消滅時効の「ダブルタイマー」と「人身侵害の5年特例」。2020年改正で大きく変わった論点を押さえる。「3年・5年・10年・20年」の使い分けと、§724/§724の2/§166の特則関係を⚖天秤の世界で整理します。
本日のターゲット問題(令和3年[10月] 問8 肢4)
Aが1人で居住する甲建物の保存に瑕疵があったため、令和3年7月1日に甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガをした場合(以下この問において「本件事故」という。)における次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
肢4
本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときには時効により消滅する。
答え:◯(正)
人身侵害(ケガ)の不法行為損害賠償は§724の2で「知った時から5年」に延長。「3年」「10年」と混同しない
(債権等の消滅時効)
第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
二 不法行為の時から20年間行使しないとき。
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第724条の2 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときには時効により消滅する。(正しいか?)
不法行為損害賠償の消滅時効(§724):
① 主観的起算点:知った時から3年
② 客観的起算点:行為の時から20年
ただし人身侵害(生命または身体)の場合は§724の2の特則で「知った時から5年」に延長される。
本件は「甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガ」=人身侵害。よって§724の2適用 → 知った時から5年で時効消滅。
本肢「知った時から5年で時効消滅」は正しい → ○。
判定:○ 正しい
人の身体を害する不法行為損害賠償請求権は§724の2により、知った時から5年で時効消滅。一般原則3年から特別に延長された改正論点。
本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときには時効により消滅する。(正しいか?)
人身侵害の不法行為損害賠償は、知った時から何年で時効消滅?
B(通行人)の人身侵害事故の場合、5年で時効消滅は正しい?
以上をふまえ、この肢は正しい?
判定:○ 正しい
人の身体を害する不法行為損害賠償請求権は§724の2により、知った時から5年で時効消滅。一般原則3年から特別に延長された改正論点。
暗記ポイント
🎯 試験本番ではこう即答する
⚖️ 概念マップ:消滅時効の「タイマー」は権利の種類で変わる。債権一般/不法行為/人身侵害を必ず区別。
| 権利の種類 | 主観的起算点 | 客観的起算点 |
| 債権一般(§166) | 知った時から5年 | 行使可能時から10年 |
| 不法行為一般(§724) | 知った時から3年 | 行為の時から20年 |
| 人身侵害(§724の2) | 知った時から5年(特則) | 行為の時から20年 |
- □ 即答パターン①:「人身侵害+知った時から5年」→ ○(§724の2)
- □ 即答パターン②:「不法行為(非人身)+知った時から3年」→ ○(§724一号)
- □ 即答パターン③:「不法行為+行為の時から20年」→ ○(§724二号)
- □ 即答パターン④:「債権一般+知った時から5年・行使可能時から10年」→ ○(§166)
⚠️ よくある引っかけ
- 「人身侵害+3年」→ ×(§724の2で5年に延長)
- 「不法行為+10年」→ ×(§724は3年/20年。§166の10年と混同するな)
- 「人身侵害+10年」→ ×(§724の2の5年)
過去問「比較」道場(ひっかけ回避)
👨🏫:人身侵害特例(条文どおり)と、債権一般との混同引っかけの2問。
【比較対象1:法改正ドンピシャ問題(令和2年[12月] 問1 肢4)】
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する。
答え:◯(正)
§724の2の条文をそのまま述べた肢。人身侵害は知った時から5年で時効消滅
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する。(正しいか?)
§724の2:人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての§724一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
本肢は§724の2の条文そのままを述べている → 正しい。
判定:○ 正しい
§724の2の条文そのまま。人身侵害は知った時から5年で時効消滅。
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する。(正しいか?)
この肢の記述は§724の2の条文と一致する?
以上をふまえ、この肢は正しい?
判定:○ 正しい
§724の2の条文そのまま。人身侵害は知った時から5年で時効消滅。
【比較対象2:一般ルール混同の引っかけ(平成19年 問5 肢4 改題)】
不法行為による損害賠償の請求権(生命・身体の侵害によるものを除く)の消滅時効の期間は、権利を行使することができることとなった時から10年である。
答え:×(誤)
非人身侵害の不法行為は§724で「知った時から3年/行為の時から20年」。「10年」は§166(債権一般)の数字を不法行為に誤って当てはめた引っかけ
不法行為による損害賠償の請求権(生命・身体の侵害によるものを除く)の消滅時効の期間は、権利を行使することができることとなった時から10年である。(正しいか?)
§724:不法行為による損害賠償請求権は、次に掲げる場合に時効消滅する。
一号:被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間
二号:不法行為の時から20年間
「10年」という期間は§724にも§724の2にも存在しない。
本肢の「10年」は債権一般の消滅時効(§166①項)を不法行為に誤って当てはめた誤り。
§166:債権は ①権利を行使できることを知った時から5年 ②権利を行使できる時から10年。
しかし不法行為損害賠償は§724の特則によって判定される。一般原則を当てはめてはいけない。
判定:× 誤り
非人身侵害の不法行為損害賠償は§724により「知った時から3年」「行為の時から20年」。「10年」という期間は存在しない。債権一般§166の10年と混同した引っかけ。
不法行為による損害賠償の請求権(生命・身体の侵害によるものを除く)の消滅時効の期間は、権利を行使することができることとなった時から10年である。(正しいか?)
非人身侵害の不法行為損害賠償は、知った時から何年?
「権利を行使できる時から10年」は不法行為損害賠償に適用される?
以上をふまえ、この肢は正しい?
判定:× 誤り
非人身侵害の不法行為損害賠償は§724により「知った時から3年」「行為の時から20年」。「10年」という期間は存在しない。債権一般§166の10年と混同した引っかけ。
【まとめ】📌 この記事の核心
📌 この記事の核心
⚖消滅時効は権利の種類で起算点・期間が変わる。
・債権一般(§166):5年(主観)/10年(客観)
・不法行為一般(§724):3年(主観)/20年(客観)
・人身侵害(§724の2):5年(主観・特則)/20年(客観)
「人身侵害=3年→5年に延長」「不法行為=§724であって§166ではない」の2点を覚えれば消滅時効の期間問題は完全突破。
→ 次の記事:「時効の承認(リセット)の即死トラップ」