📇 意思表示 5つの型の「違い」早見表
心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫。解く手順は型ごとの判断アルゴリズム記事にまとまっています。この記事はその補助線――型どうしの違いを1枚で確認して、混ぜて覚えないための早見表です。
📇 早見表 ―― 当事者間の効果と第三者(取消し前/後)
| 型(入口キーワード) |
当事者間 |
取消し(無効)前の第三者 |
心裡留保 §93 本心でない冗談 | 原則有効。相手方が悪意 or 有過失なら無効(§93①ただし書「知り、又は知ることができた」) | 善意でOK(§93②・無過失は不要) |
虚偽表示 §94 通謀のウソ | 常に無効(§94①) | 善意でOK(§94②・無過失も登記も不要=判例) |
錯誤 §95 勘違い | 重要な錯誤なら取消し可(§95①。動機=基礎事情の錯誤は表示が必要=§95②)。 ただし本人に重過失なら不可(§95③。例外=相手方が悪意/重過失、または同一の錯誤) | 善意+無過失が必要(§95④) |
詐欺 §96 騙された | 取消し可(§96①)。第三者による詐欺は、相手方が悪意 or 知ることができた(有過失)ときだけ取消し可(§96②) | 善意+無過失が必要(§96③) |
強迫 §96① 脅された | 常に取消し可(第三者による強迫でも、相手方の善意・悪意を問わない) | 保護なし(善意無過失の第三者にも表意者が勝つ) |
| (取消し系=錯誤・詐欺・強迫 共通)取消し後の第三者 | ― | 善意・悪意ではなく対抗関係=登記の早い者勝ち(§177・判例) |
💡
丸暗記しないための一行:
わざとウソを作った人(心裡留保・虚偽表示)ほど守られない→第三者は
善意だけで勝てる。
うっかりした人・騙された人(錯誤・詐欺)→第三者は
無過失まで必要。
脅された人(強迫)は落ち度ゼロ→第三者は守られない。
※この一行から導けないもの=「無効か取消しか」の別(心裡〈例外時〉・虚偽=無効/錯誤・詐欺・強迫=取消し)と、取消権の期限(追認できる時から5年・行為の時から20年=§126)。ここは表のまま覚えてください。
🕐 「取消しの後」が見えたら、表の下段へ(§177)
取消しをしても、登記名義はまだ相手方Bのままです。だからBは、いったんAに戻ったはずの土地を第三者Cへ売れてしまう――形の上ではAとCへの二重譲渡と同じ。そこで取消し後に現れた第三者との勝負は、善意・悪意の審査ではなく対抗関係=先に登記した者勝ち(§177・判例)で決まります。
⚠ 「取消し後」の話が起きるのは取消し系(錯誤・詐欺・強迫)だけ。虚偽表示・心裡留保(無効となる場合)は時間で切らず、いつでも§94②・§93②で処理します。
⚠️ 引っかけ5本 ―― 出題者は「型のすり替え」を狙う
① 詐欺と強迫のすり替え。第三者が介入したときの相手方の善悪チェック(§96②)は詐欺だけ。強迫は相手方が善意でも常に取消し可(§96①)。取消し前の第三者保護も、詐欺=善意無過失で保護/強迫=保護なし。「詐欺も強迫も同じ扱い」と書いてあれば疑ってください。
② 「無効」と「取消し」のすり替え。錯誤は2020年改正で「無効」→「取消し」に変わりました。「錯誤による意思表示は無効」「無効を主張できる」とあれば現行法では×。無効なのは虚偽表示と心裡留保(例外時)だけです。
③ 「誰が」取り消せるかのすり替え。取消しできるのは瑕疵ある意思表示をした本人・その代理人・承継人だけ(§120②)。相手方から「Aの錯誤(詐欺)を理由に取り消す」ことはできません。
④ 重過失の「復活」を見落とさせる。本人に重過失があれば錯誤取消しは不可(§95③)――で終わらせず、相手方が悪意/重過失のとき、または相手方も同一の錯誤に陥っていたときは取消し可に復活します(§95③一・二)。「重過失だから不可」と言い切る肢は、この復活の有無を確認。
⑤ 取消し「前」と「後」のすり替え。同じ善意無過失の第三者でも、取消し前=§96③等の保護の話/取消し後=登記の先着(§177)の話。「取り消した後に」の一言でルールが入れ替わります。
📌 改正メモ(そのまま覚える):①錯誤「無効→取消し」②第三者詐欺の相手方要件に「知ることができたとき(有過失)」が追加(§96②)③心裡留保の第三者保護§93②は新設(善意のみ)。
🏋️ 腕試し ―― 「どの型・どの場面か」を決めてから開く
Q1. 虚偽表示でAB間は無効。事情を知らない(が、少し不注意だった)CがBから買った。CはAに勝てる?
↓ 型と場面を決めてから開く
👉 虚偽表示・取消し(無効)前の第三者。§94②は善意だけでよく過失は不問 → Cの勝ち(○)。
Q2. AがDにだまされてBに売った。相手方Bはその詐欺を知っていた。Aは取り消せる?
↓ 型と場面を決めてから開く
👉 第三者による詐欺・当事者間。相手方Bが悪意 → 取消し可(○)(§96②)。
Q3. 同じ設定で、相手方Bは詐欺を知らなかった(善意無過失)。Aは取り消せる?
↓ Q2と何が変わった?を決めてから開く
👉 第三者による詐欺・当事者間。相手方Bが善意無過失 → 取消し不可(×)(§96②)。Q2と1語違いで反転。
Q4. これが強迫だったら?(Dに脅されてBに売却・相手方Bは善意)
↓ 詐欺と何が違う?を決めてから開く
👉 第三者による強迫。強迫に相手方の善悪チェックはない → 取消し可(○)(§96①)。詐欺との対比が決め手。
Q5. Aが詐欺で取り消した後、善意無過失のCがBから買って登記した。Aは取り戻せる?
↓ 前か後かを決めてから開く
👉 取消し後の第三者。「取消し後」→善意・悪意の審査は退場・登記の早い者勝ち(§177)。Cが登記済み → Aは取り戻せない(×)。
📌 まとめ:迷いの正体はだいたい「型の混線」です。①効果は無効か取消しか ②取消し前の第三者は善意だけか・無過失までか・保護なしか ③「取消し後」なら登記の先着(§177)。この3点を早見表で確認したら、あとは各型のアルゴリズムで手順どおりに解いてください。
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