【賃貸借】建物・造作買取請求 ─ 自業自得(債務不履行)は保護しない

📘 深掘り解説 | 賃貸借の順路 6 / 12 建物・造作買取請求(自業自得(債務不履行)は保護しない) のくわしい解説です
この記事は〈借地の型〉で迷った論点だけを読む場所です。順に全部読む必要はありません。

退去のとき、自腹で建てた家や取り付けたエアコンを「大家さん、買い取ってよ!」と強制的に買わせるのが買取請求権。だが——家賃を滞納して追い出される借主が、この図々しい要求をできるのか?そして「買い取りません」という特約は、建物では無効・造作では有効。この逆転の理由まで腹落ちさせます。

目次

本日のターゲット問題①(平成14年度 問13 肢2)

(Bが借りた土地上に建物を所有・契約終了に伴う建物買取請求権について)

肢2 建物買取請求権は、契約終了の理由を問わず、Bの債務不履行を原因とする契約終了の場合にも、BはAに対して建物の買取りを請求することができる。

本日のターゲット問題②(平成27年度 問11 肢4)

肢4 AB間の賃貸借契約がBの賃料不払を理由として解除された場合、BはAに対して、Aの同意を得てBが建物に付加した造作の買取りを請求することはできない。

【買取請求権の2つの壁】
  壁① 借主の落ち度(債務不履行解除)はないか?
       → 家賃滞納などで解除 → 建物も造作も買取請求できない(自業自得)
  壁② 「買い取らない」特約は有効か?(種類で逆転!)
       建物(借地・高額)── 特約は無効(§16強行規定。借主を破産から守る)
       造作(借家・安い)── 特約は有効(§37のリストに§33が無い=任意規定)
       ※造作排除特約が有効な理由=大家が設置を許可しやすくするため
  ※造作買取請求権は「期間満了・解約申入れ」で終了するときの権利

答え:① ×(誤り)/② 〇(正しい)

🎯 この問題の核心

どちらも債務不履行(家賃滞納)で解除=自業自得。①「理由を問わず請求できる」は誤り(買取請求権は剥奪される)。②「賃料不払で解除なら造作買取を請求できない」は正しい。誠実に契約を終えた借主だけが行使できる権利。

🧠 なぜこうなる? ― 講師と生徒で”天秤”に乗せる

⚖️ ここは「天秤の世界」。借主が投下した資本の回収(使えるものを壊す社会的損失の回避)と、ルール違反者へのペナルティを量ります。

🙋‍♂️
生徒:「先生、自腹で建てた家や付けたエアコンを退去時に大家に『買い取れ』と強制できるなんて、大家が可哀想では?」
👨‍🏫
講師:「天秤を見ろ。借主は何千万もかけて家を建て、高価な設備を付けている。『全部壊して更地で出ていけ』では借主は大損だし、まだ使える建物を壊すのは社会的にも大損失だ。『大家が買い取って次の人に貸せばいい』という合理的なルールが買取請求権だ。だがこれは誠実にルールを守った借主へのご褒美だ。家賃を滞納して追い出される奴が『家を買い取れ!』と言えると思うか?」
🙋‍♂️
生徒:「自分が悪いのにそんな図々しい要求は許されません!」
👨‍🏫
講師:「だから債務不履行解除なら買取請求権は剥奪(自業自得)だ。そしてもう一つの罠が『買い取りません』特約。借地の建物は数千万の財産だから、特約で奪われたら借主が破産する——だから特約は無効(強行規定§16)。だが借家の造作も『絶対買い取れ・特約も無効』にしたら、大家はどうする?」
🙋‍♂️
生徒:「『強制的に買わされるくらいなら、最初からエアコン設置の許可を出さない!』となります……。」
👨‍🏫
講師:「本末転倒だろ。だから法律は借主の利便性を優先し、造作は『買い取らない特約を有効(任意規定)にするから、大家さん安心して設置を許可してね』とした。建物(高い)=特約で奪えない/造作(安い)=特約で奪える。大家が許可しやすくするための配慮だ。」
👨‍🏫
講師:「ここから引っかけ2連発だ。引っかけ①(令和3年12月 問12 肢4)——「BがAの同意を得て付加した造作がある場合でも、契約終了時に借地借家法第33条の規定に基づく造作買取請求権を行使することはできない、という特約は無効である。」○か×か?」
🙋‍♂️
生徒:「借主に不利な特約だから無効…○? いや、造作買取請求権(§33)は任意規定。大家が設置を許可しやすくするための制度で、排除特約は有効だ。『無効である』は建物買取(強行規定)との混同=×!」
👨‍🏫
講師:「その通り。引っかけ②(平成27年 問12 肢3)——「期間満了時に造作買取請求をすることができない旨の規定は、定期借家契約では有効だが、普通借家契約では無効である。」これは?」
🙋‍♂️
生徒:「定期は大家有利、普通は借主保護…だから普通だと無効? いや、造作排除特約が有効なのは借家の種類を問わず共通だ。『定期=有利/普通=保護』を悪用したすり替え。普通借家でも有効=『無効』は×!」
👨‍🏫
講師:「完璧だ。造作排除特約は普通・定期どちらでも有効、を本番まで持っていけ。」

  • §13①(建物買取請求権) 借地権の期間満了で更新がないとき、借地権者は設定者に建物等を時価で買い取れと請求できる。
  • §16(建物は強行規定) §13に反する特約で借地権者に不利なものは無効(=「建物を買い取らない」特約は無効)。
  • §33①(造作買取請求権) 賃貸人の同意を得て付加した造作は、賃貸借が期間満了・解約申入れで終了するとき、時価で買い取れと請求できる。
  • §37(造作は任意規定) 強行規定のリストに§31・§34・§35はあるが§33は無い。あえて外れている=特約で排除してよい(反対解釈)。
  • 判例 債務不履行(賃料不払・無断転貸等)で解除された場合は、買取請求権を行使できない(最判昭31.4.6等)。

暗記ポイント

🎯 試験本番ではこう即答する

⚖️ 暗記メモ:「買取請求権」を見たら2段チェック——①借主に落ち度(債務不履行解除)はないか(あれば建物も造作も剥奪・自業自得)/②奪おうとする特約の対象は建物か造作か。建物=特約無効(借主保護)、造作=特約有効(大家が許可しやすく)。造作は借家の種類を問わず排除特約が有効。

買取請求権の種類① 債務不履行で解除② 「買い取らない」特約
建物買取請求権(借地)行使できない(自業自得)無効(強行規定§16)
造作買取請求権(借家)行使できない(自業自得)⭕️ 有効(任意規定・許可しやすくするため)

⚠️ よくある引っかけ

  • 「理由を問わず(債務不履行でも)買取請求できる」→ ×自業自得で剥奪。誠実に終えた借主だけの権利。
  • 「造作の買取りをしない特約は借主に不利だから無効」→ ×。造作は任意規定で特約有効。建物(無効)と混同する罠。
  • 「造作排除特約は定期借家では有効・普通借家では無効」→ ×借家の種類を問わず有効

🏋 過去問道場 ― 4手で解く

📖 解説で型を確認 → 🏋 練習で1段ずつ。黄色=判断の手がかり。

アルゴリズムによる処理 | 🏗️借地
📖 解説で理解 → 🏋 練習で定着
📋 問題文(H14問13肢2|建物買取・債務不履行)/黄色=判断の手がかり
Bが借りた土地上に建物を所有・契約終了に伴う建物買取請求権について。本肢は正しいか誤りか。

建物買取請求権は、契約終了の理由を問わず、Bの債務不履行を原因とする契約終了の場合にも、BはAに対して建物の買取りを請求することができる。(正しいか?)

🧭 Step1 どの型か
根拠=柱書建物の所有を目的とする土地の賃貸借🏗️借地(土地を借りて建物を所有)
⚠ ひっかけ:駐車場・資材置場(建物を建てない)や一時使用目的は民法(保護なし)。本肢は『土地上に建物を所有』=建物所有目的なので借地でOK。
🛤 Step2 どの論点か
根拠=肢の建物買取請求→建物買取請求=終了時のもめごと(買取請求)の話=もめごとレーン。
⚖ Step3 判定する
借地の型・分かれ道③もめごと:背骨は『借地人は弱いから守る。でも“自業自得”は守らない』。
新アルゴ:『✖でも“自業自得”は守らない:債務不履行で解除なら、建物買取請求も明渡し猶予も一切なし。』
当てはめ:本肢はBの債務不履行を原因とする契約終了=自業自得。
本肢は『理由を問わず(債務不履行でも)建物買取請求できる』としているが、債務不履行解除では建物買取請求できない=×。
✅ Step4 結論

× 誤り

債務不履行解除(自業自得)では建物買取請求権は剥奪される。『理由を問わず請求できる』は誤り。

アルゴリズムによる処理 | 🏗️借地
📖 解説で理解 → 🏋 練習で定着
📋 問題文(H27問11肢4|造作買取・債務不履行)/黄色=判断の手がかり
Bが借りた土地上に建物を所有・賃料不払を理由に解除された場合の造作買取請求について。本肢は正しいか誤りか。

AB間の賃貸借契約がBの賃料不払を理由として解除された場合、BはAに対して、Aの同意を得てBが建物に付加した造作の買取りを請求することはできない。(正しいか?)

🧭 Step1 どの型か
根拠=柱書建物の所有を目的とする土地の賃貸借🏗️借地(土地を借りて建物を所有)
⚠ ひっかけ:造作買取は本来『建物を借りる』借家の§33論点だが、ここでは借地の型の補足§33(自業自得は造作も保護しない)で処理する。一時使用・駐車場は民法で保護外。
🛤 Step2 どの論点か
根拠=肢の造作の買取りを請求することはできない→造作買取請求=終了時のもめごと(買取請求)の話=もめごとレーン。
⚖ Step3 判定する
背骨は『借地人は弱いから守る。でも“自業自得”は守らない』。これは造作買取(§33)にも及ぶ。
新アルゴ補足:『造作買取請求(§33):⚠借主の債務不履行・背信解除では造作買取できない(自業自得)。』
当てはめ:本肢はBの賃料不払(債務不履行)を理由とする解除=自業自得。
本肢は『造作買取を請求することはできない』としており、自業自得で造作買取できないのは正しい=○。
✅ Step4 結論

○ 正しい

賃料不払(債務不履行)解除では造作買取請求も認められない(自業自得は保護しない)。『請求できない』は正しい。

アルゴリズムによる処理 | 🏗️借地
📖 解説で理解 → 🏋 練習で定着
📋 問題文(令3(12月)問12肢4|造作排除特約の有効性)/黄色=判断の手がかり
Bが借りた土地上に建物を所有・造作買取請求を排除する特約の有効性について。本肢は正しいか誤りか。

BがAの同意を得て付加した造作がある場合でも、契約終了時に借地借家法第33条の規定に基づく造作買取請求権を行使することはできない、という特約は無効である(正しいか?)

🧭 Step1 どの型か
根拠=柱書建物の所有を目的とする土地の賃貸借🏗️借地(土地を借りて建物を所有)
⚠ ひっかけ:造作買取は借家の§33論点だが借地の型の補足§33で処理する。建物買取(§13・強行規定で排除特約は無効)と混同しやすい点が罠。
🛤 Step2 どの論点か
根拠=肢の特約は無効である→『買い取らない特約』の有効・無効=終了時のもめごと(特約)の話=もめごとレーン。
⚖ Step3 判定する
新アルゴ補足:『造作買取請求(§33):買い取らない特約は有効(任意規定)。』
建物買取(§13)は強行規定で排除特約が無効だが、造作(§33)は任意規定なので排除特約は有効=逆になる。
当てはめ:本肢は造作買取を排除する特約。任意規定なので特約は有効。
本肢は『特約は無効である』としているが、造作排除特約は有効なので=×。
✅ Step4 結論

× 誤り

造作買取請求権(§33)は任意規定で排除特約は有効。『特約は無効』は誤り。建物買取(§13・強行規定)との混同に注意。

アルゴリズムによる処理 | 🏗️借地
📖 解説で理解 → 🏋 練習で定着
📋 問題文(H27問12肢3|造作排除特約は普通借家でも有効)/黄色=判断の手がかり
Bが借りた土地上に建物を所有・造作買取の排除特約が普通借家で無効になるかについて。本肢は正しいか誤りか。

期間満了時に造作買取請求をすることができない旨の規定は、定期借家契約では有効だが、普通借家契約では無効である(正しいか?)

🧭 Step1 どの型か
根拠=柱書建物の所有を目的とする土地の賃貸借🏗️借地(土地を借りて建物を所有)
⚠ ひっかけ:『定期=大家有利/普通=借主保護』を悪用したすり替え。有効・無効が普通/定期で分かれるのは賃料減額特約(§32)であって、造作買取ではない。
🛤 Step2 どの論点か
根拠=肢の普通借家契約では無効である→造作買取の『買い取らない特約』の有効・無効=終了時のもめごと(特約)の話=もめごとレーン。
⚖ Step3 判定する
新アルゴ補足:『造作買取請求(§33):買い取らない特約は有効(普通・定期で同じ)。』
§33は任意規定なので、排除特約は普通借家でも定期借家でも有効=借家の種類を問わず共通。
当てはめ:本肢は『普通借家では無効』としているが、普通借家でも有効。
本肢は『定期は有効・普通は無効』としているが、普通でも有効なので=×。賃料減額特約(§32)とのすり替え。
✅ Step4 結論

× 誤り

§33(造作買取)は任意規定で、排除特約は普通借家でも定期借家でも有効。『普通借家では無効』は誤り。賃料減額(§32)とのすり替え。

【まとめ】📌 この記事の核心

📌 この記事の核心
⚖ 買取請求権は2段チェック——①借主の落ち度(債務不履行解除)があれば建物も造作も剥奪(自業自得は保護しない)/②「買い取らない」特約は建物=無効(§16強行規定)・造作=有効(§37のリストに§33が無い任意規定)。造作排除特約は借家の種類を問わず有効。建物(高額)と造作(大家が許可しやすく)の保護の差で腹落ちさせる。


読み終えたら | 賃貸借の順路 6 / 12
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次