【賃貸借】定期借家の中途解約 ─ 居住用200㎡未満・やむを得ない事情(§38⑦)

📘 深掘り解説 | 賃貸借の順路 8 / 12 定期借家の中途解約(居住用200㎡未満・やむを得ない事情) のくわしい解説です
この記事は〈借家の型〉で迷った論点だけを読む場所です。順に全部読む必要はありません。

定期借家は「期間満了まで、お互い絶対に解約できない」のが大原則。だから借主に急な転勤・親の介護・長期療養といった「やむを得ない事情」ができた時に悲劇が起きやすい。そんな借主を救う「奇跡の命綱(4つの絶対条件)」と、その命綱を断ち切ろうと条件をすり替えてくる試験委員の罠。指差し確認で全部見抜く1問です。

目次

本日のターゲット問題(令和4年度 問12 肢3)

Aは、B所有の甲建物(床面積100m²)につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。この場合における次の記述のうち、誤っているものはどれか。

肢3 居住を目的とする床面積100㎡の定期建物賃貸借契約において、賃借人の中途解約を禁止する特約があっても、やむを得ない事情によって建物を自己の生活の本拠として使用することが困難になったときは、賃借人は解約の申入れをすることができる。

【定期借家の中途解約】命綱は発動する?
          │
   4つの絶対条件をすべて満たすか?
          │
 ① 主体:賃借人(借主)から(※大家は不可)
 ② 用途:居住用(※店舗・事務所は不可)
 ③ 面積:床面積200㎡未満
 ④ 事情:転勤・療養・介護等やむを得ない事情
          │
   ┌──────┴──────────┐
 4つ全部○             1つでも欠ける
   ↓                  ↓
 ⭕ 解約できる          ❌ 原則どおり解約不可
 (申入れから1ヶ月で終了)
 ※禁止特約は借主に不利→無効(§38⑧)

  本日の肢 = 居住・100㎡・やむを得ない事情・借主 → 全部○ → 正しい

答え:〇(正しい)

🎯 この問題の核心

①借主から ②居住用 ③床面積100㎡(200㎡未満)④やむを得ない事情――4条件すべてクリア。だから中途解約の命綱が発動する(§38⑦・申入れから1ヶ月で終了)。「中途解約を禁止する特約」があっても、借主に不利な特約は無効(§38⑧強行規定)。よって解約できるとする本肢は正しい。

🧠 なぜこうなる? ― 講師と生徒で”天秤”に乗せる

⚖ ここは「契約を守る原則」と「弱者(一般消費者)の保護」を量る天秤の世界。とりわけ「200㎡未満」という数字は、弱者保護という天秤の発想を知れば暗記不要になります。

🙋‍♂️
生徒:「先生!定期借家は『期間を決めたら更新しないし、期間中はお互い契約を守る』のが大原則ですよね?」
👨‍🏫
講師:「その通り。『期間5年』なら大家も借主も5年は解約できないのが原則だ。だが借主がサラリーマンで、2年目に急な転勤を命じられたら?」
🙋‍♂️
生徒:「遠くに引っ越すのに、住めない家の家賃をあと3年も払い続ける!?可哀想すぎます!」
👨‍🏫
講師:「だろ?介護で実家に戻る、病気で長期療養……生きていれば『やむを得ない事情』が起きる。普通に暮らす借主をそこまで縛るのは酷だ。だから借地借家法は、特定の条件を満たした時だけ発動する『中途解約の命綱』を用意した。発動条件は次の4つの絶対条件。すべて満たした時だけ借主は一方的に解約を申し入れられる(申入れから1ヶ月で終了)。①借主からのみ(大家は不可)/②居住用/③床面積200㎡未満/④やむを得ない事情。」
🙋‍♂️
生徒:「なんで『200㎡未満』なんて細かい数字が?」
👨‍🏫
講師:「いい質問だ。200㎡といえば大豪邸。そんな家を借りられる人は経済的な『強者』だから、法律で手厚く守る必要はない。法律が守りたいのは一般的なアパート・マンションに住む普通の消費者(弱者)だからさ。」
🙋‍♂️
生徒:「天秤のバランス(弱者保護)ですね!超納得です!」
👨‍🏫
講師:「ここから引っかけ3連発だ。定期借家の『中途解約の命綱』を3方向から狩るぞ。引っかけ①(平成20年 問14 肢4)——「居住用建物の定期借家契約において、やむを得ない事情により生活の本拠として使用することが困難となったときは、床面積の規模にかかわりなく、賃借人は同契約の有効な解約の申入れをすることができる。」○か×か?」
🙋‍♂️
生徒:「やむを得ない事情なら解約できる…○? いや、『床面積の規模にかかわりなく』が罠だ。命綱の発動には床面積200㎡未満の境界線がある(豪邸の強者まで保護しない)。面積要件を無視してる=×!」
👨‍🏫
講師:「鋭い。引っかけ②(令和2年 問12 肢3)——「定期借家契約において、賃貸人(A)は、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情があれば、賃借人(B)に対し、解約を申し入れ、申入れの日から1月を経過することによって、本件契約を終了させることができる。」これは?」
🙋‍♂️
生徒:「やむを得ない事情なら解約…○? いや、主体が『賃貸人(A)』だ!この命綱は立場の弱い借主専用の武器。大家の方からは、やむを得ない事情があっても中途解約できない。主体すり替え=×!」
👨‍🏫
講師:「その通り。仕上げの引っかけ③(平成24年 問12 肢4)——「普通建物賃貸借契約では、中途解約できる旨の留保がなければ賃借人は2年間は当該建物を借りる義務があるのに対し、定期建物賃貸借契約では、一定の要件を満たすのであれば、中途解約できる旨の留保がなくても賃借人は期間の途中で解約を申し入れることができる。」これは?」
🙋‍♂️
生徒:「普通借家は期間を守る義務、定期借家は一定要件(居住用・200㎡未満・やむを得ない事情)で中途解約できる特例…その通りだ!特例の存在を正しく述べてる=!」
👨‍🏫
講師:「完璧だ。面積・主体・要件——命綱は『借主専用・200㎡未満・やむを得ない事情』の3点セット、を本番まで持っていけ。」

借地借家法 第38条第7項(中途解約の要件と効果)
「(定期建物賃貸借のうち)居住の用に供する建物の賃貸借(床面積が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。」

借地借家法 第38条第8項(強行規定)
「前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。」=中途解約を禁止する特約は借主に不利なので無効。

暗記ポイント

🎯 試験本番ではこう即答する

⚖️ 暗記メモ:定期借家の中途解約は、4つの絶対条件を指差し確認。①借主から(大家は不可)②居住用(事業用不可)③200㎡未満 ④やむを得ない事情。1つでも欠けたら原則どおり解約不可。逆に全部揃えば、禁止特約があっても無効(§38⑧)で解約できる。試験委員はこの4つのどれかをすり替えてくる。

条件内容引っかけパターン
主体賃借人(借主)からのみ大家(賃貸人)からも解約できる ➡ ×
用途居住用の建物事業用(店舗など)の建物 ➡ ×
面積床面積 200㎡未満規模にかかわりなく解約できる ➡ ×
事情やむを得ない事情理由がなくても解約できる ➡ ×

⚠️ 引っかけ注意:①「床面積の規模にかかわりなく」(→200㎡未満限定)/②「賃貸人(大家)からも解約できる」(→借主専用の命綱)/③「事業用でも」(→居住用限定)。

🏋 過去問道場 ― 4手で解く

📖 解説で型を確認 → 🏋 練習で1段ずつ。黄色=判断の手がかり。

アルゴリズムによる処理 | 🏠借家・R4-12-3
📖 解説で理解 → 🏋 練習で定着
📋 問題文(中途解約の命綱|禁止特約は無効)/黄色=判断の手がかり
清算(定期借家の法定中途解約権§38⑦・禁止特約は無効§38⑧)

居住を目的とする床面積100㎡の定期建物賃貸借契約において、賃借人の中途解約を禁止する特約があっても、やむを得ない事情によって建物を自己の生活の本拠として使用することが困難になったときは、賃借人は解約の申入れをすることができる。(正しいか?)

🧭 Step1 どの型か
根拠=柱書定期建物賃貸借契約🏠借家(建物を借りる)
⚠ ひっかけ:「定期建物賃貸借契約」=建物を借りる話。また貸し(転貸)や土地を借りて建物所有(借地)と早合点しない。登場人物は貸主・借主の2人で建物を借りているので🏠借家で確定。
🛤 Step2 どの論点か
根拠=肢の中途解約を禁止する特約/解約の申入れ肢は契約期間の途中での「解約の申入れ」=終了・出口の話、しかも「中途解約を禁止する特約」の効力が論点→終了・清算レーン=清算レーン。
⚖ Step3 判定する
根拠:定期借家でも①借主から②居住用③床面積200㎡未満④やむを得ない事情、の4条件を満たせば中途解約できる(§38⑦・申入れから1ヶ月で終了)。これを奪う中途解約禁止特約は借主に不利=無効(§38⑧)。
当てはめ:本肢は居住用・床面積100㎡(=200㎡未満)・やむを得ない事情・借主から、と4条件すべてクリア。禁止特約があっても§38⑧で無効なので、借主は解約の申入れができる。
本肢は記述のとおり=○。
✅ Step4 結論

○ 正しい

①借主から②居住用③床面積100㎡(200㎡未満)④やむを得ない事情の4条件すべてクリア。中途解約の命綱が発動する(§38⑦)。これを奪う禁止特約は無効(§38⑧)なので、解約できるとする本肢は正しい。

アルゴリズムによる処理 | 🏠借家・H20-14-4
📖 解説で理解 → 🏋 練習で定着
📋 問題文(中途解約は200㎡未満が要件)/黄色=判断の手がかり
清算(定期借家の法定中途解約権§38⑦・床面積要件=200㎡未満)

居住用建物の定期借家契約において、やむを得ない事情により生活の本拠として使用することが困難となったときは、床面積の規模にかかわりなく、賃借人は同契約の有効な解約の申入れをすることができる。(正しいか?)

🧭 Step1 どの型か
根拠=柱書定期借家契約🏠借家(建物を借りる)
⚠ ひっかけ:「居住用建物の定期借家契約」=建物を借りる話。土地を借りて建物所有(借地)やまた貸し(転貸)と早合点しない。🏠借家で確定。
🛤 Step2 どの論点か
根拠=肢の床面積の規模にかかわりなく/解約の申入れ肢は契約期間の途中での「解約の申入れ」=終了・出口の話で、その要件(床面積)が論点→終了・清算レーン=清算レーン。
⚖ Step3 判定する
根拠:定期借家の法定中途解約権(§38⑦)は『居住の用に供する建物で床面積が200㎡未満のもの』に限られる。200㎡以上の広い建物には適用されない。
当てはめ:本肢は『床面積の規模にかかわりなく』解約できるとするが、これは面積要件(200㎡未満)を無視している。200㎡以上の建物では中途解約できない。
本肢は床面積要件を無視しており誤り=×。
✅ Step4 結論

× 誤り

法定中途解約権は『床面積200㎡未満の居住用』が要件(§38⑦)。『規模にかかわりなく』解約できるとするのは面積要件を無視しており誤り。豪邸に住む強者まで保護しないという天秤で覚える。

アルゴリズムによる処理 | 🏠借家・R2-12-3
📖 解説で理解 → 🏋 練習で定着
📋 問題文(中途解約権は借主だけ|主体の罠)/黄色=判断の手がかり
清算(定期借家の法定中途解約権§38⑦・主体=賃借人のみ)

定期借家契約において、賃貸人(A)は、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情があれば、賃借人(B)に対し、解約を申し入れ、申入れの日から1月を経過することによって、本件契約を終了させることができる。(正しいか?)

🧭 Step1 どの型か
根拠=柱書定期借家契約🏠借家(建物を借りる)
⚠ ひっかけ:「定期借家契約」=建物を借りる話。登場人物が貸主A・借主Bの2人で建物の賃貸借なので🏠借家で確定。また貸し(転貸)や借地と早合点しない。
🛤 Step2 どの論点か
根拠=肢の賃貸人(A)は…解約を申し入れ…本件契約を終了させる肢は契約期間の途中での「解約の申入れ」による契約の終了の話で、その主体が論点→終了・清算レーン=清算レーン。
⚖ Step3 判定する
根拠:§38⑦の法定中途解約権は『建物の賃借人(借主)』のための借主保護の制度。やむを得ない事情で解約を申し入れられるのは借主だけで、貸主にはこの中途解約権はない。
当てはめ:本肢は主体を『賃貸人(A)』にすり替えている。貸主Aはやむを得ない事情があっても§38⑦で中途解約して契約を終了させることはできない。
本肢は主体のすり替えで誤り=×。
✅ Step4 結論

× 誤り

§38⑦の法定中途解約権は立場の弱い賃借人(借主)専用の武器。賃貸人(大家)の方からはやむを得ない事情があっても中途解約できない。主体を賃貸人にすり替えた本肢は誤り。

アルゴリズムによる処理 | 🏠借家・H24-12-4
📖 解説で理解 → 🏋 練習で定着
📋 問題文(定期借家は留保特約なしでも解約できる)/黄色=判断の手がかり
清算(普通借家=§618留保特約/定期借家=§38⑦法定中途解約権の比較)

普通建物賃貸借契約では、中途解約できる旨の留保がなければ賃借人は2年間は当該建物を借りる義務があるのに対し、定期建物賃貸借契約では、一定の要件を満たすのであれば、中途解約できる旨の留保がなくても賃借人は期間の途中で解約を申し入れることができる。(正しいか?)

🧭 Step1 どの型か
根拠=柱書建物賃貸借契約🏠借家(建物を借りる)
⚠ ひっかけ:「普通建物賃貸借契約」「定期建物賃貸借契約」=どちらも建物を借りる話。借地(土地を借りて建物所有)や転貸(また貸し)と早合点しない。🏠借家で確定。
🛤 Step2 どの論点か
根拠=肢の中途解約できる旨の留保がなくても…解約を申し入れる肢は契約期間の途中での「解約の申入れ」=終了・出口の話で、留保特約なしでも中途解約できるかが論点→終了・清算レーン=清算レーン。
⚖ Step3 判定する
根拠:普通借家(期間の定めあり)は、中途解約できる旨の留保特約がなければ期間内は解約できない(民法§618)。一方、定期借家は§38⑦の要件(居住用・200㎡未満・やむを得ない事情)を満たせば、留保特約がなくても法律上当然に中途解約できる。
当てはめ:本肢は『普通借家は留保がなければ期間中借りる義務/定期借家は一定要件で留保がなくても中途解約できる』と、両者の違いと§38⑦の特例をそのまま述べている。
本肢は記述のとおり=○。
✅ Step4 結論

○ 正しい

普通借家は留保特約がないと中途解約不可(§618)だが、定期借家は§38⑦の要件を満たせば留保特約なしでも法律上当然に中途解約できる。特例の存在をストレートに述べており正しい。

【まとめ】📌 この記事の核心

📌 この記事の核心
⚖ 定期借家の中途解約は、4つの絶対条件を指差し確認。①借主から(大家は不可)②居住用(事業用不可)③床面積200㎡未満 ④やむを得ない事情。すべて揃えば、中途解約禁止特約があっても無効(§38⑧)で解約でき、申入れから1ヶ月で終了。1つでも欠ければ原則どおり解約不可。「200㎡未満」は弱者保護という天秤で覚えれば忘れない。


読み終えたら | 賃貸借の順路 8 / 12
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