相続は「もらう/いらない」を選べます。でも油断すると“知らぬ間に借金まで相続”。今回はPHASE 4「承認・放棄」。カギは3ヶ月の時限爆弾の起算点と、うっかり踏むと放棄できなくなる「法定単純承認」です。
目次
本日のターゲット問題(法定単純承認:賃料の収受)
Cが甲建物の賃借人に対し相続財産である未払賃料の支払いを求め、これを収受領得したときは、Cは単純承認をしたものとみなされる。
【PHASE 4:承認・放棄】
Step 1. 3か月(熟慮期間)以内か?
起算 = 「自己のために相続の開始を知った時」から(開始時ではない)
過ぎた → 単純承認とみなす
Step 2. 法定単純承認(財産の処分等)をしたか?
処分した → 単純承認とみなす(放棄・限定承認できない)
保存行為のみ → まだ放棄できる
Step 3. 単独 or 全員?
放棄 = 各自単独でOK / 限定承認 = 全員共同でのみ
答え: ◯(正)
🎯 この問題の核心
相続財産を処分(賃料を収受領得)すると、法定単純承認とみなされ、以後は放棄・限定承認できない(§921①)。
🧭 判定軸=もう”もらう”と決めた人は引き返せない。まず自分で解いてみよう
承認・放棄は「①3か月の起算(いつから数える?)」「②うっかり処分(触ったら引き返せない)」「③限定承認は全員・放棄は各自」の3点で決まります。読み流す前に、下の各問をまず自分で○×判定してみてください。
🙋♂️生徒:まず本問(ターゲット)から。Cが甲建物の賃借人に未払賃料を請求して受け取っただけ ── まだ使ったわけじゃないし、財産の現状を守る保存行為にすぎませんよね。だから放棄はできる、つまり「単純承認をしたものとみなされる」は×だと思います。
👨🏫講師:もっともらしいけど、そこが最大の落とし穴だ。答えは○。賃料の収受領得=相続財産を自分の財布に入れて処分したということ。相続財産の処分は§921①で法定単純承認とみなされる。「受け取っただけ」ではなく「自分のものとして取り込んだ」から、以後はもう放棄も限定承認もできない。保存行為(現状維持)とは別物だよ。
🙋♂️生徒:なるほど…触った瞬間に引き返せなくなるんですね。では期限のほうは? 相続開始から3か月たてば自動で単純承認になる ── これは○ですよね?
👨🏫講師:また引っかかったね、これは×だ。想像してごらん。父が亡くなったのに、遠方に住むあなたはそれを半年後にようやく知った。もし「開始から3か月」で締め切るなら、知らないうちに借金まで背負わされてしまう。だから§915は起算を「自己のために相続の開始があったことを知った時」からとする。知らなければ時計は動かない。
👨🏫講師:ではもう1問、今度は実際の過去問(平成28年 問10 肢3)だ。共同相続人がB・Cの2人いて、「Cが単純承認をしたときは、Bは限定承認をすることができない」。○か×か?
🙋♂️生徒:限定承認って各自が自由に選べそうだから…CがどうしようとBは自分ひとりで限定承認すればいい。だから×じゃないですか?
👨🏫講師:惜しい、答えは○。ここが放棄との非対称だ。限定承認は共同相続人全員が共同してのみできる(§923)。Cが単純承認した瞬間に「全員そろって限定承認」という条件が崩れるから、Bはもう限定承認できない。一方、放棄は各自単独でOK。「全員共同なのは限定承認だけ」──ここを取り違えさせるのが定番だ。
🙋♂️生徒:整理できました。①3か月は「知った時」から(開始時じゃない)、②財産を処分したら§921①で引き返せない(賃料収受も処分)、③限定承認は全員共同・放棄は各自。この3つの軸で承認・放棄はさばけるんですね。
👨🏫講師:その通り。あとはこの3軸を似た顔の肢に当てるだけだ。仕上げに、下の引っかけを自分で○×判定してから、道場カードで手を動かして固めよう。
💡 深掘り:
「処分=法定単純承認」(賃料収受はこちら)/「保存行為・短期賃貸・不法占拠者への明渡請求は処分でない」。この線引きと、3か月の起算=知った時から、限定承認=全員共同/放棄=各自、の3点で承認・放棄は攻略できます。
⚡ 仕上げ:引っかけ(○か×か、自分で答えてから開こう)
相続の開始を知らなくても、相続の開始から3か月が経過すれば単純承認をしたものとみなされる(比較対象①・起算点トラップ) → ×:起算は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から(§915)。知らなければ進行しないので、開始からの経過だけでは単純承認にならない。
相続財産を占有する不法占拠者に明渡しを請求すると、法定単純承認とみなされる → ×:明渡請求は財産の現状を守る保存行為で、§921①の「処分」にあたらない。だから単純承認とはみなされず、まだ放棄できる。
共同相続人の1人Cが単純承認をすると、他の相続人Bはもう限定承認をすることができない(平成28年 問10 肢3) → ○:【逆罠】1人の行動で他人が縛られるのは不自然に見えるが、限定承認は共同相続人全員が共同してのみ可能(§923)。Cの単純承認で「全員共同」が崩れ、Bは限定承認できなくなる(放棄は各自単独で可)。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
(法定単純承認)第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき(保存行為等を除く)。二 3箇月の期間内に限定承認又は放棄をしなかったとき。三 限定承認・放棄後に相続財産を隠匿・私に消費等したとき。
(共同相続人の限定承認)第923条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
相続アルゴリズム:PHASE 4(承認・放棄)Step 2
法定単純承認(相続財産の処分)
相続財産である未払賃料の収受
📋 問題文
Cが甲建物の賃借人に対し相続財産である未払賃料の支払いを求め、これを収受領得したときは、Cは単純承認をしたものとみなされる。(正しいか?)
🔑 条件の抽出
入口もらう/いらないの選択→ PHASE 4(承認・放棄)
着眼相続財産である未払賃料を「収受領得」した=財産の処分
🗺 PHASE 4 Step 2:相続財産を「処分」したか?
相続財産の処分行為をすると、法定単純承認とみなされる(§921①)。賃料の収受領得は処分にあたる。以後は放棄も限定承認もできない。※保存行為や不法占拠者への明渡請求なら処分にあたらない。
結論
○(正しい)
相続財産の処分(賃料の収受領得)は法定単純承認事由(§921①)。以後、放棄・限定承認はできない。記述どおり。
📋 問題文
Cが甲建物の賃借人に対し相続財産である未払賃料の支払いを求め、これを収受領得したときは、Cは単純承認をしたものとみなされる。(正しいか?)
🗺 PHASE 4 Step 2:相続財産を「処分」したか?
相続財産の未払賃料を収受領得した。これは?
最終判定
「Cは単純承認をしたものとみなされる」は正しい?
結論
○(正しい)
相続財産の処分(賃料の収受領得)は法定単純承認事由(§921①)。以後、放棄・限定承認はできない。記述どおり。
暗記ポイント
🎯 試験本番ではこう即答する
⚖️ 概念マップ:PHASE 4=承認・放棄。3つの選択肢(単純承認/限定承認/放棄)。カギは期限の起算とうっかり処分。
- 熟慮期間3か月の起算=「自己のために相続の開始を知った時」から(相続開始時ではない)
- 3か月放置 or 財産を処分 → 法定単純承認(放棄・限定承認できない §921)
- 限定承認=全員共同でのみ(§923)/放棄=各自単独でOK
- 保存行為・不法占拠者への明渡請求は処分にあたらない(単純承認とみなされない)
⚠️ よくある引っかけ
- 「相続開始から3か月で単純承認」→ ✕(”知った時”から)
- 「相続人1人で限定承認できる」→ ✕(全員共同)
- 「不法占拠者への明渡請求で単純承認」→ ✕(保存行為)
過去問「比較」道場(ひっかけ回避)
承認・放棄の2大トラップ「3か月の起算点」と「限定承認は全員共同」を、2問で固めましょう。
【比較対象①:起算点のトラップ】Bが自己のために相続の開始があったことを知らない場合であっても、相続の開始から3か月が経過したときは、Bは単純承認をしたものとみなされる。
答え: ×(誤)
🎯 この問題の核心
3か月の起算は「自己のために相続の開始を知った時」から(§915)。知らなければ進行しない。「相続開始から」は誤り。
相続アルゴリズム:PHASE 4(承認・放棄)Step 1
熟慮期間3ヶ月の「起算点」
相続放棄の熟慮期間
📋 問題文
Bが自己のために相続の開始があったことを知らない場合であっても、相続の開始から3か月が経過したときは、Bは単純承認をしたものとみなされる。(正しいか?)
🔑 条件の抽出
入口承認・放棄→ PHASE 4
着眼「相続開始を知らない」+「開始から3か月」
🗺 PHASE 4 Step 1:3か月は「いつ」から数える?
熟慮期間(3か月)の起算は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から(§915)。相続開始を知らなければ進行しない。だから「相続開始から3か月」で単純承認とみなすのは誤り。
結論
×(誤り)
熟慮期間は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算(§915)。知らなければ進行せず、単純承認ともみなされない。「相続開始から」は誤り。
📋 問題文
Bが自己のために相続の開始があったことを知らない場合であっても、相続の開始から3か月が経過したときは、Bは単純承認をしたものとみなされる。(正しいか?)
🗺 PHASE 4 Step 1:3か月は「いつ」から数える?
3か月の熟慮期間はいつから数える?
最終判定
「相続開始を知らなくても開始から3か月で単純承認とみなされる」は正しい?
結論
×(誤り)
熟慮期間は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算(§915)。知らなければ進行せず、単純承認ともみなされない。「相続開始から」は誤り。
【比較対象②:平成28年 問10 肢3】Cが単純承認をしたときは、Bは限定承認をすることができない。
答え: ◯(正)
🎯 この問題の核心
限定承認は共同相続人全員が共同してのみ(§923)。Cが単純承認した以上、全員共同が崩れ、Bは限定承認できない。(放棄は各自単独で可)
相続アルゴリズム:PHASE 4(承認・放棄)Step 3
限定承認は「全員共同」でのみ
平成28年 問10 肢3
📋 問題文
Cが単純承認をしたときは、Bは限定承認をすることができない。(正しいか?)
🔑 条件の抽出
入口承認・放棄→ PHASE 4
着眼共同相続人Cが単純承認→他の相続人Bは限定承認できるか
🗺 PHASE 4 Step 3:限定承認は誰がする?
限定承認は共同相続人全員が共同してのみできる(§923)。一方、放棄は各自単独でOK。Cが単純承認した時点で「全員共同」が崩れるため、Bはもう限定承認できない。
結論
○(正しい)
限定承認は共同相続人全員が共同してのみできる(§923)。Cが単純承認した以上、全員共同が成立せず、Bは限定承認できない。記述どおり。(放棄は各自単独で可能)
📋 問題文
Cが単純承認をしたときは、Bは限定承認をすることができない。(正しいか?)
🗺 PHASE 4 Step 3:限定承認は誰がする?
共同相続人の1人Cが単純承認した。Bは限定承認できる?
最終判定
「Cが単純承認したらBは限定承認できない」は正しい?
結論
○(正しい)
限定承認は共同相続人全員が共同してのみできる(§923)。Cが単純承認した以上、全員共同が成立せず、Bは限定承認できない。記述どおり。(放棄は各自単独で可能)
【まとめ】📌 この記事の核心
📌 この記事の核心
承認・放棄は「①3か月(知った時から)→②処分すれば法定単純承認→③限定承認は全員・放棄は各自」。賃料の収受など”財産の処分”で放棄できなくなる点が最大のトラップ。
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