①)。BはCに優先されず取得しない。
② 受遺者が遺言者より先に死亡しても、受遺者の子が代襲して遺贈を受ける(平成4年 問13 肢3/§994) → ×:受遺者が先に死ねば遺贈は失効(§994)。代襲は“相続人”の制度で遺贈には及ばず、受遺者の子は代わって取得しない。
③【逆罠】 遺言後にAが目的物を第三者へ売却・登記したら、その遺言は撤回したものとみなされる(平成12年 問10 肢3/§1023②) → ○:直感では“売買が無効”と思いがちだが逆。遺言と抵触する生前処分は、その部分の遺言を撤回したものとみなす(§1023②)。売買ではなく遺言のほうが引っ込む。
(前の遺言と後の遺言との抵触等)第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
(受遺者の死亡による遺贈の失効)第994条 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
相続アルゴリズム:PHASE 3周辺(遺言の撤回・抵触)
後の遺言が前を上書きする(形式は無関係)
遺言の抵触
📋 問題文
Aが公正証書で土地をBに遺贈すると遺言した場合でも、後に自筆証書でこれをCに遺贈すると遺言したときは、Bは、Aが死亡しても、当該土地の所有権を取得しない。(正しいか?)
🔑 条件の抽出
入口遺言の撤回・抵触(PHASE 3周辺)
着眼前(公正証書でBに遺贈)と後(自筆証書でCに遺贈)が抵触
🗺 前後の遺言が抵触したら?
後の遺言が前の遺言と抵触する部分は、後の遺言で前を撤回したものとみなす(§1023①)。遺言の形式(公正証書か自筆証書か)は優劣に無関係。新しい意思が勝つ。
結論
○(正しい)
§1023①。後の遺言が前と抵触する部分は前を撤回したものとみなす。公正証書遺言でも後の自筆証書遺言で撤回できる。BはCに優先されず取得しない。記述どおり。
📋 問題文
Aが公正証書で土地をBに遺贈すると遺言した場合でも、後に自筆証書でこれをCに遺贈すると遺言したときは、Bは、Aが死亡しても、当該土地の所有権を取得しない。(正しいか?)
🗺 前後の遺言が抵触したら?
前後の遺言が矛盾するとき、どちらが優先?
最終判定
「BはAが死亡しても土地の所有権を取得しない」は正しい?
結論
○(正しい)
§1023①。後の遺言が前と抵触する部分は前を撤回したものとみなす。公正証書遺言でも後の自筆証書遺言で撤回できる。BはCに優先されず取得しない。記述どおり。
暗記ポイント
🎯 試験本番ではこう即答する
⚖️ 概念マップ:遺言の撤回・抵触=「最後の意思」が勝つ上書きレース。後の遺言・生前処分が前の遺言を撤回擬制する。
- 前後の遺言が抵触→後が優先(前を撤回擬制 §1023①)。公正証書でも後の自筆で撤回可
- 遺言後に目的物を生前処分(売却等)→抵触部分は撤回擬制(§1023②)
- 受遺者が遺言者より先に死亡→遺贈は失効・代襲なし(§994)
⚠️ よくある引っかけ
- 「公正証書遺言は後の自筆証書遺言では撤回できない」→ ✕(形式は無関係)
- 「受遺者の子が代襲して遺贈を受ける」→ ✕(遺贈に代襲なし)
過去問「比較」道場(ひっかけ回避)
「後の遺言」だけでなく「行動(生前処分)」でも上書きされます。さらに「受遺者の先死亡」の行方も確認しましょう。
【比較対象①:行動による上書き(平成12年 問10 肢3)】Aが「Aの甲土地をBに相続させる」旨の遺言をした場合で、その後甲土地を第三者に売却し、登記を移転したとき、その遺言は取り消されたものとみなされる。
🗺 登場人物の関係
Aが①「甲土地をBに相続させる」と遺言 → ②その後A自身が第三者に売却・登記
→ §1023②。遺言と矛盾する生前処分=その遺言は撤回したものとみなす
答え: ◯(正)
🎯 この問題の核心
遺言後に遺言と抵触する生前処分(売却・登記)をすると、その部分は遺言を撤回したものとみなされる(§1023②)。
相続アルゴリズム:PHASE 3周辺(生前処分による撤回擬制)
遺言後に売ったら撤回とみなす
平成12年 問10 肢3
📋 問題文
Aが「Aの甲土地をBに相続させる」旨の遺言をした場合で、その後甲土地を第三者に売却し、登記を移転したとき、その遺言は取り消されたものとみなされる。(正しいか?)
🔑 条件の抽出
入口遺言の撤回擬制(生前処分)
着眼遺言後に目的物(甲土地)を売却・登記
🗺 遺言後に目的物を処分したら?
遺言をした後、遺言者がその遺言と抵触する生前処分(売却・登記移転等)をしたときは、その抵触部分について遺言を撤回したものとみなされる(§1023②)。行動が意思の変更を示すから。
結論
○(正しい)
§1023②。遺言後に遺言と抵触する生前処分(売却・登記)をすると、抵触部分は遺言を撤回したものとみなされる。記述どおり。
📋 問題文
Aが「Aの甲土地をBに相続させる」旨の遺言をした場合で、その後甲土地を第三者に売却し、登記を移転したとき、その遺言は取り消されたものとみなされる。(正しいか?)
🗺 遺言後に目的物を処分したら?
遺言後に目的物を第三者へ売却・登記。遺言はどうなる?
最終判定
「その遺言は取り消されたものとみなされる」は正しい?
結論
○(正しい)
§1023②。遺言後に遺言と抵触する生前処分(売却・登記)をすると、抵触部分は遺言を撤回したものとみなされる。記述どおり。
【比較対象②:消えた受遺者(平成4年 問13 肢3)】遺産の全部を相続人の一人に贈与する旨の遺言があっても、遺言者が死亡する前に受遺者が死亡したときは、その遺贈は効力を生じない。
答え: ◯(正)
🎯 この問題の核心
受遺者が遺言者より先に死亡すると遺贈は失効(§994)。代襲相続は遺贈に適用されず、受遺者の子が代わって取得することはない。
相続アルゴリズム:PHASE 3周辺(受遺者の先死亡)
受遺者が先に死ぬと遺贈は失効(代襲なし)
平成4年 問13 肢3
📋 問題文
遺産の全部を相続人の一人に贈与する旨の遺言があっても、遺言者が死亡する前に受遺者が死亡したときは、その遺贈は効力を生じない。(正しいか?)
🔑 条件の抽出
入口遺贈の効力(受遺者の先死亡)
着眼遺言者より先に受遺者が死亡
🗺 受遺者が遺言者より先に死亡したら?
§994。受遺者が遺言者の死亡以前に死亡したときは、遺贈は効力を生じない。代襲相続の規定は遺贈には適用されないので、受遺者の子が代わって取得することもない(その財産は相続人に帰属)。
結論
○(正しい)
§994。遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは遺贈は効力を生じない。代襲相続の規定は遺贈に適用されず、受遺者の子が代わって取得することはない。記述どおり。
📋 問題文
遺産の全部を相続人の一人に贈与する旨の遺言があっても、遺言者が死亡する前に受遺者が死亡したときは、その遺贈は効力を生じない。(正しいか?)
🗺 受遺者が遺言者より先に死亡したら?
受遺者が遺言者より先に死亡。遺贈はどうなる?
最終判定
「受遺者が先に死亡→遺贈は効力を生じない」は正しい?
結論
○(正しい)
§994。遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは遺贈は効力を生じない。代襲相続の規定は遺贈に適用されず、受遺者の子が代わって取得することはない。記述どおり。
【まとめ】📌 この記事の核心
📌 この記事の核心
遺言は「最後の意思」が勝つ。後の遺言・生前処分は前の遺言を撤回擬制(形式は無関係 §1023)。受遺者が先に死ねば遺贈は失効・代襲なし(§994)。
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