債権譲渡の最終関門は、債務者からの逆襲「相殺」です。「俺は元の債権者Aに金を貸している。この借金とチャラ(相殺)にする。新しい債権者には1円も払わん!」——この逆襲がどこまで通用するか。決め手は「通知の前か後か」のタイムアタックです。
本日のターゲット問題(平成23年 問6 肢4)
AがBに対する賃料債権をFに適法に譲渡し、その旨をBに通知したときは、通知時点以前にBがAに対する債権を有しており相殺適状になっていたとしても、Bは、通知後はその債権と譲渡にかかる賃料債務とを相殺することはできない。
① A→Fへ賃料債権を譲渡+Bに通知 A(譲渡人)━━━━━━━━━━━▶ F(譲受人) ▲ │請求 │② 通知“前”からBはAへ反対債権 ▼ └───────────────── B(債務者) (通知時までに取得=相殺適状) ⇒ 通知時までに取得した債権なら、Bは通知“後”でもFに相殺を対抗できる(§469) → 肢「相殺できない」は誤り【×】
【Phase 3】債務者の抗弁(A=譲渡人/F=譲受人/B=債務者)
債務者Bが反対債権を取得したのは、通知(対抗要件具備)より…
├─ 前 → 〇 相殺できる(譲受人Fに対抗できる)
└─ 後 → 原則 × 相殺できない
※例外:通知前の「原因」から生じた債権なら相殺可
本問:Bは通知時点以前から反対債権を持ち相殺適状
→ 通知の「前」 → 通知後でも相殺できる
→ 「相殺できない」は誤り → ×
答え:×(誤り)
債務者Bが反対債権を持ったのは通知より前(通知時点以前から相殺適状)。通知前から持っていた債権なら、Bは通知後でも相殺できる(譲受人Fに対抗できる)。「相殺できない」は誤り。
(債権の譲渡における相殺権)
第469条 ① 債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。
② 債務者が対抗要件具備時より後に取得した債権であっても、次に掲げるものによる相殺をもって対抗できる。一 対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権(後略)
【ポイント】①=対抗要件具備(通知到達等)より前に取得した反対債権なら相殺で対抗可。②=具備後の取得でも「前の原因」から生じた債権なら相殺可(改正で明文化)。
AがBに対する賃料債権をFに適法に譲渡し、その旨をBに通知したときは、通知時点以前にBがAに対する債権を有しており相殺適状になっていたとしても、Bは、通知後はその債権と譲渡にかかる賃料債務とを相殺することはできない。
×(誤り)
通知時点以前から相殺適状にあった債権なら、債務者Bは通知後でも相殺できる。「できない」は誤り。
AがBに対する賃料債権をFに適法に譲渡し、その旨をBに通知したときは、通知時点以前にBがAに対する債権を有しており相殺適状になっていたとしても、Bは、通知後はその債権と譲渡にかかる賃料債務とを相殺することはできない。
通知前から相殺適状だった債権で、通知後に相殺できる?
「Bは通知後は相殺することはできない」は正しい?
×(誤り)
通知時点以前から相殺適状にあった債権なら、債務者Bは通知後でも相殺できる。「できない」は誤り。
暗記ポイント
🎯 試験本番ではこう即答する:相殺の抗弁を見たら「債務者が反対債権を取得したのは通知の前か後か」だけ見る。前なら相殺できる(〇)、後なら原則できない(×)。ただし後でも「前の原因」から生じた債権なら相殺できる。
⚖️ 概念マップ:相殺は「通知の時点で持っていた期待」を保護する。だから基準は対抗要件具備時。これは相殺カテゴリの「差押えと相殺(前なら可)」と同じ発想。
- 通知前に取得した反対債権 → 通知後でも相殺できる(〇)
- 通知後に取得した反対債権 → 原則相殺できない(×)
- 通知後取得でも「前の原因」から生じた債権 → 相殺できる(改正の例外)
⚠️ よくある引っかけ
- 「通知前から相殺適状でも、通知後は相殺できない」→ ×。前から持っていれば相殺できる。
過去問「比較」道場(旧法の罠)
【比較対象:平成28年 問5 肢4】 古い過去問には、2020年改正で廃止された制度が登場します。「旧法の罠」に注意してください。
Aに対し弁済期が到来した貸金債権を有していたBは、Aから債権譲渡の通知を受けるまでに、異議をとどめない承諾をせず、相殺の意思表示もしていなかった。…(※旧法下の「異議をとどめない承諾」に関する出題)
(旧法)異議をとどめない承諾=抗弁を失う … という論点 → 2020年改正で「異議をとどめない承諾」は廃止。承諾しても抗弁は当然には失わない
👨🏫 旧法には「異議をとどめない承諾」という制度がありました。債務者が「文句なし」で譲渡を承諾すると、たとえ相殺などの抗弁を持っていても、それを失う(善意の譲受人に主張できなくなる)という強力なルールです。
⚠️ この制度は2020年改正で廃止されました。現在は、単に承諾しただけでは抗弁を失いません(抗弁を放棄するには、別途はっきりと放棄の意思表示が必要)。古い過去問(H9・H12・H28等)で「異議をとどめない承諾をすると抗弁を失う」という記述が出たら、現行法では成り立たない旧法の知識だと見抜いてください。最新の本試験では問われません。
【まとめ】📌 この記事の核心
📌 この記事の核心
⚖ 債務者の相殺は「反対債権を取得したのが通知の前か後か」のタイムアタック。通知前に取得していれば通知後でも相殺できる。通知後の取得は原則不可(ただし「前の原因」から生じた債権なら可)。旧法の「異議をとどめない承諾」は改正で廃止——古い過去問の罠に注意。これで債権譲渡アルゴリズム(Phase 1〜3)を完走です。
→ 債権譲渡の判断アルゴリズム全体マップで、3つのPhase+過去問ワークアウトを一望できます。