【相殺】過去問を『型』で解く判定フロー

🎯
ここは”勉強したのに本番で落とす”人が最も多い勝負どころ
相殺は、知識があっても本番で「自働債権/受働債権の見分け」「悪意の不法行為は加害者×・被害者○」「差押えの前後」「時効消滅でも相殺適状なら可」を一瞬迷えば差がつく分野。だからこの記事は、第1部フローでこの論点を1つずつ当てはめて答えを出す道に整理しました。過去問でこのフローを何度も回せば、本番でも差をつけられます。
このアルゴの本体は第1部フロー(Step0で自働/受働を仕分け→各Stepを上から回す)です。過去問で何度も回すと本番でも解けるようになります(得点への近道)。第2部【ダッシュボード】はフローを回した結論を点検・確認する一覧表。その引き方は記事末尾に実演(🔎 3ステップで判定する手順)を付けました。

【第1部:基本フロー(全体地図・OS)】

相殺は「パズル」です。「誰が」「どの債権を使って」相殺しようとしているかを見極めるだけで、スルスル解けます !以下のPhase(場面)に合わせて現在地を特定してください。

🧭 Step 0|現在地スキャン まずここだけ見る
肢を読んだら、最初に「自働債権/受働債権のどちらの話か」だけを見る。それで入口(Phase)が1つに決まります。
自働・受働の仕分け・弁済期・相殺適状Phase 1:基本要件攻撃できる状態か
受働債権のNGワード(不法行為・差押禁止・生命身体)Phase 2:受働債権の制限チャラにしてよい債権か
差押えとの先後・時効消滅後の相殺(§508)Phase 3:特殊・時系列差押え・時効との関係
🤔 迷ったら:まず自働債権が使える状態か(Phase 1)。次に受働債権がチャラOKか(Phase 2)、最後に差押え・時効の時系列(Phase 3)。

民法・債権総論
『相殺』の判断アルゴリズム
相殺は「パズル」です。「誰が」「どの債権を使って」相殺しようとしているかを見極めるだけで、スルスル解けます!以下のPhase(場面)に合わせて現在地を特定してください。
Step 0:問題文スキャン
どのPhaseの話か?
まず「自働債権(攻撃側)」「受働債権(守る側)」を見分け、キーワードで進む先を仕分けます。
Phase 1基本要件

「自働債権の弁済期」「相殺適状」「期限の利益」

Phase 2受働債権の制限

「不法行為」「損害賠償」「生命・身体の侵害」

Phase 3特殊・時系列

「差押え」「物上代位」「時効で消滅」

他カテゴリへ

「連帯債務者が相殺」→連帯債務/「債権譲渡の通知前後」→債権譲渡

Phase 1:【相殺の基本要件】
攻撃できる状態か?
まずは誰がどの債権を武器にしているかを整理し、攻撃の絶対条件を満たしているかを判定する場面です。※大前提:相殺できるのは同種の債権(金銭同士など)が対立しているとき(§505①)。受働債権は期限の利益を放棄すればいつでも相殺可。※大前提:相殺できるのは同種の債権(金銭債権同士など)が対立しているとき(§505①)。受働債権は自分が払う側=期限の利益を放棄すれば弁済期未到来でも相殺できる。
S1
登場人物と「自働受働」の仕分け
Q. 相殺の問題が出たら、まずは「どちらが相殺を言い出したか」を特定します。
自働債権
自分から攻撃を仕掛ける側の債権。
「チャラにしよう!」
受働債権
相手から防御する側の債権。
「チャラにされる」
S2
自働債権の弁済期チェック ※相殺の絶対条件
Q.
相殺できるかどうかの最大の関門です。
「自働債権(攻撃側)の弁済期」は到来しているか?(または弁済期の定めがないか?)
YES 到来している / 定めがない
相殺可能!
相手の受働債権の弁済期がどうであれ、自分からは攻撃できます。
NO 到来していない
相殺不可!
自分の支払日が来ていないのに、無理やりチャラにする早とちりは許されません。
Phase 2:【受働債権の制限】
チャラにしてはいけない債権か?
攻撃の条件を満たしていても、法律上「相殺の対象にしてはいけない」ブラックリストに該当しないかを判定する場面です。
S1
受働債権のNGワードチェック
Q.
受働債権(チャラにされる側の債権)が、
「悪意による不法行為に基づく損害賠償債権」
「人の生命・身体の侵害による損害賠償債権」か?
YES 加害者からの相殺
絶対に相殺できない
(「ケガをさせた慰謝料を、オレが貸してた金とチャラにしておいて」なんて横着は法律が許しません!)
YES 被害者からの相殺
相殺可能
(※ 被害者側から「チャラにしてあげる」と申し出るのはOKです)。
差押禁止債権が受働債権
相殺できない(§510)
(給料・年金など生活の糧になる債権は、相殺でチャラにできません)
NO ただの借金など
原則通り相殺可能
Phase 3:【特殊パターン】
差押え・時効との関係
第三者が絡んだり、時間が経ちすぎたりしている場合の特殊な時系列ルールを判定する場面です。
S1
差押えの時系列チェック
Q.
受働債権が第三者に「差押え」られている場合、自分が自働債権を取得したのは「差押えの前か?後か?」
※「抵当権者が賃料債権を物上代位で差し押さえた」が絡む肢も時系列はここで判定。物上代位そのものの仕組みは抵当権の型
差押え前に取得
相殺OK
差押え
差押え後に取得
差押債権者に対抗できない(横入り禁止)
⚠ 正確には「相殺できない」ではなく「差押債権者に勝てない(対抗できない)」。当事者間では相殺自体は有効に成立する——「相殺はできるが差押債権者に対抗できない」という肢は(H7問8肢4)
S2
消滅時効パターンのチェック
Q.
自分の自働債権がすでに「時効で消滅」している場合、「時効完成『前』に相殺適状(両方の弁済期が到来してチャラにできる状態)になっていたか?」
YES
相殺適状だった
相殺OK!
(昔すれ違った縁でも復活できます)
NO
相殺適状ではなかった
相殺NG
第2部:トリガー・ダッシュボード
決め手編・武器庫
問題文に以下のキーワードが出たら、該当ルールを直接見て、フローで出した結論を素早く確認できます。
「自働債権の弁済期が到来していない」 🎬 適用論点自働債権の弁済期 ⚡️ 適用ルール・結論(決め手ワード)
【早とちりの攻撃 🛑】相殺不可(×)
自分から相殺するなら自分の期限が来てないとダメ!
「自働債権の弁済期の定めがない」 🎬 適用論点自働債権の弁済期 ⚡️ 適用ルール・結論(決め手ワード)
【いつでも攻撃可能 🗡️】相殺可能(〇)
受働債権の弁済期に関わらず相殺できる!
「悪意の不法行為」等 +「加害者からの相殺」 🎬 適用論点不法行為と相殺禁止 ⚡️ 適用ルール・結論(決め手ワード)
【悪党の横着禁止 👿】相殺不可(×)
加害者は財布から現金出して払え!ただし被害者からの相殺はOK!
「差押え後に取得した債権」 🎬 適用論点差押えと相殺 ⚡️ 適用ルール・結論(決め手ワード)
【横入り禁止 🚫】差押債権者に対抗不可(×)
差押え前に取得していた債権なら対抗できる!※当事者間では相殺自体は成立(「相殺できるが対抗できない」は○)
「時効で消滅」+「時効完成前に相殺適状」 🎬 適用論点時効消滅した債権 ⚡️ 適用ルール・結論(決め手ワード)
【過去のすれ違い復活 ⏳】相殺可能(〇)
昔チャラにできる状態だったなら、今からでも相殺できる!
「連帯債務者の一人が相殺」 🎬 適用論点連帯債務と相殺
→連帯債務カテゴリ
⚡️ 適用ルール・結論(決め手ワード)
【他人の債権では攻撃不可 🔗】
自分の債権での相殺は絶対効。他の連帯債務者の債権では相殺できず、負担部分の限度で履行拒絶のみ(改正)。
「債権譲渡の通知の前に取得した債権」 🎬 適用論点債権譲渡と相殺
→債権譲渡カテゴリ
⚡️ 適用ルール・結論(決め手ワード)
【対抗要件具備前なら対抗OK 📨】相殺可能(〇)
通知前に取得していた債権なら、譲受人に相殺を対抗できる!
過去問ワークアウト
このアルゴで解く5問
「①スキャンで仕分け → ②フローを辿る → ③結論」の3手で必ず答えが出ます。
例1:自働債権の弁済期(H30 問9 肢1)
Phase 1
BがAに対して12月31日を支払期日とする貸金債権を有する場合、Bは12月1日に売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺することができる。
①スキャン:自働債権=Bの貸金債権/受働債権=Bの売買代金債務。「自働債権の弁済期」→ Phase 1
②フロー:自働債権(貸金)の弁済期は12/31。相殺しようとする12/1にはまだ到来していない → 相殺不可
③結論:自分の支払日が来ていないのに攻撃はできない → ×(誤り)
例2:不法行為・被害者からの相殺(H30 問9 肢3)
Phase 2
BがAの自動車事故によって被害を受け、Aに対して不法行為に基づく損害賠償債権を取得した場合、Bは売買代金債務と当該損害賠償債権を対当額で相殺することができる。
①スキャン:「不法行為に基づく損害賠償」→ Phase 2。Bは被害者で、損害賠償債権を自働債権として使う
②フロー:相殺が禁止されるのは「受働債権が不法行為債権(=加害者がチャラにする)」の場合。本問は被害者Bからの相殺なのでOK
③結論:被害者からの相殺は可能 → 〇(正しい)
例3:差押えと相殺(H30 問9 肢2)
Phase 3
Aの売買代金債権がAの債権者Cにより差し押さえられても、Bは、その後にAに対する別の債権を取得した場合には、売買代金債務と当該債権を対当額で相殺できる。
①スキャン:「差し押さえられた」→ Phase 3(差押えの時系列)
②フロー:Bが自働債権を取得したのは差押えの後 → 横入り禁止で相殺できない
③結論:差押え後取得の債権では相殺できない → ×(誤り)
例4:時効消滅した債権(H7 問8 肢1)
Phase 3
Aの債権が時効によって消滅した後でも、時効完成前にBの債権と相殺適状にあれば、Aは、Bに対して相殺をすることができる。
①スキャン:「時効によって消滅」→ Phase 3(消滅時効パターン)
②フロー:時効完成「前」に相殺適状になっていた → 過去のすれ違いは復活できる
③結論:時効消滅前に相殺適状なら相殺できる → 〇(正しい)
例5:敷金返還請求権を自働債権に(H16 問8 肢1)
Phase 1 応用
賃借人Aは、賃貸人Bが支払不能に陥った場合は、特段の合意がなくても、Bに対する敷金返還請求権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することができる。
①スキャン:自働債権=敷金返還請求権。Phase 1の絶対条件「自働債権が使える状態か」を確認
②フロー:敷金返還請求権は賃貸借終了・明渡し完了後に初めて発生する。賃貸借継続中はまだ債権が存在せず、相殺適状にならない
③結論:そもそも自働債権が発生していないので相殺できない → ×(誤り)
このアルゴリズムの過去問カバレッジ
相殺で合格に効く核の肢=「自働債権の弁済期(相殺適状)/不法行為・生命身体侵害と相殺禁止(加害者×・被害者○)/差押えと相殺の時系列(前なら○)/時効消滅した債権(完成前に相殺適状なら○)/敷金返還請求権など相殺適状の前提」は、4つの核心論点の型で判定できます。合格者が落とさない勝負どころを、この型の対象にしています。
※残りは下の〈他カテゴリへ・捨て対象外〉です。よく出る核はこの型で取り切ります。
型で取る(合格に効く):自働/受働の見分け・相殺適状(弁済期)・不法行為(加害者×/被害者○)・差押えの前後・時効消滅した債権・敷金返還請求権の前提=このカテゴリの中心テーマ。
他カテゴリで取る連帯債務者の相殺(R7・R3・H29=頻出。自分の債権なら絶対効、他人の債権では履行拒絶のみ)は連帯債務へ、債権譲渡と相殺(通知前取得なら譲受人に対抗)は債権譲渡へ送って取る。
🌫 捨て・対象外(△で次へ):相殺充当の細かい計算や特殊な制限など、見たことがなければ深追いせず△で次へ。合格者でも落とすことが多い難所。

🔎 ダッシュボードの「引き方」:3ステップで判定する手順
早見表は”引き方”を知らないと使えません。実際の本試験で、キーワード→該当行→即答 の動作を実演します。
手順は3ステップだけ:① キーワードを拾う → ② 自働債権か受働債権か+論点を引く → ③ 結論をそのまま当てる
実演A(令和7年度 問4 肢4)
肢:「悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権自働債権として、被害者側から相殺することができる。」
  1. キーワードを拾う:「悪意の不法行為の損賠」+「自働債権」+「被害者から」
  2. 表を引く:→ 【不法行為と相殺:禁止されるのは”受働債権”にする加害者側だけ(§509)。被害者が自働債権にするのは可】
  3. 即答:被害者が自分の損賠債権を自働債権にして相殺するのは制限されない → この肢は○(正しい) ── 「加害者×/被害者○」を覚えていれば判定できる
実演B(平成30年度 問9 肢2)
肢:「債権が差し押さえられた後に、第三債務者が債務者に対して新たに取得した債権を自働債権とする相殺をもって、差押債権者に対抗することができる。」
  1. キーワードを拾う:「差押え後に取得した債権」
  2. 表を引く:→ 【差押えと相殺:差押え”前”に取得した債権なら○/”後”に取得した債権は×(§511・横入り禁止)】
  3. 即答:差押え後に取得した債権での相殺は対抗できない → この肢は×(誤り)(時系列が”後”なら即×)
💡 コツ:まずどちらが自働債権かを決め、次に特徴語(不法行為/生命身体/差押えの前後/時効消滅/弁済期)を表で引くだけ。表と同じなら○、逆なら×。
🧠 結論を思い出す(タップで答え)
自働債権の弁済期が未到来=相殺 (早とちりの攻撃🛑)
自働債権の弁済期の定めがない 相殺できる
受働債権 を放棄すれば弁済期未到来でも相殺できる
悪意の不法行為・生命身体侵害の損賠が受働債権=加害者から /被害者から 
差押禁止債権が受働債権=相殺 (§510)
差押えと相殺(§511)=差押え に取得した自働債権なら対抗○/ に取得は対抗×(当事者間では相殺自体は有効)
時効消滅した自働債権(§508)=時効完成 に相殺適状なら相殺可
連帯債務者の一人が相殺=他人の債権では相殺できず の限度で履行拒絶のみ(改正)
🌫️ ここから先は深追い禁止(△で保留してOK)
型の主役=自働/受働の見分け・相殺適状(弁済期)・不法行為(加害者×/被害者○)・差押えの前後・時効消滅した債権・敷金返還請求権の前提。ここを押さえれば合格者と同じ土俵に立てます。
一方、連帯債務者の相殺・債権譲渡と相殺は他カテゴリへパス、相殺充当の細かい計算や特殊な制限は見たことがなければ△で保留して次へ“全部取ろう”として時間を溶かすのが、不合格の典型パターンです。
📖 用語ミニ辞典 ― 言葉に詰まったらここ
フローで知らない言葉が出たら、ここで30秒だけ確認 → ▲でフローへ戻れます。
相殺そうさい
互いに同じ種類の債権を持ち合うとき、「差し引きチャラ」にすること(§505)。
例:AがBに100万、BがAに80万→相殺すると、AのBへの債権が20万残る。
この型では 自分から相殺するなら、自分の債権(自働債権)の弁済期が来ていることが必要。一方的な意思表示でできます(§506)。
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自働債権じどうさいけん
相殺を「仕掛ける側」が持つ債権(=相手に対する自分の請求権)。
例:AがBに相殺を仕掛けるとき、AのBに対する債権が自働債権。
この型では 自働債権は弁済期が到来していないと相殺できません(自分の番が来ていないとダメ)。
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受働債権じゅどうさいけん
相殺を「仕掛けられる側」の債権(=相殺で消される方)。
例:BのAに対する債権が、Aから見た受働債権。
この型では 受働債権の弁済期は未到来でもOK(自分の支払いは早めてよい)。ただし「NGワード」(§509不法行為など)に注意。
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相殺適状そうさいてきじょう
相殺できる状態がそろうこと。①互いに同種の債権 ②(自働債権の)弁済期が到来、の2条件。
例:双方が金銭債権で、自働債権の支払日が来ている状態。
この型では ここがStep 1のゴール。適状になって初めて相殺の意思表示ができます(§505①)。
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弁済期べんさいき
債務を「払うべき期限」。支払日のことです。
例:「来月末に返す」なら、その月末が弁済期。
この型では 自働債権は弁済期到来が必須。受働債権は未到来でも、自分から期限の利益を放棄すれば相殺できます。
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差押えと相殺さしおさえとそうさい
自分の債権(受働債権)が差し押さえられた後でも、相殺で対抗できるかの問題(§511)。
例:BのAへの債権が差し押さえられた後、Aは自分の債権で相殺できる?
この型では 差押え前に取得した自働債権でなら相殺で対抗できます(差押え後に取得した債権ではダメ)。時系列が決め手。
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相殺禁止そうさいきんし
一定の場合は相殺が許されないルール。
例:悪意の不法行為・人身損害の賠償債権を「受働債権」にする相殺(§509)、差押禁止債権を受働債権にする相殺(§510)。
この型では これらは「受働債権のNGワード」。被害者保護のため、加害者の側から相殺で押し付けることを禁止します。
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