相殺の第2関門は、試験委員が受験生を奈落に突き落とす「最大の罠(NGワード)」です。「不法行為」という言葉を見た瞬間に「相殺禁止だ!×!」と反射した人は、まさにこの罠の餌食。カギは「誰が・どの債権を使って相殺しようとしているか」です。
本日のターゲット問題(令和7年度 問4 肢4)
Aが、期限が到来しているBの悪意による不法行為に基づく金1,000万円の損害賠償請求債権をBに対して有している場合、Aは本件契約に基づく返還債務をBに対する当該損害賠償請求債権で相殺することができる。
【Phase 2】受働債権の制限(チャラにしてよい債権か?)
受働債権(チャラにされる側)が
「悪意の不法行為」「生命・身体の侵害」の損害賠償債権?
│
├─ YES かつ「加害者」からの相殺 → 絶対に相殺できない(×)
├─ YES だが「被害者」からの相殺 → 相殺できる(〇)
└─ NO(ただの借金など) → 原則相殺できる(〇)
★判定のコツ★
禁止されるのは「受働債権=不法行為債権(加害者がチャラにする)」のとき。
不法行為債権を「自働債権」に使う被害者は相殺OK!
本問:自働債権=Aの損害賠償請求権(Aは被害者)
受働債権=Aの借金返還債務(ただの借金)
→ 被害者からの相殺なので 〇
答え:〇(正しい)
「不法行為」で反射的に×にすると罠にハマる。禁止されるのは受働債権が不法行為債権(=加害者がチャラにする横着)のとき。本問のAは被害者で、損害賠償請求権を自働債権として使う。被害者からの相殺はOK。
ではひっくり返そう。加害者Bが、自分がAに負う「悪意の不法行為による損害賠償債務」を受働債権にして、B自身のAへの貸金でチャラにする──これは○か×?
(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第509条 次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く)
【改正ポイント】旧法は「不法行為により生じた債権」全般が受働債権の相殺禁止でした。改正で①悪意による不法行為②生命・身体の侵害の2つに限定。単なる物損の不法行為債権は、受働債権でも相殺できるようになりました。
※いずれも禁止されるのは「これらの債務を負う者(=加害者)からの相殺」。被害者が自働債権に使うのは可(条文末尾「債権者がその債権を他人から譲り受けたとき」は除く)。
Aが、期限が到来しているBの悪意による不法行為に基づく金1,000万円の損害賠償請求債権をBに対して有している場合、Aは本件契約に基づく返還債務をBに対する当該損害賠償請求債権で相殺することができる。
○(正しい)
相殺禁止は受働債権が不法行為債権の場合。被害者Aが損害賠償請求権を自働債権として相殺するのは可能。
Aが、期限が到来しているBの悪意による不法行為に基づく金1,000万円の損害賠償請求債権をBに対して有している場合、Aは本件契約に基づく返還債務をBに対する当該損害賠償請求債権で相殺することができる。
この相殺は「禁止される相殺」に当たる?
「Aは相殺することができる」は正しい?
○(正しい)
相殺禁止は受働債権が不法行為債権の場合。被害者Aが損害賠償請求権を自働債権として相殺するのは可能。
暗記ポイント
🎯 試験本番ではこう即答する:「不法行為」を見ても反射で×にしない。「不法行為債権が受働債権(チャラにされる側)か、自働債権(攻撃する側)か」を確認。受働債権=加害者がチャラにする→禁止(×)。自働債権=被害者が使う→OK(〇)。
⚖️ 概念マップ:相殺禁止は「加害者の横着」を防ぐため。被害者には現実のお金を渡させる。だから禁止は受働債権が不法行為債権のときだけ。
- 受働債権が「悪意の不法行為」「生命・身体侵害」の損害賠償(加害者からの相殺)→ 相殺禁止(×)
- 被害者が自働債権として使う → 相殺できる(〇)
- 単なる物損の不法行為債権(改正後)→ 受働債権でも相殺できる(〇)
⚠️ よくある引っかけ
- 「不法行為」の文字だけで×にする → 罠。被害者からの相殺は〇。
- 「物損の不法行為を受働債権に相殺」→ 改正後は〇(旧法は×だった)。
令和6年の激ヤバ奇問(深追い厳禁)
令和6年に、相殺の超・難問が出ました。ただしこれは合格に不要な細則。「こんなのもあるんだ」と眺めるだけでOKです。深追い厳禁。
請負人の報酬債権に対して、注文者が損害賠償債権を自働債権として相殺の意思表示をした場合、相殺後に残った報酬債務の履行遅滞は「相殺の意思表示をした日の翌日」から生じます(履行の請求を受けた時からではありません)。相殺の効力自体は相殺適状時に遡りますが(§506②)、残債務の遅滞は相殺の意思表示をした日の翌日から起算する、という判例の論点です。
👨🏫 これは行政書士・司法書士レベルの細かい論点。宅建では捨て問でOK。Phase 1〜3の核心(弁済期・不法行為・差押え・時効)を固める方がはるかに得点に直結します。
【まとめ】📌 この記事の核心
📌 この記事の核心
⚖ 不法行為と相殺の禁止は「加害者の横着(受働債権を不法行為債権でチャラにする)」を防ぐためのルール。だから禁止は受働債権が不法行為債権のときだけ。被害者が自働債権として使う相殺はOK。改正で禁止は「①悪意の不法行為②生命・身体侵害」に限定された。
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